第50話 復活ゼラブラック!
ゼラガイオーは倒れてボロボロになってしまった。
だが、敵にやられたわけではない。桜が使った自滅技のせいだ
「コアも回収したし実験結果も上々ぢゃ!」
満足げに、残骸になってしまったゼラガイオーを尻目に呟く。
不幸な事故があったのは仕方がない、実験には犠牲が付きものなのだ
「ゼラブラックの犠牲は無駄にはしないのぢゃ! ブラックガイオーと名前を変更してもよいのぢゃ! ワーハッハッハ! ワーハッハッハ!」
それを見ていたジェームスは叫んだ
「仲間を簡単に切り捨てるとは、外道でござる!」
パトリックやハズキも同じ気持ちだった
「仲間を見殺しにするとは……それでもスーパーヒーローだというのか!」
「卑劣な!」
パトリックとハズキも桜達に怒りの目を向ける
そもそもセラガイオー内部で起こった出来事を、ジェームスやパトリックがなぜ知っているのか? 突っ込みはなしでお願いしたい
「貴様ら死にたいのか?」
パトリックとハズキの背後に殺気を放つ唯がいた。
忘れていたが、2人を避難するように連れ立ったのは唯だった。
「いつの間に?」
ハズキは一切の気配も察知できなかったことに驚愕していた。今更ではあるが最初から実力の差をまざまざと見せ付けられていた。
「ウチの娘に文句があるのなら妾が代わりに聞くのじゃ。それに、あれはセリフじゃ! 迫真の演技じゃからゆうて、おぬしらは本気で見殺しにしたと思っておるのか? この、たわけどもが」
あれが演技なのか? パトリックは率直に思った。
「アスモ、ランス! 一気に決める! ジェームスとでっかいやつは妾が捕獲する。残りは任せたのぢゃ」
「分かりました」
「ブラックの敵討ちだ!」
3人は横並びでジェームス達に向かってゆっくりと歩む
「蹴散らすでござるよ! 撃て! 撃て! 」
2頭のファイヤーイグナスは口から炎酸を次々と撃ちだし、キャロラインイグナスの背中ではジェームスが1連砲台を4つ並べて次々に弾を発射する
「ランスちゃん!」
「分かった」
「「水風槍!」」
アスモデウスが作り出した膨大な水の塊をランスロットの風魔法で槍に変化させ炎酸を的確に撃ち落とす
「妾の番ぢゃな! 乙女指弾!」
桜の放った乙女指弾でジェームスが撃つ砲弾の半分を破壊する
「母様!」
その言葉だけで唯は理解する。
本当に優しくて、できた娘だと思った。ゼラニオンメンバーでない母親にまで見せ場を作るのだから
「任せるのじゃ! 二丁拳銃」
ピストルを模した両手で、魔法を次々と発射していく。正確無比! ジェームスが発射する全ての砲弾を打ち抜き破壊した
「そ、そんな……うそでござるよ…」
「さすが母様ぢゃ!」
「やりますね、唯!」
「あ、あのくらい私にだって……」
ランスロットは、ちょっとだけ強がってみせた
その光景を、真横でまざまざと見せ付けられたパトリックとハズキは、口を大きく開けていた
「1発1発が私の昇斬波と遜色がないのだが……」
「あの様に連続で来られると、私の盾でも防げるかどうか……」
「桜! アスモ! ランス! 決めてくるのじゃ!」
娘の成長を見ることができて、どこか誇らしげな唯であった
「乙女大剣!」
「死神鎌砲!」
「乙女戦闘棒!」
*
「纏え風壁! 弱体化解除!」
ランスロットはスピードを上げ、炎酸を弾き返しながらファイヤーイグナスの上空に跳んだ
「水塊の攻撃!」
乙女大剣に向かって放つと風壁が水塊と融合して乙女大剣が2倍ほどの大きさになり、アクアストームとなった魔法が纏っている。
ランスロットは剣先を下に向けるとアクアストームに包まれたまま急降下、ファイヤーイグナスの固い鱗を乙女大剣で串刺しにすると体内でアクアストームを弾けさせた。
「ギャアオーーーーー!」
ファイヤーイグナスの断末魔が響いた。
*
「ファイヤーイグナスちゃんは、火の耐性が高いのですよね?」
死神鎌砲の中心部分から2本の支柱が飛び出して地面に突き刺さると、その場に固定される。
アスモデウスは、照準を合わせて下にある穴に腕を突っ込み魔力を注入する
「地獄極炎!」
銃口から炎が放出される。炎は焱竜の顔へと変化してファイヤーイグナスに大きな口を開き牙を向けた。
焱龍にかみつかれたファイヤーイグナスは瞬時に燃えつきてしまったが、焱竜の勢いは衰えることはなく、そのまま海の中に突っ込んで行った。
ジュッ! ジュワッ、ジュー
の音とともに、大量の海水が蒸発してあたり一面が何も見えない深い灼熱の蒸気に包まれる
「なにも見えないでござる! 熱いでござるよ」
桜はその蒸気の中、キャロラインイグナスの四肢を乙女戦闘棒で打ちつけてつぶしていく。
キャロラインイグナスはたまらず地ベタに這いつくばってしまった
「顔がガラ空きぢゃー! ゼラレッド、キッーク!」
月面宙返からの強烈なキックがキャロラインイグナスの顔に炸裂、すると白目を向き崩れ落ちる。
そのまま跳び上がり『熱い、熱い!』と騒いでいるジェームスの前に舞い降りた。
周囲一面にあった蒸気が晴れていく。その時ジェームスは自分以外の仲間が全て倒されている事を知る
ビシッと乙女戦闘棒をジェームスの鼻先にかざすと
「ジェームスとやら、おまえたちの負けぢゃ! おとなしく妾の元に来い! 大サービスの3食昼寝付きぢゃ!」
ジェームスはワナワナと震え涙ながらに訴える。
ここまで壊滅的なダメージを受けてしまっては、ジェームスの希望は叶えられない!
しかし、目の前のスーパーヒーローは『来い!』と手を差し伸べてくれている。もし自分に、利用価値があるのならば全てを捧げてもいい
「貴女方に着いていけば、サラデインの人たちを守れるでござるか? キャロラインを守る事ができるのでござるか!?」
「むむ?」
と桜は訝しげな表情をして少し思案すると、ジェームスに向けていた乙女戦闘棒を肩に乗せてハッキリと告げた。
「任せるのぢゃ! われらゼラニオンに不可能はない!」
その瞬間ジェームスは桜の軍門にくだった。
そしてゴブリン達の作戦の全貌を語ったのだった。
*
「たぶん、ここら辺ぢゃ」
ゼラガイオーのなれの果て、大量の土の塊の上で桜が指を差す。殉職した、われらが主人公の発掘中だ
「生存は難しいのではないか?」
ハズキが呟くが、桜たちには悲観的な雰囲気は一切ない。むしろ『面倒だから自分で這い出てこい』という雰囲気が唯と桜から漂っている
アスモデウスとパトリックは、ジェームスに付き添い魔石の回収と仲間の亡骸を集めて形ばかりの墓を作って弔った。
さすがにそのまま放置しておけるほどの仲ではなく、ジェームスの事情はひた隠しにしていたが、苦楽をともにした仲間だったのだ。
キャロラインイグナスだけは、桜の捕獲宣言通りに無事だった。回復魔法で傷を癒やすと暴れることもなく従順だった。これはジェームスに懐いているのが大きい。
「陽二! 陽二!」
ランスロットが叫びながら土を掘り起こしている。
その名前に気付いたパトリックは『まさか?』と思いながらもアスモデウスに聞いた
「アスモ殿、つかぬ事をお尋ねしますが、もしや陽二とは……」
「はい! パトリック様が思っている方で間違いないです」
数分後、ランスロットの手によって無事に生還した陽二。
桜が脱出する際、陽二がいた部屋ごと防御壁で守っていたのだ。当然、ゼラニオンメンバーと唯は気付いていたので、そこまで心配をしていなかったのだ
陽二も桜の性格、諸々を何となく理解していたのだが、いざ1人になると、どうしてもゴブリンの恐怖心に囚われそうになったので、セナドゥースの部屋に行きレヴィアタンを愛でて、現実逃避していたのは秘密だ
最初こそ、女の子の陽二に驚いていたパトリックだったが、ゼラニオンに加入した経緯などを説明すると納得していた。
「映画と違う顔ぶれなのは、変装をして正体を隠していた! ということなのか……」
当然、ゼラニオンが本当に存在していたのにも驚いている
パトリックと久しぶりの邂逅を交わし、マナリシア救出活動やパトリシア並びにカリンや兵士の現状を伝えると、当然のごとくマナリシアの生還を喜び、すぐにでも野営地に戻ろうとするのを桜が呼び止めた
桜たちとハズキはジェームスからゴブリン達の動向や作戦を聞いていたのだ。そこで、パトリックにも指示を出すらしい。
ちなみに、パトリックは王子だということを忘れてはならない
ゴブリンの作戦で、現在、一番危ないのは大森林シノフィール。ジェームスの『鷹の目』で確めたところ、すぐにでも助けに行かないと危ないという。
シノフィールには『作造樹』と呼ばれる200メートル以上の高さの大きな木が生えていてエルフが住む城になっている。
その中腹当たりに伸びた枝の先に『精霊の園』と呼ばれる場所があって、聖霊シノフィールの血筋やエルフの子供達が育てられている。
今、まさにその場所が狙われているのだ。
そこで、ゼラニオンメンバーがそれに対応することになった
「王子とハズキは王妃とシアを回収しつつ王都に戻り準備ぢゃ!」
「承知した!」
「ジェームスは……陽二! 光っている場所はどこぢゃ?」
「おなかのそこら辺だけど?」
陽二がジェームスの光っている部分を指で差すと、アスモデウスは間髪入れずにソレを抜き取った。
陽二以外から『おお~』と声があがる。
陽二には分からないが、見た目が人間に戻ったのだ
「ジェームスは王子とともに行くのぢゃ。キャロラインイグナスには、のちほど迎えをよこす」
「それならば、キャロラインで野営地まで送りその場に待機させておくでござるよ」
「うむ。任せたのぢゃ」
「陽二とランスは先に飛ぶのぢゃ! 実験ぢゃ!」
「準備万端でござるよ!」
3連結した砲台を背負ったキャロラインイグナスを誇らしげにジェームスが見ている
「まさかと思うが……アレで飛べと?」
「大丈夫ぢゃ! ゴブリンで実験済みと聞いたのぢゃ」
「ランス、おまえは平気なのか? どうみても危ないだろう……」
ランスロットはキャロラインイグナスを見ながら顔をニマニマさせていた。
全く危険視していない。むしろ、早く飛びたそうにもしている。
「妾は結界路を抜け、すぐにでもシノフィールに転移するが、それでは間に合わぬかもしれん。エルフ共を救ってやるのぢゃ! 時間がない、つべこべ抜かしとらんでさっさっと飛べ!」
*
「ランス殿、精霊の園の上空で開くように計算したでごさる。そうでないと中に入ったまま、精霊の園を突き抜けてしまうのでござるよ」
「着地はランスに任せたのぢゃ!」
「任せておけ」
2メートル程の弾の中に2人で入ると、当然ながら抱き合う様な形になる。
もともとは、ゴブリンを町に突入させるために開発した物らしい
外の声は聞こえずらいので運を天にお任せ状態だ
「何で俺なんだ?」
桜は実験を見てみたいし、アスモデウスは転移先でスムーズに行動するために必要で、唯は嫌がった。ただそれだけなのだ
じゃあランスロット1人に行かせればいいのでは? と思ったが、陽二の捜索が面倒くさいと思った桜は
「ランスが見つけたら陽二を同行させるのぢゃ、狭い場所に2人きりぢゃぞ?」
とたきつけたところ、見事にランスが釣れて陽二を発見してくれた。そういう事だ
「では発射するでごさるよ」
そういう訳でエルフを救うべく、2人を乗せた輸送ポッドは大森林シノフィールへ向けて飛び立ったのだった




