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第54話 スノーム2日目

最後の陽二とランスの会話を非常に悩んだのですが、不快になる要素が含まれております。



 

 ゼラニオンの朝は早い


 朝4時、アスモさんに起こしてもらう。


 ジャージに着替えて庭へ出るとランスが待っていた。筋肉痛の身体をほぐす様に準備運動と柔軟体操をする。


 フロア内のランニングコースをランスと一緒に走る。

 徐々に体が温まりペースアップをする。

 昨日と比べると格段に速い。おかげで周囲の景色を見る余裕が生まれる。


 この階は、地上の結界路に囲まれている土地がすっぽりと入る広さがあり、薄暗い空が広がっている。これが5時になる頃には地上と同じく明るくなってきて、足元も見やすくなってくる。

 屋敷に到着する頃にはすっかり明るくなり、上空には透き通るような青い空が広がるだろう。


 何が言いたいかというと、ここはダンジョンの中だ! 


 という事だ。地上と変わりなく朝が来て夜が来る。山もあれば谷もあって、その下には透明度の高い川が流れ魚も泳いでいる。


 山をおりると平坦(へいたん)な道が続き、少し冷たい風が頬を()でて、前を走るランスのポニーテールがヒラヒラと舞っている。


「今日は早かったですね」


 軽く汗を拭うとアスモさん指導のもと、基礎をみっちりと練習する。


 10分間の休憩を挟んだあと、形の練習をする。


 今日は剣を持った状態でゆっくりと動く練習だ。


 足の裏に体重をのせ、地面から絶対に離れないように踏ん張り、もう片方の足が地面に着くまでの時間を10秒以上かけて移動させる。

(イメージは足の裏で大地をつかむようにと言われた)


 移動させる距離は

 足をそろえて真っすぐ立つ、そのままゆっくりと前に倒れる

 すると、思わず1歩を踏み出すはず

 それが移動させる歩幅、つまり距離だ。


 それを交互に繰り返すのだが、この練習の肝は、ゆっくりと動く事と軸足の裏面の全てを地面から絶対に離さないこと。


 地味だが踏ん張っている足は悲鳴を上げ、見た目以上にキツイ練習だ。


「くそしんどい……」


 終わったあとの袋はぎは、パンパンになっている


「次は組み手をやります!」


 アスモさんは天使の様な見た目とは裏腹にスパルタだ。実はS属性持ちの女王様なのでは? と疑いたくなる程だ


「陽二君はよけるだけで、チャンスがあればランスちゃんのどこでもいいので触ってください。胸以外ですよ?」


 いらぬ誤解が生まれているようだ


「了解しました」


「いくぞ、陽二」


 ランスはギリギリよけられるか、よけられない速度で中段突きだけを繰り出す。上段突きや蹴りまで混ぜられたらよけるのは無理だ。


 そして、全く触ることができない。


 途中からスピードを遅くしたり元に戻したりする。元のスピードはよけるのに苦労するが、遅い攻撃はランスにふれられる回数も増えてきた。


「次は、撃ち込みをします」


 撃ち込みとは、お互いのおなかに魔技の基礎技『魔砲』と呼ばれる突きを撃ち合うのだ。打つなのだが、撃つなのだ


 相手のおなかに拳を当てた状態で拳に魔力をためる。拳にまとわせる感じかもしれない。


 ゼロ距離から突きを打つと同時に魔力も撃つ。この方法を使うと、武器を持っている状態なら武器に魔力をまとわせる事ができるようになる。


 ランスが乙女大剣(エシャロット)で使っている方法だ。威力が格段に上がるらしい。魔力を炎魔法にできれば、カリンが使っていた炎剣スマイルハートに近づけるだろう。


「魔法剣? 来たぁぁぁ!」


「陽二君! 先走らないでください。今は、素早く魔力を集める事と魔砲を耐える練習です!」


「はい!」


 そこには、魔力も込めず軽い打撃だけの魔砲を一発受けただけで、のたうちまわる陽二がいた。


 受ける側もおなかに力を入れ、さらに、そこへ魔力を集めてガードしなければならないのだ。

 ガードが弱いとモロに魔砲を食らってしまい悶絶(もんぜつ)コースなのである


 ちなみに、魔力を込めない魔砲も技の1つで高い攻撃力を誇る


 最後に騎馬立ち(きばだち)を30分して朝の練習が終わる。


 足がプルプルして立てない陽二は、ランスロットと一緒にその場で座って休憩する。アスモデウスは朝食の準備のため屋敷に戻った。


 ランスにタオルを渡され汗を拭く。

 タオルもそうだが屋敷中の調度品も高級そうな物がそろっている。価値は分からない、見た感じの話だ


「そういえば、突きのスピードを遅くしたり元に戻したりしていたのは、どうしてなんだ?」


「気づいたのか? 偉いぞ! ちなみにあれは逆だ。上げたスピードを元の速さに戻していただけだ。最後の方は随分とスピードを上げたのだが、よくかわしたな。目が慣れてきた証拠だ」


 そうか、スピードを徐々に上げて目慣らしをして元に戻すと、今までよけられなかった攻撃がよけられるようになると。


 考えているなぁ……ありがたい!


「本気を出したらどのくらい速いんだ?」


 興味本位で尋ねてみた


「私も弱体化(デチューン)しているからなぁ、この程度だ」


『ビュン』の音と共に目の前を風が通り抜けた。


 全く見えなかった……


「スゲぇな、全然見えない」


「鍛錬あるのみだな! それ」


 ランスが魔法で水をかけてくる。冷たくて気持ちがいい! 


 お返しに魔法で水をかけてあげる


「ひっ…! 冷た!」


 昨晩の勉強会のおかげ様で、0℃に近い水を出せるようになった。0~40℃くらいなら(アクア)だけで出せると思う


「食らえや! (0℃)! (0℃)!」


「つ、冷たい!」


「「あっはっは!!」」


 とラブコメチックな遊びをした。


 *


 シャワーを浴びて朝食をいただく。

 メニューはご飯にみそ汁、焼き魚に卵焼きだ。


 ご飯は『サクラノヒカリ』という品種で、名前どおり桜が育てた米だ。


 本当にあいつは何者なんだ? そういえば、ランニングの最後に広大な一枚の田んぼを見かけたが……まだ田植えはしていなかった。近いうちに田植えをする桜の姿を拝めるのかもしれない。


 みそ汁は野菜が具だくさんで食べ応えがある。

 焼き魚は一人分には大きい30センチ程の魚。


 このフロアに流れる川から取れた魚だ。ダンジョンの中に川とか…どこから流れてきて、どこに流れていくのか不思議すぎる。


 卵焼きの味は3種類。塩、砂糖、醤油(しょうゆ)ベース。特にこだわりはないので全種類いただく。


 うまい!


 最初は食べられるのかと思ったが、随分と食も太くなってきたらしく、ペロリと平らげることができた。


 ランスを見ると魚の頭から尻尾まで全てを食べていた。聞いてみると、こちらでは当たり前の事で一物全体を食すという考え方。

 なので、噛む力が強いのではなく、食べられるように調理されているのだ


 あと片付けはランスと2人で行う。少しでも役に立ちたいからだ。


 ランスロットは、陽二の残した魚や野菜の皮などをバケツに入れると、上から(ギフト)を唱える。すると残飯は消えてしまう。(ギフト)の効果で魔素や土に分解されるのだ。


 あと片付けを終わらせると部屋に戻り、少しラフな格好に着替える。


 Tシャツに黒いズボン。なぜか背中にワカメと書いてある。


 海藻の事なのかは分からないが、日本でも訳の分からない英語とかがプリントされていたのを思い出す。

 あれって、訳すとおかしな事が書いてあるらしい


 ランスは白のブラウスにジーパンみたいなズボン。頭にはキャスケット帽を被っている。日頃のポニーテールを三つ編みにすると、丸めて帽子の中に隠す。

 うなじが丸見えで艶めかしい。ブラウスは両方の二の腕の部分が開いていて肌が露出している。


「おしゃれさんだなぁ、見違えたよ」


 見た目は清潔できれいなお姉様、一緒に歩くのが申し訳ない程だ。自分の服装的に、だってワカメ……


「そうかそうか! ()れてもいいのだぞ? 陽二も似合っているぞ」


「おまえの目は節穴か!」


 そこへ出かける準備を終えたアスモデウスが現れる。


 アスモデウスの服装は派手すぎない町中でも見慣れた、厚手無地の長スカートとワンピース、それでも着ている素材が良いので輝いて見える。


 メイド姿以外の服装を初めて見た!


「今日はサラデインに行ってきます。ランスちゃんと仲良くしていてくださいね。夜には桜ちゃんも一緒に戻ると思います」


 スカートの端をチョコンとつまむ


「分かりました。いってらっしゃい」


「ランスちゃん、陽二君をお願いしますね」


「任せておけ!」


 そう言い残すと腕輪の転移で消えてしまう。


「サラデインか、行ってみたいなぁ」


 パール達に会いに行く約束もしているしな


「また今度な! きょ、今日はデートだからな、桜の近くはだめだ! 絶対に邪魔される」


「デート? 魔王のダンジョンを案内してくれるだけだろ?」


「ふ、二人きりで出かけるのをデートと言うのだ!」


「お、おう。まあよろしく頼むよ」


「よし! ではすぐ行くぞ、急げ急げ!」


「落ち着けよ、どうどう」


「連絡するからな、すぐに来るんだぞ?」


 *


 ランスが転移して5分くらいで連絡が入る


「私の場所に来い」


 キャスケット帽を被るランスを思い浮かべながら、腕輪の転移ボタンを押すと瞬時に場面が切り替わる。

 今度は空中じゃなかったので一安心。


 ここは? 公園かな? 


 周囲を見回すと手入れされた緑の芝生が生い茂り、新緑豊かな木が3メートル幅で均等に植えられている。


 ずいぶんと広い場所だ、王都のグラウンドくらいある。ランスはどこだ?


 どうやら高い場所らしい、前面に柵があってスノームの町を望むことができる。


 展望台かな? 


 柵に沿って移動すると町に降りる階段とスロープを発見した。広場の中央に銅像があったので近づいてみる。


 銅像が乗っている土台に『たかひろ あべ』のプレートが付いている。プレートには書いていないが、力の勇者、阿部隆弘だ。裏には『永遠の時が過ぎようとも待ち続けます』と同じ材質のプレートが付けられている。


 もう一度銅像の前に移動して、少し離れた位置から顔を確認する。


 間違いない。


 陽二は確信した。この男を知っている。


 年齢は同じくらいだったはずだ。

 高校卒業と同時にプロに入り、数々の記録を塗り替え、大リーグに移籍後もあまたの伝説を刻んだ超有名人。


 確か少し前、突然、引退を表明して日本に帰って来ていたはずだ。野球一筋で独身だったよなぁ……謎は解けた! 絶対に力の勇者だ! じっちゃんの名に賭けてもいい


「よ、陽ちゃん! お、お待たせ!」


 どこからかランスが現れる


「ん? ランスどこ行ってたんだよ。探すついでに、謎を1つ解いちまった自分の才能が恐ろしいよ」


 ランスロットを見ると、モジモジしながら陽二の唇に指を当ててくる


「もう! そこは『俺もいま来たとこ』でしょ! 陽ちゃん!」


 陽ちゃん? 陽ちゃん? 陽ちゃん? んん?


「さては偽物だな? おまえは誰だ! ランスは陽ちゃんなどと呼びはしない! 正体を表せ! 謎は全て解けた!」


 唇に当てられている指を払いのけ、ビシッと指さす。


 決まった!


「陽二……陽二! 今日はデートなのだぞ? これはデートの儀式、アスモに聞いたんだぞ? なぜ分からないのだ!」


 ランスが少し涙ぐんでいる。


 あれか! 待ち合わせで女の子が遅れてきて『ごめーん』のあれか? 経験が少ないから分からなかったよ……仕方がない


「ランス、すまなかった。もう一度チャンスをくれ」


「もう一度か! よし、待っていろ。すぐにやり直すからな!」


 うれしそうに走って木の後ろに隠れた……


 なに? この茶番……


 ランスロットは帽子を振りながら満面の笑みで駆けてくる


「陽ちゃん、ごめ~ん。まったぁ?」


「オ、オレモイマキタトコ…」


 小っ恥ずかしい、何をやらせるんだ!


 ここはカップル達に大人気の広場。初めてのデートでここを待ち合わせ場所にすると、その2人は永遠に結ばれると言われている。


 その後、何度かの茶番を繰り返しやっと納得したランスロットと共に階段を降りていった。


 *


 スノームの町なみを手をつなぎながら歩く。

 それも、指と指を絡ませる恋人つなぎだ。


 陽二は断固拒否した。


 そこで、ランスロットの取った行動は、人がねり歩くど真ん中で土下座をかましてきた! 策士ランス! さすがに断り切れず今に至る


「ふっふっふっふっふふふふ~ん」

(ゼ、ゼ、ゼ、ゼ、ゼラニオーン)


 ランスロットのキャラが変わった。鼻歌を歌いながらつないだ手を見てはニマニマしている。


 実際、周囲の視線を集めるくらいの美しさとかわいさを併せ持つランスロットに不満があるわけではない。逆に男にとっては優越感に浸れる程の相手だ。


 だが、陽二には隠している事がある。元の世界に戻る気がなくても告げなければならない事がある。


 この世界に来たばかりの陽二ならば、ランスロットに告げることもなく黙っていただろう。だが、短い間にさまざまな経験をした陽二は黙っている事ができなかった


 喫茶店みたいなオシャンティーなお店が見付からないので、王都でも行ったことがあるファミレスにランスロットを誘う。


 ランスロットに約束のパフェを陽二はジュースを注文する。ほどなくして、注文した品物がお互いの前に置かれる。


「知っているか? 騎士にはパフェを食べる作法があるのだぞ」


「ほぉう、ちなみにどんなのだ?」


「こうやってな食すのだ。上級騎士の作法だそうだ!」


 ただの空気椅子だ。プルってるじゃないか


「珍しい作法を知っているんだな、それ誰に聞いたんだ?」


「桜だ」


(だま)されてるって気付けよ! そんな作法、あるわけないだろう?」


「な、なんだと……私は(だま)されていたのか」


 他愛(たわい)もない話で場を和ませ、ジュースを一気に飲み干す


「あのな、ランス」


 ランスロットはうなずき、パフェをスプーンですくうと陽二の口の前に差し出した


「あ、あーん」


 おい! 難易度たけーよ!


 ランスロットも恥ずかしいらしく、目は泳ぎ回り飛び出しそうだ


「いや、そうじゃなくてだ、んぐ」


 頬を染めながら、陽二の口にスプーンを突っ込むランスロット。


 走り出した乙女心はノンストップだ! 


 スプーンを引き抜くと、そのまま自分の口に入れて頬に手を当てながら陽二のエキスを堪能する。


 その行為は騎士としてどうなんだ? それでいいのかランスロット!


「大事な話がある! 王様にも話していない事だ」


 さすがのランスロットも陽二の雰囲気が変わったのを感じたのか、居住まいを正す。


 きゅ、急に何なのだ? アレか? アレなのか? 私たちは既にキスも済ませてある。つ、次は……ラ、ランスロットよ落ち着くのだ。

 遅かれ速かれ私たちはそういう仲になる運命だったのだ! よし。陽二よ来い! 全て受け止めてやるぞ! バッチコイだ!


「俺、結婚しているんだ。だからおまえの事は受け入れられない」


 一瞬驚いた顔をしたが、ランスはだから? それが何? って顔をしている。いや、作っている


「俺は結婚しているんだよ、それに本当の歳は42で中身はオッサンだ」


「それは元の世界での話だろう? それに、王に問いただしたとき、陽二に戻る意思はなく、こちらの世界で生きていくことも聞いている。何か問題があるのか?」


「問題ならあるだろう? 仮にも嫁を捨てて、こっちで生きていこうとしている人間だぞ? 最低なやつだろう!」


「なるほど。だが断る! 私は陽二が好きだ! それに帰る気がないのならば、あちらの世界は関係ないのではないか?」


「待て待て! 話が違うだろう、聞いていなかったのか? 元世界の嫁を簡単に捨てる人間だ、おまえの事も簡単に捨てるかもしれないんだぞ? そんな人間なんだぞ? 帰る帰らないの問題じゃない」


「陽二は……陽二は、私を捨てるのか?」


「ちょっと待て! そういうことを言ってるのではないし、捨てる捨てないの話の前に付き合ってもいない……

 いや違うな、そうじゃなくてだな……それに俺の言い方も悪かった。嫁もおまえも物じゃないし捨てるだなんて……」


 考えがまとまらず言い(よど)む陽二。


 ランスロットの気持ちは、とても(うれ)しいが、嫁がいるという現実、受け入れられる訳がないのだ。


 それに、こんな話をしている事こそが、嫁とランスロットに対して不誠実ではないのか? と思ってしまう。


 その様子を見たランスロットはパフェを口に運ぶと


「陽二はこちらの世界で生きて行こうと思っている。ということは、既にあちらの世界にも奥方にも未練はないのだろう? ならばケジメさえ付けることができれば、私との事を考えてもらえるのか?」


「確かにあちらの世界に未練はないし、夫婦関係も既に崩壊していたが……ケジメ? 離婚して来いって言っているのか? 一度帰ったらもう来られる方法はないんだぞ?」


 ランスロットは目を閉じると、何かを思い出すように話す


「勇者の話を覚えているか? 彼らは行き来していたのではないか? その方法を見つければいいだけのことだ。それに離婚うんぬんはこちらの世界では関係ない。一夫多妻、一妻多夫が認められているからだ! 当然、戻る時は私も一緒に行ってケジメを付けるつもりだ」


「俺の国では重婚は認められていない。だが……離婚は簡単だろうな、なんせ俺が船の旅を計画したのは、嫁の浮気現場を目撃した衝動からだからな。まぁ一方的に責めることはできない……うすうす気付いていたし、俺にも問題があったからな」


「問題だと? 詳しく聞いてもいいか? 無理にとは言わないが」


「簡単に言えば、夜のお勤めを全うできなかったんだよ……多分それが嫁の心を傷つけたんだと思う。子供も授かることができなかったし……そして他の男に走ったと、まぁ自業自得だ」


 *


 35歳くらいからだった。切欠は分からない。

 男の生理現象の朝や本とかビデオを見ると大丈夫なのだが、いざ行為に至ろうとすると、ウンともスンともいわなくなってしまうのだ。

 朝は普通なので、あまり気にも止めていなかったが、何気なくネットで調べると(たち)が悪いことに気がついた。


 それ以来、夫婦関係は冷め切ってしまい役立たずのATM呼ばわり、次第に嫁の外出が増えていき、顔を合わせるのも週に2、3度。


 最後に会話を交わしたのは、何時のことだっただろうか……


 そして男とホテルに入るところを目撃してしまった陽二は、着の身着のまま飛行機で沖縄に飛び、そのまま船に飛び乗った。

 乗りたいと思ってはいたが、目的があったわけではない。


 *


 何で離婚をしなかったんだろうなぁ、ざんげか贖罪(しょくざい)の気持ちがあったのか……


 パールとの出来事は違う意味で本当にもったいないと思っていた。


 もしかしたら治ったのかもしれないと……


 しかし、よくよく考えてみると朝が一番元気がいいのだ、本人が気づいてしまえば駄目だったのかもしれないが……


「まあ、そんな話だ。どうだ? 俺に興味がなくなっただろ?」


 ランスには精霊の泉で起こった、パール達との出来事も隠さず話した。

 話すべきだと思ったからだ。

 ランスは嫁の話の時は光明を得た! 的な顔をしていたが、パールの話になると驚き落胆して、顔をふさぎ込んでしまった。


 当然だろう。すまないと思う気持ちが湧き出てくる


 ランスロットは突然、がばっと顔を上げると


「わかった! 朝、確認して襲ってしまえばいいのだな!」


「違うから! 何でそうなるんだ?」


「良く分からないが、その問題も一緒に考えればいいのだ! どうせ心の問題なのだろう? ついでに心も鍛えてやろう。それに、人魚のパールとかいう小娘の時は意識がなかったのだろう? セーフだ! 誰がなんと言おうがセーフだ!」


 あきれた……どうしてそんなに前向きなのか分からない。だが悪い気はしない


 取りあえず、お互いの関係は今まで通りということになったが、アプローチは続けていくらしい。


 そして、往来できる方法が見つかった時は一緒にあちらの世界へ渡り、嫁に一言申すと息巻いていた。

 向こうに行けば嫁の方が立場が上になるから、止めた方がいいのかもしれないが


 しかし、本当にできた女性だ。これからの対応は真摯(しんし)にしないといけない


「陽二! パフェおかわりだ!」


 問題も一段落したからか、おなかが空いたらしい


「ああ、好きなだけ食べてくれ。ちなみに付き合ってないから聞くけど、嫁の問題が解決したら俺はハーレムを目指したい。それでもいいか?」


 真摯(しんし)がどっかいったな、最低! と声が聞こえる。


「そういう事は女に聞くな、最低だぞ? そして答えは駄目だ! どうせ私以外は見えない様にするからな!」


「そうか、肝に命じとく」




 この世界の出生率は男性4女性6で偏っている。

 死亡率の高さでいうと


 第一位が未婚の女性

 第二位が既婚の男性

 第三位が未婚の男性


 となっている。


 国としては女性が冒険者になるのは好ましく思っていない。重婚を認めているのは、少しでも歯止めがかけられないのかと苦肉の策である。その場合、男性、女性両側に補助金が出る。


 ちなみに重婚者の順位は僅差で


 第一位 夫を亡くした女性(仲間が面倒を見る)

 第二位 妻を亡くした男性

 第三位 未婚の男性


 一夫多妻、一妻多夫の割合は全体の10%ほど。90%は一夫一婦になる。


 その10%の内訳は

 一夫多妻 3%

 一妻多夫 7%


 意外と女性の方が、積極的に利用している


 重婚が認められているのは『一夫』と『一婦』だけで

 『多妻』『多夫』側には当然認められていない。

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