第4話 王都へ
まぶしい光によって目がぼやけていたが、どんどんと視界がクリアになっていく。
転移したその場所はマツサよりも広く、見渡すと魔方陣が4つ、スロットマシンみたいなモノが8つ程、そして鎧を着た兵士が20人ほどいる。
胸に同じマークが付いた鎧を身につけ、1メートル位の剣を携えて、さまざまな大きさの盾を持っている人が部屋のあちらこちらにいる。全員、真剣な顔をしていて空気が重い
「ヨーシン殿、お待ちしておりましたわ」
「カリン様、お久しぶりです」
身長160センチくらいの細身で色白、腰まである長い黒髪、大きな黒眼で長いまつげ、とてもきれいな顔。
今まで出会った女性の中でも間違いなくトップレベルだろう
しかしながらそれよりも注目する点は着ている服装。
水色を基調とした大きな襟のある上着と黒色のスカーフ、白・黒・青のチェック柄のスカート、どこぞのアイドルが着ているようなセーラー服である。厚みがあり神秘的な感じがして、ヒラヒラとはしていないがとても似合っている。
服装に目を奪われていると、カリンという女性が声をかけてきた
「ん、んん!」
はっ! やばい、すぐさま女性の顔に目を移す、初っ端からやってしまった
「初めまして、異世界人様。本日からあなたのお世話係りに任命されたましたカリン=レットイルですわ。お名前を伺ってもよろしいかしら?」
そう言って握手を求めながら近づいて来たので、近寄り握手しながら
「初めましてカリン様。中山 陽二と申します。陽二とお呼び下さい。以後、お見知り置きお願いします。とてもすてきな方でしたので思わず目を奪われてしまいました」
「ふふ、ありがとうございます。お上手な方ですわね。私の事はカリンで結構ですわ。陽二様分からない事がありましたら何でもおっしゃってくださいね? よろしくお願いしますわ」
「それじゃ私は大臣に報告しに行きますので、陽二君をお願いしますよ」
ここでお別れなのか?
「わかりましたわ、ヨーシン殿。では陽二様は私について来てくださるかしら」
カリンが手を引いてきた
「ヨーシンさんありがとうございました」
「それじゃあの」
一礼してカリンに引っ張られていった
「あの…あらためてお願いします」
「はい、よろしくお願いいたしますわ」
ここで、一番気になることを聞いてみた
「もの凄く気になる事があるのですが?」
「何かしら?」
「服装の事ですが、学校の制服なのですか?」
「違いますわ、私の家にこの服と似たデザインの服があったんですけど、それを元に作られた特別な服なんです」
「そうなんですか、とても似合っていますよ」
「ありがとうですわ。あら? 先程目を奪われていたのは私じゃなくて服の事だったのかしら?」
前屈みになり口に左ひと差し指を当てながら見上げてくる
「両方です」
「そう、ならいいですわ」
そんなことを話ながら歩いた
*
転移門の部屋を出てカリンに手を引かれながら石造りの階段を上り、カーペットが敷いてある廊下まで出てさらに歩く。見た感じ全て石でできている建物なので、王都の城に転移したのだろうか?
廊下には等間隔に花瓶が置かれ、壁には剣やオノが飾られていた。窓の外には中庭があり木や花などの植物が見える。高さから3階くらいだろう。反対側にはドアが等間隔で並んでおりドアには文字が書いてあるが読めない。
「こちらが、陽二様のお部屋になります」
部屋に到着すると、あらためて自己紹介をした。様付は勘弁してほしいと頼んだら快く了承してくれた。
部屋には高価なダブルサイズのベッドと丸テーブルに椅子が2脚
風呂トイレなしのワンルーム。多分客間なのだろう
「それじゃあ陽二、予定を説明するわね」
「うん、よろしく」
お互い普段の口調で話すようにお願いした。
カリンは年齢17歳。王都から北にある町ソラマン領主の娘だ。王都には魔法の勉強に来ていて、お客の世話役も大切な勉強になるらしい。
先程メイドさんがお昼ごはんを運んでくれたので、カリンと一緒に食べた。パンとサラダとスープだ
カリンは紅茶をすすり、口を潤す
「まず大切な事は謁見かしら、謁見は16時からよ」
「謁見って作法とかあるのかな? 何も分からないんだけど」
「なんとも言えないけど、陽二の謁見は会議室で行うらしいわね。先に入室して王様が許可を出されるまでは口を開かずに、質問にだけ答えればいいんじゃない?」
「分かった」
「その後は自由よ、王宮を案内してあげるわ」
「頼むよ」
「明日からの午前中は各室長とお話。この部屋に来てくださるから待っていればいいわ。午後は自由時間になるから私と一緒なら王宮の外に出てもいいわよ」
「町を見てみたいな」
「一緒ならいいわよ?」
「デート!?」
「ち、違うわ。何を言ってるのかしら、あくまで世話係としてよ」
「ですよねー」
「へぇ~、ずいぶん雰囲気変わったじゃない」
「お互いさまじゃない?」
「そうね。ねえ、そう言えば陽二って歳はいくつなのかしら?」
「よ……17歳だ」
あぶねぇ、今は17歳だった。別にアレコレ狙ってる訳でもないことはないけど、年上に見られてかしこまられても面倒だ。
「同い歳なのね。良いお友達になれそうだわ、よろしくね!」
そう言って笑う彼女は初めて見た印象とは違い、きれいなんだけど、とてもかわいらしい少女に見えた。
そうだ! 魔法について聞いてみよう
「カリンは魔法を習ってるんだよね?」
「そうよ、私は水魔法が使えるわ」
「おお! 見せてもらってもいい?」
「いいわよ。何にしようかしら?」
カリンは立ち上がり窓に向いて呟く
「****.*****.****** 水の攻撃!」
右手人差し指から10センチ程の細長い水の塊が『ブシュッ』と音を立て、もの凄い勢いで飛んでいった。ほとんど見えなかった……
「そう言えば『イガネオ』も魔法なんだよね?」
「勇者からの贈り物のことね。ギフトは誰でも使える魔法で勇者が作ったと言われているわ。このギフトの登場で、人の生活が一辺したとも言えるわね。他にも魔道具や魔弾砲も有名ね」
「パレット?」
「魔法が使えない人でも魔法が撃てる道具よ。あらかじめ魔法をこめた弾、魔弾って言うんだけど……それを装填して撃つのよ」
「いいな、それ欲しい」
「魔弾砲も魔弾もとても高価でまず手に入らないわ、王国兵士なら話は別だけど。でもスノームに行く機会があれば、お店にたくさん置いてあるから簡単に見ることはできるわ、見るだけならタダよ」
機会があれば見に行こう
「スノームってどこにあるの?」
「王都から北東にあるわ、魔車ですぐよ」
「魔車?」
「馬の代わりに魔石で動く荷車で、馬車の3倍は速いわね。その代わり慣れてない人だと大変なことになるわ……でも本当に常識ないのねぇ、あきれるわ……」
「異世界人なんだから当たり前じゃない?」
「ここに来るまで何を見ていたのかしら?」
カリンの視線が痛い。だが、分からないことがあったらその都度聞く姿勢は変えない。聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥だ。
ちなみに、教えるは一時の優越感。教えぬは一生の優越感ってのも何かの本で読んだ。
「最後にこの国のお金のことを教えてよ」
この国のお金は4種類。いろいろな物の値段をカリンに聞いた結果、日本円に換算すると
銅貨100円
銀券1000円
銀貨10000円
銀貨100枚で金貨1枚
で決定した。