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第23話 結界路の外へ 

 


 陽二がゆっくりと目を開けると、そこは真っ暗闇。そして、落下している感覚。


 陽二が転移して来たのは空中だった。初めて転移を使った事もあり明確なイメージができていなかったのだ。


 このままでは地面に激突して大怪我をしてしまう。

 陽二は訪れるであろう衝撃に身を構えたが、その衝撃が陽二の身に襲い来ることはなかった。


 陽二の転移にいち早く気付いたランスロットが、落下してくる陽二を見事にキャッチした。

 多少の衝撃を感じたが大事に至ることはなかった。


「助かったよ、ありがとう」


 温かい双丘に包まれ、2重の意味を込めて礼を述べる


「気にするな、私だって慣れるまでは失敗したものだ」


「で、そろそろ降ろしてくれないか?」


 桜やシアの声が聞こえたのでランスにそう告げるが、聞こえていないのか一向に降ろす気配がない。

 逆に(つか)む手に力が入ってくる。目が徐々に慣れてきたのもあってランスの表情が見えてきた


 ランスの顔は何かに我慢しているような、けど嫌がっておらず待ち望むような…そんな表情


 はっ! 原因はこれか! 


 無意識のうちにランスの胸を触っている手があった。手のひらに収まりきれない(あふ)れ出す果実をモミモミと

 

 この弾力は素晴らしい! 


 さらに頂点にあるコリコリしたものを指で右に左に()で回す。


 ゴツン


 と同時に陽二を支える力が消えて、地面に落とされてしまう。


「この戯けが、時と場所を考えるのぢゃ」


「お、お兄ちゃん。なにやってるの!」


「ナーナ?」


 どうやら桜に鉄拳制裁を受けた陽二を見て、ランスは慌てて手を離したみたいだ。


「突然、何しやがるんだ」


 桜は陽二をスルー


「おまえもぢゃランス!」


「な、何の事だ? 私は落ちてきた陽二を優しく受け止めただけだが?」


 桜とランスの言い合いが始まったそばで


「お兄ちゃんのエッチ。ナーナちゃん、やっちゃって!」


「ナーナ!」 


 手のひらの向きが上下逆のかわいい敬礼をしたナーナが無数の火の玉を陽二に飛ばして折檻(せっかん)する。


「痛いから、止めて!」



 *



 騒動も収まりあらためて周囲を確認する。


 暗闇の中に青白く光るレンガ程の物体。それが港町サラデインの方向から王都方面に等間隔で続いている。


 この物体の正体こそが結界路だ。本体は地中に埋められていて、結界を発生させる部分だけが地表に出ている。


 大きさは不明だが、今の形になるまで幾度も改良が重ねられた、結界路が現在の規模になったのは大凡300年前と言われている。

 完成には、おおぜいの汗と涙に多大な資源とお金が投入されたが、一番忘れてはならないのが魔物の闊歩(かっぽ)する中を作業して亡くなった尊い犠牲なのだ。


 結界路の周囲は中も外もむき出しの大地。辛うじて背丈の低い草花が生えてはいるが、明らかに異様な風景になっている。


 その10メートル先には、5階建てマンション以上の木々が生い茂りその奥に何があるのか見当も付かない。

 

 木々の足元には太陽の光も届かないのに、さまざまな草や(つた)が行く道をふさいでいる。


 一部の人族は知っているが、この中には薬草や魔(たけ)など豊富な資源が生えている。


 桜は結界路の外を見ながら(つぶや)


「馬鹿みたいに騒ぐから感づかれおったではないか…ランス、場所を変える、皆を連れて行くのぢゃ」


 そう言い残すと、結界路を王都方面に走っていった。その姿を見送るとランスに連れられ街道まで移動してきた。


 その時だ、桜が向かった方向から大きな爆音がした。


 ランスの


「注意を引きつけに行ったのだ」


 の声で納得する。


 ほどなくして桜が帰って来たと思ったら何かを考え込んでいる様子だった。


「全員、注目ぢゃ!」


 桜の一言で、自然と黙り込み桜の周りに皆が集まる


「精霊擬きの事で話があるのぢゃ」


 桜は、ナーナが結界路を通過してやって来たと言う事実と桜の考えを(まと)めたものを話し始めた。


 ナーナの体の中には魔石の欠片があって、その欠片が頭に到着するとナーナは完全な魔物になってしまい手遅れになること


 確証はないけれども、結界路で魔石の欠片を破壊することが可能で、おそらくナーナの体にはダメージがないと思われること


 そして、実際目で見て確かめたいこと


 その話を聞いたパトリシアは


「なら今から行くんだし、良いタイミングだね」


 とナーナに話していた。


 桜はナーナと話を始める。


 結界路を通過したとき、体に影響はなかったか? 

 痛いカ所は無かったか? 

 意識はあったか? 

 など他にもいろいろと聞き出し、何かしらの確証を得ていたようだ。



 *



 結界路の外は魔物が闊歩(かっぽ)する危険地帯。

 もし見つかったら普通の人族ではひとたまりもない。そのため、ゼラニオンに変身して洞窟に向かうことになった。


 変身するのに必要不可欠なのは、仲間の腕輪(ゼラブレスレット)桜の魔法(ヒーロータイム)


 変身すると身体能力が大幅にパワーアップする。


 その他にもヒーロータイムが条件下になるが、腕輪のさまざまな能力が助けてくれることになる。

 (腕輪の能力を使うのに変身の必要はない)


 今回で言えば魔物と同じ視界、暗闇でも昼間に近い形で見られる能力『魔眼』が一番に上げられる。


 一般的には『ネコ目』の呼び名で知られているが、こちらの世界では総称として『魔眼』と呼ばれている。


 冒険者や炭鉱労働者、暗闇で働く者はスキルに付随する形で得ることが多い。

 魔眼と言えば特別な能力を想像する事も多いが、特殊な物を除けばありふれた物と言える。


 調合や錬金をする前に完成品が見えたり、人のステータスを見る、物を鑑定する、体の状態を診察する、ウソを見抜くなどだ。

 大袈裟(おおげさ)に言ってしまえば、未来を見たり透視したりできる魔眼だってあるかもしれない。


 元世界の話だと『ネコ目』は暗闇でも50メートル先まで見ることができる目薬が開発されている。



*



 結界路の近くにある巨大な(うろ)まで魔物に気づかれない様に移動してきた。ここで変身して外に出るのだ。


 桜が魔法(ヒーロータイム)を唱えると腕輪に手を当て変身する。


「「「乙女戦闘服召喚ゼラニュームドレスアップ!」」」


 腕輪から陽二の前に黒い珠が飛び出し光に包まれる。


 気がつくと、いつの間にやら全裸になっていた。目の前には初めてUMAと遭遇して驚いた顔をしたナーナと手で顔を隠して恥ずかしそうにしているパトリシア。


 だが指の隙間にキョロキョロと動く黒い瞳が見える。さらに少しずつ隙間が広がっている様な気もする。


 チラッとランスの方を目だけで見てみると……ランスも全裸だった。

 視線を感じたので、ふと視線を上げるとランスと目が合う。

 

 すると、チラッチラッとランスの視線が上下して、吹っ切れたのか、息子をロックオンしたまま動かなくなった。


 こいつ……見てやがるな。ならば遠慮はないお互いさまだ!


 と思ってしまったのが悪った。息子がムクムクっと準備運動を始めたのだ。


 あかん、シアの前でおっ立ててしまうと、いろいろな所から苦情が殺到する。精神集中だ! 陽二落ち着け、おまえはやればできる子だ!


 目をつぶり集中すると、シーンと静寂が訪れる。


 やったか? 俺は押さえ込めたのか?


 陽二が薄らと目を開けると、先ほどよりも近くにナーナとパトリシア、隣には変身完了したランスロットも居る。


 最前列で息を飲み何かに凝視していて、わずかに口元が動いている。


 ガ… ン… バ… レ…? その時ランスの胸元が目に飛び込んでくる、見えそうで見えないチラリズム! ついさっきの全裸が脳裏に描かれた。


 ムクムクッピーン!


「「キャー!」」「ナーナ!」


 最前列は黄色い歓声なのか悲鳴なのかで興奮のるつぼ。一度この状態に進化してしまったらどうにもできない。


 ランスの変身は終わっている、なぜ俺の変身は終わらないんだ?


 ()色違い(・・・)の乙女戦闘服はスカートとパンツを除いた全てが装着済みなのに次が装着されない。


 もしかして…桜の悪ふざけなのか? 


 桜を探すと、まさかこんな騒ぎになるとは思わなかったと思える様な表情で固まっていた。


 息子を見るのも嫌なのか、決して下には視線を向けない。


 ジーと視線を送ると、ハッと気付いた桜。目で合図を送る


(早く終わらせてくれ)


 コクッコクッと(うなず)くと指をパチンと鳴らした。

 それを合図にパンティーとスカート? が装着されていく。次第に景色が下がっていき胸がバーン! 下半身がシュンとなった。


 不思議な感覚だった『?』と思い下を見ようとしたら何かが遮っている。


「よ、陽二……?」

「お兄、ちゃん?」

「ナーナ?」


 ん…なんだこれ? 


 遮っている物を両手でモミモミすると痛みを感じる。『はい?』と思いながら下半身をパンパン 


「あれ~?」


「陽二、こっちぢゃ」


 桜に呼ばれ振り向くと、そこには見たこともない女の子が居た。


 艶々の長い黒髪に黒いカチューシャ、目は大きくパッチリしていて二重まぶた。鼻筋もシュッとしていて、少し厚めの唇。


 目線が同じなので、女の子にしては高身長と言える。痩せても太ってもなく出るところは出ている良い感じの体形をしている。


 服装は色違いだが、桜の乙女戦闘服(ゼラスーツ)(うり)二つ、なぜかカチューシャにネコ耳がついているが、そこはスルーするとして…


 まずはあいさつだな。


「初めまして、俺の名前は……ん?」


 陽二は右手を上げて、ふりふり…


「長いわ! 何時まで待たせるのぢゃ!」


 桜は持っていた大きなカガミを投げ捨てた……かの様に見せかけて、収納スペースに入れた。


え、今の私なの(は、今の俺なのか)?」


「遅いのぢゃ、夜が明けてしまうわ!」


 ゼラニオンは男子禁制の美少女戦隊なのだ! 乙女戦闘服の力によって陽二は身も心も陽子ちゃんになってしまったのだ。


 陽二は自分の体を確認する。胸をモミモミ、下半身をパンパン。胸をモーミモミ、下半身をパンパパン


私の息子は(俺の息子は)どこに行っちゃったの(どこに行ったんだ)?」


「陽二、気をしっかり持つのだ、その姿に負けては駄目だ! 自分を見失なうな!」


 ランスロットは陽二の肩を(つか)み、必死に男の陽二を引き戻そうと話し掛ける。


 頭一つ大きいランスロットを見上げるような形になってしまった陽二は、なぜかランスロットに見とれてしまう。


「ランスロットさんって、良く見ると格好いい…モデルさんみたいね」


「そ、そうか。モデルと言うのが何か良く分からないが、格好いいのか……って違う! 陽二、目を覚ませ!」


 パンパン、パパンと陽二の頬を平手打ちする。その隣では深刻そうな顔でパトリシアとナーナが相談している。


「ねぇナーナ、今度からお姉ちゃん! って呼んだ方が良いのかなぁ? それともお兄ちゃん! でいいのかなぁ?」


「ナーナ?」


「そうだねぇ、困ったよね」


 パトリシアとナーナは、2人してウンウンとうなっている。


 その姿と話し声がランスロットの耳に届いてしまったもんだから、さらにヒートアップ


 桜は見ていて思った。


 面白いのは面白いけどちょっと想像していたのとは違うのぢゃと



*



 その後、ランスの必死な平手攻撃で男心を取り戻した陽二は、息子を取り戻すべく


「ここだけは、男に戻してくれ」


と頼んだのだが…戻って来たのは、自分の貝に閉じ込もってしまった息子だった。


 パトリシアとナーナに独り言を聞かれてしまって


「ケーホーって何? 何をむいちゃうの? 何がムキムキなの? ねぇお兄ちゃん? お姉ちゃん?」


 と質問攻めにあってしまったので、教育上よろしくないと思いこの話を強制的に終わらせた。

(変身完了時は娘だが、意識すれば息子は帰ってくる)


「いい加減に出発せんと本当に夜が明けるのぢゃ」


 とぬけぬけと言い放った桜に「(おまえ)のせいだろう!」と突っ込む陽二とランスロットだった。



 *



 変身を完了した陽二たちは結界路の手前まで行動を開始した。


 桜がナーナの体内にある魔石の欠片を両手首と尻尾の付け根にあることを確認する。


 この魔石の欠片が頭に到達すると、合体して魔石になり魔物へと変化してしまう。

 魔石はその後、体内のどこかに移動してしまうらしい。


 魔物によって魔石のある場所はさまざまだが、大抵の魔物は体の中心にある場合が多い。 

 この魔石が魔物にどの様な作用を引き起こしているのかは分かっていない。


 桜は周囲を警戒してナーナに結界路の通過を(うなが)す。

 

 桜はナーナの後ろから魔石の欠片の変化に注視する。何かあったら飛び出せるようにランスロットが控え、陽二とパトリシアは桜の後ろにて待機する


「ナーナ」


 ナーナが結界路を通過すると、桜は「よし!」と(つぶや)く。


 良い結果が得られたようだ。


 先程の洞に戻り話を聞く


(わらわ)の思うた通りぢゃったわ! これで何とか手を打てそうぢゃ」


 めどが立ったみたいで良かった。


 パトリシアとランスロットもナーナに喜びの声をかけている。


 当の本人は意味を全く理解していないのだろう、ぽけーっと2人を見上げている。

 突然『あなたはもうすぐ魔物になりますよ』と言われて信用しろというのが無理だろう。


「なぁに(わらわ)には結界路を管理しておる下僕(げぼく)が山ほどおる、簡易の結界路を速球に作らせるのぢゃ、安心してよいぞ? ワーハッハ! ワーハッハ!」


「速球じゃなくて、早急に頼んでくれ」


「ナーナちゃん。良かったね」


 道案内のナーナを先頭に結界路の外に出る

 パトリシアはランスが背負っている。森の中は見通しも悪いので、そのまま突入するのは大変危険だし悪手だ。


 そこで桜は考えた。


「上ぢゃ」


 木の枝を猿のように身軽に登っていく、ゼラニオンに変身した事で身体能力が大幅に上がっている。そのおかげで苦も無くピョンピョンと跳ねるように木を登る。


「あっ動物さんだ」


 パトリシアの言葉にびっくりして逃げる小動物。

 木の上で生活しているのだろう。巣もあったので木の上まで魔物が襲ってくることはないのだろう


 頂上までたどり着くと、そこは木の上とは思えないほどの光景だった。


 木の葉や(つた)が幾重にも重なり緑の平野を作っていた。

 どれ程の広さがあるのか分からない。足元も木の上とは思えないほどしっかりしていて地面に立っているようだ。


 花が咲き乱れている場所や、小さな植物が集まっている群生地は月の光に照らされてとても美しい光景。


「きれいな場所だね」


 パトリシアが(つぶや)いたその先は、蘭に似た花の群生地。風で揺られた花がキラキラと光を跳ね返していた。


 緑の平野を駆ける。先頭からナーナ、桜、陽二、ランスロットの背中にパトリシア、5人は目的地の洞窟に向かって一直線。

 5分ほど走っただろうか、緑の平野の終わりに到着する。


「む、待ち伏せされたのぢゃ」


 上から見下ろすと……下の大地には大量の魔物が待ち構えていた



変身中は基本『女の子』です。


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