第72話 皐月 水無月 文月 葉月 長月
夜の砂浜に砂ぼこりを巻き上げ走る人物がいた。
出会って間もないが、寝食をともにして生い立ちを聞いたりもした。
最初の頃に比べれば強くなった。とはいえ、唯から見れば赤子も同然の実力。
生き死にの激しいこの世界。明日もあさっても、笑って話し合えるのかは分からない。
それは、誰にでも平等に起こる出来事。
*
嫌な気配と魔力を感じ取ったアスモデウスは瞑想を止めて立ち上がった。
隣には、無邪気に眠る赤い髪の女の子。
テントを飛び出し、集中して正確な場所を特定する。
一、二、三、一人は――ランスちゃん!?
場所を探っていたアスモデウス。ランスちゃんのラの字で駆けだしていた。
その隣に並ぶ影
「どうしたのぢゃ? アスモ」
「桜ちゃんも気づいたのですか?」
赤ジャージ姿の桜が、隣を走っていた
「いや、アスモが飛び出したのでな――ランスか?」
「そうですか――なにか嫌な気配を感じました。危ないことがあるかもしれません。桜ちゃんは戻ってください」
「待つよりも、アスモと一緒に行った方が安全ぢゃろう? それに、ランスは大事な家族――戻らん」
アスモデウスがこの場を離れることによって、待っている桜が襲撃される可能性を示唆して、一緒に着いていくための材料にする
「決して離れないでください」
二つの影は暗闇の中を走って行く。
目的地に到着するまでの間に、二つの気配はすでに去っていた。当然、桜もアスモデウスもそれに気づいていた。
うつぶせに倒れているランスロットの姿を確認した二人は、声を上げ唇をかんだ。
鉄くさい臭いに、大量の血痕。
「ランス!」
「ランスちゃん!」
ランスロットをあお向けにして、体のすみずみを確認するアスモデウス。
乙女戦闘服は穴が空き損壊も多い。そして大量の血痕。
これは、ランスから流れ出たとしか思えない
「アスモ、ランスは無事なのか?」
調べているアスモデウスに、声を荒らげる桜。
心配でたまらないのだろう
「桜ちゃん――ランスちゃんは――」
と、その時
「むにゃむにゃ――ようちゃん、おまたせ」
にへっと笑いながら、寝言を口走ったランスロット
それを見て深刻な状態ではない、と悟った桜。
だが、大量の血痕に乙女戦闘服の損壊――事情を聞かねばなるまい。
念のため、もう一度ランスロットをすみずみまで調べると、アスモデウスは問題はない、とのうなずきを桜に送る。
そして、なにか納得できないのか、ランスロットの頭に手を触れながら考え込むアスモデウス
む? と桜は思ったが
起こした方が早いと思い、ベシっと強烈なデコピンをランスロットにくらわせた。
「よ、ようちゃん――そこは――だ、だめぎょへ」
陽二とデートでもしている夢を見ていたのだろうか、突然おでこが陥没するような痛みで強制的に覚醒されたランスロット
おでこを手で押さえながら、桜とアスモデウスの間を右に左に転がりながら悶絶すると
むくっと何事もなかったかの様に上半身を起き上がらせると
「よ、陽ちゃんは?」
とのたまった。
「なにが、陽ちゃんぢゃ!」
目覚めの一発。
とばかりに二発目のデコピンをくらわせる桜
今度は、ピクリとも動かず耐えきったランスロット
そして……
「陽ちゃんは?」
「まだ目が醒めぬのか! ならば、もう一発ぢゃ」
クスクスと、その二人のやりとりを見て笑い出すアスモデウス。
しかし、状況は深刻。
それも、死んでいてもおかしくない程の怪我を、負っていないと説明がつかない現場状況。
感じた気配は二つ。
一つは嫌な気配、ドロッとした気持ちの悪い物。
もう一つは無味無臭の水みたいな気配、それも隠せるのにわざとこちらに知らせるようだった。
おそらく後者は、中立か味方でランスロットを助けてくれたのだろうと予想した。
それと、アスモデウスには解析する事ができなかったし、自信を持って断言する事はできないが、記憶操作に似た、なにかを施した跡が、ありそうでない様な気がする
つまりアスモデウスは、違和感を感じていた。
もし、この違和感の正体が記憶操作なら、アスモデウスにも分からないほどの高度な術式、もしくは魔法ということになる。
これは、大変な脅威と捉えるべきであろう。
もしかしたら、ランスロットが操られているのかもしれないのだから――
「桜、突然なにをするんだ――ここはどこだ? ん、あれ? 確か、見回りの時間になって、その途中に約束を思い出して、デートの待ち合わせに行って――陽二は?」
「まだ、ねぼけているようぢゃな」
桜の攻撃!
しかし、三発目のデコピンはランスロットに素早くよけられた。
「ランスちゃん。この状況が分かりますか?」
とのアスモデウスの問いに、なにかが頭の中でうまくかみ合わない様子のランスロット。
周囲を見回し、地面の血痕と乙女戦闘服の損傷に気が付いた
「こ、これはなんだ? もしかして――私は死ぬのか? それともここは天国で――」
「いえ、死んでいませんし、天国でもありません。健康その物です。それ以前に絶対に死なせたりはしません」
「そ、そうか。しかし――これは一体なんなのだ? 全く記憶にないぞ?」
その言葉を聞いたアスモデウス。
ここで、なにかがあったのは間違いない事実。
何者かがランスロットを襲い、何者かがランスロットを助けた。その事は、いまさらどうでもいい。
過ぎた事でランスロットも生きているのだから……
問題なのは、アスモデウスが全く気づけなかった事、その一点につきる
そして、ランスロットを襲ったであろう人物。
超全体強化を使ったランスロットの防御力は、かなり高い。
(これは使った跡があったのですぐに見抜いた)
乙女戦闘服は、超全体強化を使ったあとの身体能力を自乗する。ならば防御力も、とんでもなく高かったことになる。
それなのに乙女戦闘服の損傷は激しかった。
全くとはいわないが、ほとんど役に立っていなかった事になる。
それほどの相手。
思い当たるのは豊、それと唯から聞いていたマモン。
再度襲ってこないとも限らない。大至急、ゼラニオンのパワーアップが必要
すぐにでもゼラニオンのパワーアップを始めたいアスモデウス。
だが、ゴブリンとの事が片づくまで、それは延期されることになった。
過去、桜やランスロットでさえ逃げ出した恐怖の合宿
その名も『魔技強化合宿』だ
*
少し時間は戻る。
唯が走り出した頃、ハズキは絶体絶命のまっただ中にいた。
ショルダーチャージで背後から強襲され、ゴブリン将軍に捕まり今にも犯される寸前。
「う、うわあああ!」
われに返ったハズキは、大声を出して暴れた
ゴブリン将軍は思うように事を運べず、なかなか達成できずイラっときた。
バシっと軽く頬を叩く。
その衝撃だけで全身の至る所が悲鳴を上げて、体の中を熱いなにかで刺されているような痛みが、ハズキに襲いかかった。
ゴブリン将軍のショルダーチャージで、全身が深刻なダメージを受けているのだ。
痛みに耐えきれなくなったハズキ、我慢をしているうめき声はもれているが、暴れる事はなくなった。
「そうだ、おとなしくしておけ。すぐに気持ち良くなるからな」
ゴブリン将軍は醜悪な笑みをハズキに向け、胸に手を伸ばす。
このままでは、なにもできずに終わってしまう。
せめて、目の前のコイツだけでも道連れに――
母親は唯さんとパトリックに任せておけば安心だ。あの二人なら、自分みたいに下手を打つこともない。
母親を探しだして救い出す、という目標は達成された。
もう一つは、兄と姉の敵討ちのみ
本当ならば自分の手で、ゴブリンどもを根絶やしにしたかったが――さすがに、この状況をひっくり返せるような手は残っていない。
だが、こいつだけでも――道連れに倒す!
右手にありったけの魔力を込める。
もう死んでしまってもいい。目の前のコイツさえ殺せれば……
ハズキは残った力で、ゴブリン将軍に攻撃をしかけた
ゴブリン将軍の目に指を突き刺して、内部から風塊の攻撃で頭を吹き飛ばしてやろうと考えていた。
だが――
ガシ
ゴブリン将軍には、ハズキの弱って遅い攻撃など止まって見えた。そして、手首を素早く掴み、一度だけ圧力をかけた。
右手首の骨まで折られた。
――!
だが、ハズキは諦めない!
唯との特訓で学んだものは、技術的な事ではない。
ただ、ただ諦めない心。
生きるために、死なないための諦めない心。
心の中で唯に謝罪をする。
生きるための諦めない心を、殺すためだけの諦めない心に変えた事に。
目的が達成されるのであれば、死んでもいいと思ってしまった事に。
*
唯さんは、傍若無人の様に振るまい、私を召使いの様にこき使った。
言葉は冷たく、厳しい事しか言わない。
でも、自ら前に立ち、常に見守られている気さえする、そんな人だ。
だからこそ嫌いになるどころか、どんどん惹かれていった。
ともに食事をしている時、ふと会話が途切れたので私の身の上話をした。
洞窟での生活、父親から教わったこと
母親の病、目が見えず歩けないこと
兄と姉の死――
話しおえたあと、私は最終的にどうしたいかを話した。
そして、唯さんの顔を見ると泣いていた。
突如、抱きしめられ温もりに包まれた。
唯さんの鼓動を耳にしていると妙に落ち着いた。私は無意識のうちに唯さんに抱き着いていた。
まるで母親に包まれている、そんな気持ちを感じていた。
そしていろいろな事を教わったが、短い時間の中、これだけは覚えておけと言われた言葉があった。
『生きることを諦めるな』
なんの変哲もないありふれた、当たり前だと思ってしまった言葉。
でも、その言葉の意味は深いと思う。
唯さんが、どの様な意味と思いを持って贈ってくれた言葉なのか――聞く事はできなかった、けど
今なら少しだけ分かる気がする――
「風塊の攻撃!」
風塊の攻撃が、ゴブリン将軍に避けられたのを見ながら、それでも満足げに
ハズキは、ゆっくりと目を閉じた
*
「やっと、おとなしくなりやがったか」
ゴブリンたちの催し物は、まだ始まってもいない。
暴れる獲物もグッタリとしておとなしくなった。もしかしたら死んでしまったのかもしれない。
ならば、固まってしまう前に楽しまなければ
その時、どこからか声がした
「お姉様たち、お願いなの!」
「鏡花水月」
ハズキを中心として、十メートル以上離れた南北の波際や森の中に、ダイナマイトバディを見せ付けるかのごとく、金髪の女性が四十人以上も現れた。
「将軍、女です!」
その声で、順番待ちをしていたゴブリンも、そうでない者も一斉に振り向むいた
「こっちにもいるぞ!」
「こっちにも」
「こっちにも」
「捕まえろ!」
ゴブリン将軍が叫ぶと、われ先にと近くの金髪女性に飛び出した。
ゴブリン将軍たちも、ぼろぼろで血まみれの死にかけた女より、豊満できれいな金髪女性の方がいい。
ハズキなどほっぽり出して全員が駆けだし、ハズキの周囲だけが空白地帯になった。
その空白地帯に、ザッっと空中から降りてきたヴァイオレット
着地と同時にハズキに向かって回復薬をぶちまけると、少々あらあらしく抱き上げ、すぐに砂浜を蹴り宙を蹴って百メートルほど離れた海面に向かって翼を広げた。
その場所には、人魚姫パールを含む仲間の人魚が待ち構えていた。
「人魚の休息場」
人魚たちは魔法を唱えて、直径一メートル、円形の泡でできた物を海面に四つ作り出した。さらに四つを合体させて大きくする。
その上にヴァイオレットは着地して、ハズキを寝かせた。
「人魚姫治癒!」
人魚姫、パールが『定着の儀』で得た『姫の心得』で覚えた魔法の一つ。
両手をハズキに向けて唱えると、手のひらから小さな泡が飛び出し、瞬く間にハズキの体を飲み込んだ。
泡は合体を繰り返して一つの大きな気泡になった。
気泡の中にはハズキの姿が見える。
このシャボン玉みたいな気泡の中にいると、疲労回復に食欲促進などの効果。簡単にいえば、治癒力が高まるのだ。
「パール、どうじゃ?」
魔法の効き具合と、ハズキの回復具合を聞くヴァイオレット
「分からない、でもがんばってみるの」
その頃浜辺では、捕まえようとしてもすり抜けてしまって、ふれる事もできない幻だとバレていた。
「将軍、女が……」
「ぐわわわぁ、どこの誰だ! 探せ!」
ゴブリン将軍の命令で、消えたハズキを探してゴブリンたちが右往左往している。
「ん? 将軍、あそこです」
めざといゴブリンが、人魚の集まっている場所を発見して指を差す。
ハズキよりも人魚の姿を確認したゴブリン将軍たち。ゴブリンに命令を出す。
「女がたくさんいるじゃねーか、おまえら捕まえてこい」
「本当だ、いくぞ!」
次々と海に入り、人魚の元を目指すゴブリン。
「見つかってしまったけぇ」
だが、ヴァイオレットたち人魚は、海に入りこちらを目指すゴブリンを見ても顔色ひとつ変えない。
それもそうだ。
ここは海。人魚の独壇場だし、砂浜から十メートルも沖に進めば海は一気に深くなる。
人魚にとっては有利な事ばかりで、全く負ける気がしない。
鏡花水月を解除した人魚たち。
ヴァイオレットを護衛に残して、海に潜った。
水中に潜った人魚は、水中からゴブリンの足を引っ張って溺れさせていく。
驚くことに、以外と泳ぎが達者なゴブリン。犬かきみたいな泳法で、えっちらおっちらと泳いでいくが、次々と海に引きずり込まれて消えていく。
「戻れ、戻れ!」
ゴブリン将軍は大声を上げ、戻るように指示を出す。
軽く五十体は沈んで帰ってこない。
姿は見えているのに、手も足も出せないもどかしい状況。
「おい、アレをよこせ」
ゴブリン将軍は筒のような物を受け取ると、片膝を付き、両肩に一本ずつ担いで狙いを付ける。
筒の長さは一メートル弱、直径は二十センチ
その両脇にゴブリン将軍が立ち、筒の後からゴブリンが弾を込めると専用のハンマーで叩いた。
ドン!
爆発音とともに、筒から弾が発射された。
弾は轟音をあげながら水平に飛んでいき、ハズキの横たわっている休息場の前方、十メートルに着弾して大きな水しぶきを上げた。
人魚達はあぜんとしている。
とんでもない威力だ。もし、人魚に直撃でもしてしまったならば……おそろしい結末になるだろう。
この武器、ジェームスが発明した物だ。
大きい筒は、イグナス種の発射能力がないと使うことはできないが、このロケットランチャーみたいな小さい筒は、ゴブリン将軍なら扱うことができる。
秘密はイグナス種が排出する糞。
この糞に土を使うと、なぜか一センチ程の結晶がたくさんできあがる。
そして弾を飛ばすには、一つあれば十分だ。
セットした弾のお尻の中心に結晶をセットして、専用のハンマーで結晶を叩くと、爆発して弾が飛び出す仕組みになっている。
その際、専用のハンマーがピッタリはまって、ふたの役目を果たす。
しかし、結晶を爆発させるためには、ゴブリン将軍のパワーと正確に打ちつけるテクニックが必要になる。
ドン!
さらにもう一発。
だが、今度の弾は少し変わっていた。
丸く固まった物が空中で広がり、あぜんとしていた人魚を捕まえた
まるで投網だ。
「おっしゃあー! おまえら引っ張り上げろ」
「おお!」
筒を持つゴブリン将軍の手には、網につながる縄。
これは、そこらへんの普通の縄ではない。魔物の素材で作った強靭な縄なのだ。
「オーエス、オーエス」
と縄を引っ張るゴブリンたち。
そして素材に使った魔物の物だろうか、網には小さな毒針がいくつも付いていて、運悪く刺さってしまえば、体の自由が奪われる
人魚はあわてふためき、網から逃げようと、もがくが
「痛い、痛いよぉ!」
運悪く刺さってしまったみたいで、パニックになってしまい、暴れるほど毒針の餌食になってしまう。
「痛いよ――」
とうとう網にからまったまま、泣き出して動きを止めてしまった。
当然、黙って見ている人魚ではない。助けようと網に手をかけたのが間違いだった。
「痛! これは……なに?」
そこへゴブリンが集まってきた。
助けようと必死だったのだろう、ずいぶん浅瀬まで来ていた人魚。毒で体が動かなくなってきた。
「コイツも捕まえろ!」
気づいてみたら周囲はゴブリンだらけ
その間も縄は引っ張られていき、網の周囲にはゴブリンがわらわらと群がり、人魚の姿も見えなくなってしまった。
ヴァイオレットや仲間の人魚も、網に捕まった瞬間には助けに向かっていたのだが間に合わなかった。
だが、浅瀬で毒に苦しんでいる人魚はなんとか救出して、パールの待つ場所まで戻った。
毒を受けた人魚をハズキの横に寝かせてパールに告げる
「パールは仲間と一緒に、人魚の休憩所を押して逃げるのじゃ」
「嫌なの!」
ブルンブルンと首をふるパール
「ゆうことを聞かんかい! あれを見るけぇ」
ゴブリンが集まっている砂場を指差す。
その中心では、捕まった人魚が網から出されようとしているが、網がこんがらがってしまい、うまくいかないようだ。
ゴブリンたちの叫び声は、パール達の耳にも聞こえていた。
仲間の姿を確認できないヴァイオレットたち人魚の頭には、最悪の光景がよぎっていた。
今は、とにかく姫を逃がすのが優先。種も授かり、これからなのだ。
「私が、陽ちんを探しに行きたいって、わがままを言ったせいで……ごめんなさい」
「なにを言うけぇ、そのおかげで人を一人救えた。それに陽ちん殿には、みんなが会いたがっていたけぇのぉ。パールが飛び出さなくとも、ワシが探しにいっとったけぇ」
*
仲間の人魚に指示を出して、しぶるパールもろとも全員を送り出し、一人残るヴァイオレット。
筒はこちらに狙いを向けているし、仲間一人もゴブリンの手の内。
おそらくじゃが、殺すのが目的ではなく生きたまま捕らえたいと考えているはずじゃ、交渉が始まってしまう前でよかったわい。
パールは優しすぎる。己の身を犠牲にしても仲間を救おうとするはずじゃけぇ。じゃけんど、それでは人魚に未来はない。
これでいい、最悪、二人の死で未来がつながる
黄金の翼を広げ、海面を蹴り、宙を蹴り、ヴァイオレットは飛び立った。
その頃ゴブリンたち、誰一人としてパールたち人魚を見ていなかった。
目の前の、捕まえた獲物しか見ていなかった。
ゴブリン将軍でさえ、筒は海に向けているが目は人魚にくぎ付けだ。
まず『触れた』というのが大きなポイント。
幻影であれだけ大騒ぎしたのだ。
落胆した気持ちが、触れるボインボインにマックスバイン!
「早く網を取れ! だが丁寧に扱えよ、すげえ上玉だ」
捕まった人魚は最年少の人魚。見た目は二十歳のピチピチなお姉さん。
暗闇でもキラキラと光り輝く金髪に鱗、種族をこえた色香を感じさせる全体像
貝殻で先っぽを隠しているが、あふれる果実はチラリズム!
そして黄金の鱗から分泌されているのか、興奮をそそる香りの正体!
犯りてぇ――
全員がそう思っていた。
人魚の姿が見えないゴブリンの間では、場所をめぐってイザコザまで起こり始めた。
このあと開催されるであろう、催し物は大荒れになりそうだ。




