第2話 勇者と異世界人とサクランヤマ
「助けてくれてありがとうございます、ところでマツサに向かっているようですけど、迷惑じゃなかったですか?」
左に座るいかついオッサンに聞いてみる
「ああ、おまえみたいなやつが昔からいるらしいんだよ、異世界人を見つけたら領主に報告することになっているんだ。迷惑に感じる必要はないぜ? おまえは丁重に保護してもらえるし、届けた俺にも褒美が出るからな、どっちも損はないだろ?」
未知の技術や知識を持つ人もいるので、発見したら領主か国の兵士に引き渡せば褒美が出るらしい。異世界人は保護されてwin winである。
「で? 連れて行かれた後はどうなるんですか? 自分で言うのも何ですけど…身元も怪しいし異世界人だと証明もできないですし‥」
「心配するな、ステータスが確認できる鑑定眼持ちが居るから大丈夫だ」
ステータスだと? あのステータスか?
「あの、ステータスって何ですか? どうやって確認するんですか?」
「ん? 知らないのか? 仕方ないか、ステータスって頭の中に思ってみな」
陽二は言われた通り、頭の中にステータスと思ってみた
中山 陽二
勇者 LV.0
スキル
異世界人
勇者だと? ‥あのハーレムを作ったり、やたら女の子に持てまくる勝ち組か! しかし職業が勇者て‥勇者って職業なのか?
あとスキルの異世界人ってなんだよ! 決定的な証拠ではあるけど何かできるのだろうか?
「意味が分からん」
つい声が出てしまう
「ん? まあ、初めて見るなら分からない事ばかりだろうが、ヨーゼフが教えてくれるだろ」
「ヨーゼフ?」
そうか、ヨーゼフさんは他人のステータスが見えるのか……これは隠し事できないな。どうやら普通の人たちは他人のステータスを見ることはできないらしい。
「ところで…最初、言葉が通じなかったのに途中から通じるようになったのはどうしてですか?」
「ああ、あれはなギフト、通訳してくれる魔法だ」
「魔法ですか? この世界には魔法があるのですか?」
「そりゃ当たり前だろ…魔法、知らないのか? 普通だろ?」
「あなたも魔法が使えるんですか?」
「ああ、属性の魔法は使えないが、ギフトはみんなが使える魔法だ。さっきの通訳もその魔法の一つだ。」
へぇ、素晴らしい。みんなが使える魔法かぁ、使ってみたいなぁぜひともご教授願おう
「その魔法って、僕にも使えますか? できるなら教えてもらえませんか?」
「ああ、子供でも使えるものだし教えてやるよ、普通の魔法と違って、詠唱無しで呪文だけだからなぁ、便利だし覚えて損はないだろう。ギフトはな、呪文は1つだけだが効果は6つ以上ある」
オッサンが言うには、呪文1つで6種類以上の効果があり、思ったことに対して自動で発動するらしい。
火 火をつける。
水 水を出す
風 翻訳、ただし、ある程度知能のある相手にしか通用しない
土 土を出す
光 光源を出す
闇 固有の空間に物を出し入れできる。
正直凄いな、水や風はもちろん、実用的だが、闇なんて所謂、魔法かばんってやつか? 自分の体積程度の物は重さゼロで持ち運びできるらしい。素晴らしい!!
「それで、呪文は何と唱えれば良いのですか?」
「呪文は (イガネオ) だ、さっきの属性効果を思い浮かべながら唱えれば良い、ハッキリ口に出して唱えなければダメだ!」
おお! 早速、使ってみよう! ちょうど喉も渇いたので目の前に手で器を作る感じにして、その中に水が出てくるようにイメージして唱えてみる
「水!!」
すると手のひらの中にあふれない程度の水が出てきた 「おお! すごい」 呟きながら水を飲み干して何度か繰り返す
「できました! 教えてくれてありがとうございます!」
「別に大したことじゃない。普通だろ」
陽二は教わった魔法が楽しくて、水を出したりポケットのスマホを空間に出し入れしたりして遊んでいた、とそこに
「そろそろ日も落ちて来た事だし、野営の準備でもするか!」
開けた場所に到着するとバリソンが声をかけてきた
「分かりました。何か手伝える事がありましたら言ってください」
近くの木に馬のひもを結んで、馬を休ませるバリソンについて行きながら聞いてみる
「それじゅあ、まきでも集めて来てもらおうか、まてよ、ちょうどいい教えてやるから一緒に来い」
「了解です」
バリソンと一緒に燃えそうな木や葉っぱを集める
「まあ適当でいいぞ。ちょっと見てろ、まず穴を掘るか石を置いてかまどを作るんだが、今回は穴を掘ろう。」
バリソンが30センチ程の穴を掘る、その穴の四方にも10センチ程の小さな穴を掘った
「中央の穴に拾ってきた葉っぱや小枝を入れて、上に太い木を置くんだが、周りから空気を吸い込むように置くのがポイントだ、で、下の葉っぱを目標にして 火で 火が着ききるまで意識を集中するんだ」
なるほど、集中している時間だけ魔法が継続するって事かな?
「あとは土台の石を置いて、その上にアミと横になべを置けば汁物、横のアミの部分で肉や野菜も焼けるって寸法よ」
ほほう。よく分からないけど手際がいいのだろう。陽二は鍋に意識して呪文を唱えてみる。自分の好きな感じで水の量が調節できるらしい。ものすごい万能だな。
バリソンが、何やら説明しながらテキパキと作業してあっという間に食事を作ってしまった。
「ごちそうになります」
「おう、遠慮せずに食え食え」
途中でも干し肉やパンみたいな物などをいろいろと頂いたが、食べ物に関してはおいしく食べられたので心配せずとも良さそうだ。
片付けも終わりくつろいでいると、遠くの方で噴火のような音がした
「今のは? 噴火ですか?」
「噴火? なんだそれは? あれは山が爆発しているんだ。山に魔素が集まるとおこるらしいが、まだ良く分かってないんだ」
それを噴火と言うのではないのだろうか? 魔素? は関係ないと思うがファンタジーなのだ、郷に従えばなんとやらだ! 魔素なのだろう。
「ところで…今は見えませんが、海の向こうに大きな山があったじゃないですか? 名前なんてあるんですか?」
「名前か、あの山はサクランヤマと言うんだ」
「サクラジマじゃなくて?」
「いや、サクランヤマだ」
「ふーん、ちなみに阿蘇山とか富士山とかってありますか?」
「アソザンは知らんが、王都からフジヤマってのが見えるらしいぞ」
なんとなくだが酷似している、決め付るのは良くないと思うけど、ここも日本なんだろうなぁ……てことは今いる場所は九州の南、鹿児島だよな? で王都のある場所が富士山の近くってことか……
そんな事より、何も分からないのだから町に着いてから調べればいい。せっかくだから今を楽しむか
「明日には到着するんですよね?」
「ああ、明日の12時頃には到着するだろうな」
「12時? 時間なんてあるんですか?」
「ああ? 言ってなかったな風の効果だ、時間を考えながら唱えてみろ」
「はい!」
「いま何時? 風」
視界の隅にデジタル表記の時間が現れ、一定時間で消える。すごい! 時間が分かる! 本当に万能だなぁこの魔法、隠された効果がまだありそうだ、時間ができたときにいろいろと試してみよう
「他にも聞いていいですか?」
「ああ、何でも聞いてくれ。かわりにおまえの世界の事でも聞かせてくれ」
結局、寝付くまで会話が続くのであった。
「******」
「起きろ、出発だ。飯は食いながら行くぞ」
「おはようございます。了解しました」
そそくさと荷物を片付け出発の準備をする
「かまどはそのままで良いぞ、誰か使うかも知れないし目印にもなるからな」
「了解しました。」
今から6時間ほどで町か、楽しみだな。
自然に囲まれた大地を見ながら、自分に起こっている状況を棚上げして思いにふけっていた