第9話 映画館
映画館にやって来た。入場料は銅貨1枚で財布に優しい。
さらに銅貨1枚プラスすることで、飲み物とお菓子が付いてくる。映画と言えばポップコーン。
「私、毎回この映画を見てるのよ。今回はどんなお話なのか楽しみだわ」
もう待ちきれない! って感じのカリン。
「毎回この映画を見てるって事はシリーズ物なの? 面白いの?」
「見てのお楽しみよ! 場所は早い者勝ちだけど、どこでも同じだしね」
受付でお金を渡し飲み物とお菓子をもらい中に入った。
映画館の中は外から見た建物とは思えないほど広く、野球やサッカーが余裕でできるくらいの広さがあった。
しかしスクリーンも客席もないただの広場。
映画を見に来た人たちは地ベタに座って始まるのを待ってる。
イスを持ってきている上級者っぽい人もいるな…
「これは、どの様なシステムなの? イスはないの?」
「どうって、映画じゃない。陽二は見たことないの? イス、いる?」
そりゃあ立ち見の場合もあるけど、普通はイスに座って見るんじゃない?
ドゴーンと、ものすごい爆発音が鳴り響き周囲が真っ暗になった。と思っていたら主題歌? が流れてきた。
「始まったわ!」
声は聞こえるのに、すぐ隣のカリンが真っ暗闇で見えない。
すると中央の空間に、横並びで巨人が3人現れた。
「うわ、でか! な、なんだ?」
すると、一瞬で陽二たちの居た場所がどこかの町並みに変わった。
なるほど、ここの空間全部がスクリーンなんだ。まるで映画の中に入ってしまったみたいだ。
巨人かと思っていたのは、大きく映し出された女の子3人組。
左側の10代と思われる女の子がアスリー
髪は青みがかった黒く艶のあるふわふわ感のボブカット
少したれ目で優しそうな感じが印象的のかわいい女の子。
上着は黒のワンピースタイプで足首まである長いスカートが特徴的なメイド服。
肩口や袖、スカートの裾の部分に白色のフリルが付いている。
胸元の白い紐でディスプレイ結びされている部分がかわいらしさを引き立てている。
ちなみにメイドカチューシャはつけていない。
関係ないが胸がとても大きい。完璧だ!
真ん中の小さい女の子がサラリー。
髪は薄い赤色のサラサラしたショートヘアー。
黒い瞳でとてもかわいらしい少女。あれは小学生、それも低学年くらいだ。
服装はゴシックドレスとでも言えばいいのか
全身黒色で腰の下からスカートが広がっているタイプ。
胸元には大きなリボン、スカートは細かなデザインの黒と白のレースが何重にも重なってできている。
他にも細かなデザインがちりばめられているのだが説明できない。
腕には肩まである黒いロンググローブに黒いエナメル質の靴。
この少女が3人のリーダー。関係ないが絶壁だ。
右側の少し大人っぽい女性がランリー。
蒼髪の長いポニーテールで蒼い瞳。
凛とした表情をしていて勇ましく見える。
服装はアスリーと同じメイド服だが膝上のミニスカートが恥ずかしそうだ。
アスリーは分からないが、ランリーは白いストッキングをはいている。
関係ないが立派な山脈をお持ちだ。アスリーと双璧をなす
*
体に感じる振動や爆風の熱、目の前にいる様な人物映像と触れられそうな距離感に、あたかも映画の世界に入ってしまったかの様な錯覚を感じる。
その事に感動を覚えて棒立ちしていると
「サラリーちゃんって小さいのに異様に胸が立派なのよね……ランリーさん…小さくてもガンバレ! 」
そんな内容の声がカリンから聞こえた。
カリンは何を言っているんだ? サラリーって絶壁じゃね? それにランリーは立派なブツを持っているじゃないか!
カリンの呟きに ? と思いながらも映画に集中する
この3人はチームゼラニオンと言うらしい。
悪の大王サターンが人族の住んでいる国を手に入れるために次々と魔物を送り込んでくる。
魔物は人族の姿に化けて窃盗や恐喝などの悪事を働く。
今回の敵は盗賊バージョン。
商人の馬車が襲われ馬車ごとさらわれたのだ。
チームゼラニオンは盗賊たちのアジトを突き止めて潜入していたのだが、盗まれた馬車を発見したところで運悪く盗賊に見つかってしまった。
そう、お約束である。
「おまえら何者だ! それを見られたからには生かしては返さんぞ!」
「サラリー見つかってしまったぞ」
「サラリーちゃんが馬車の中にあった物をつまみ食いしてるからですよ?」
「むぅ、気づかれてしまっては仕方があるまい。ぢゃが証拠は見つけた。今さらコソコソする必要はないのぢゃ!」
馬車から外に飛び出す3人。
だが、そこに待ち構えていたのは盗賊の大集団
「ぐわーはっはっは。引っかかったなゼラニオンどもめ! おまえらが来ると分かっていて罠をはったのだ!」
盗賊のボスだろうか、体長5メールはある爬虫類の魔物に乗っている男が叫んだ。
「な、なにぃ罠ぢゃと?」
驚くサラリー
ボスが叫ぶ!
「てめえら、やってしまえ!!」
「「「おお!!」」」
なぜか盗賊たちが、黒い全身タイツを着た戦闘員に変わっている。
総勢30名。目出しマスクを被り額には『サ』の文字が書かれている。おそらく『サターンのサ』だ! 俺の感がそう言っている。
「キー! キーキー! キーキー」
3人に襲いかかる悪の手下共。
その時だ! 3人は同時に建物の上にジャンプ。
そして
「ふん、戦闘員と雑魚ボス風情が! 妾はワザと罠にかかってやったのぢゃ!」
腰に手を当てふんぞり返りすぎて後ろに倒れそうだ。
サラリーの後ろでさり気なくアスリーが支えているのが見える。
「まあ、サラリーちゃんウソばっかり」
サラリーの頭を優しく撫でるアスリー
「サラリー、ウソは駄目だ! 子供たちも見てるんだぞ?」
サラリーのほっぺに指を食い込ませるランリー、2人してサラリーを弄る
「ウ、ウソではないのぢゃ。つまみ食いしておったのも計算済みぢゃ!」
2人の手を払いのけながら言うサラリー。顔は真っ赤だ。
「あいつ…リーダーじゃないのか?」
陽二にはコントにしか見えない。
戦闘員とボスがサラリーに指をさし野次る
「ウソつくな! ウソつきは泥棒の始まりだぞ?」
「キーキー!」
戦闘員たちは石を拾ってサラリーに投げつけるが、本気で当てる気はないらしく届いていない。
カリンや周囲の観客たちは
「さすがサラリーちゃん!」
「かわいい!」
などと黄色い声援をあげて大喝采だ!
「うるさい、うるさい、うるさ~い! もう妾はおかんむりぢゃ。行くぞ! アスリー、ランリー」
「「はい!」」
3人は左手の甲を向け同じポーズをつくり、左手首に付いている腕輪のスイッチを押した。
「乙女戦闘服召喚!」
こ、これは……戦隊モノ?
あの変身道具は魔道具なのだろうか? それとも特撮技術なのだろうか?
眩しい光の中うっすらとだが胸の前に玉が現れ戦闘服が装着されていくのが見える。
あの服は、カリンが初日に着ていた服にどことなく似ているな、出どころはここか! と言うことは、カリンは毎回映画を見てるくらいのファンなので
あの服はコスプレだったって事?
光が玉に吸い込まれそのまま胸に装着される。変身が終わるまでボスと戦闘員たちは一歩も動かずジッと見ている。
いつも思う『今、攻撃すればいいやん!』と
*
「まだまだ幼い小さな蕾! 花が咲くのはちょっとまってね! ゼラ・レッド!」
「幼い蕾のお世話役! ゼラ・ブルー!」
「幼い蕾の用心棒! 突撃特攻、ゼラ・イェロー!」
「3人そろって! 美少女戦隊ゼラニオン!」
ゼラレッドが左手を腰に当て右人差し指で敵を指差し
ゼラブルーとゼライェローが両隣で招き猫みたいなポーズをとっている。
ゼライェローだけは恥ずかしそうにモジモジしている。おそらく葛藤でもしてるのだろう。
ゼラレッドはカリンの服と似たようなセーラー服を着ている。赤を基調とした某アイドルっぽい服装だ。
ゼラブルーは青に白、ゼライェローは黄色に黒を基調としたメイド服に変わっていて
ゼラブルーのスカート丈は膝が見えるか見えないくらい、ゼライェローはさらに短く下着が見えそうなくらいミニだ。
なぜかイェローだけ猫耳カチューシャを装備している。
「イェローって……発音が良いな」
何だ、すごい面白いぞ。やるなゼラニオン!
陽二はワクワクしてきた。
「行くぞ! トウ」
サラリーのかけ声と共に3人とも建物からジャンプ! クルッと1回転して着地をする。
子供の頃は格好いいと思っていたが、なぜ回転する必要があるのだろうか?
と思いながらもチャンス! と思い、目を細めたがパ〇ツは見えなかった。
「ゼラニオン共をやってしまえ! いけ!」
「キーキー!」
戦闘員たちが3人に襲いかかる。いつの間にか良い感じに3人が散らばる
●ゼラレッド
「とう、とりゃー、えい、えい、えい」
襲いくる戦闘員に左回し蹴り、そのまま軸足の右足でジャンプして後ろ回し蹴り。着地と同時に戦闘員3人に囲まれるが右、左、右の3連突きで戦闘員たちをふっ飛ばす。
「キーキー!」
5人の戦闘員が棍棒を持ち、ゼラレッドを取り囲む。
「ふ! 乙女戦闘棒召喚!」
と叫び足元に都合よく落ちていた棒切れを拾い上げる。
「拾うの?」と思わず突っ込みを入れてしまう
「乙女百叩き!」
名前何てどうでも良い。ただバシバシと叩いてるだけだ。あっという間に戦闘員10人をやっつけてしまう
●ゼラブルー
「はい、はい! はいはいはい!」
襲いくる戦闘員5人の攻撃を、かわいらしい声と共に蝶の様に舞いながらよける。さらに戦闘員は5人増えて10人に囲まれた。危うしアスリー!
「キーキーキーキー!」
アスリーは戦闘員たちにすてきな笑顔を向け
「乙女のお仕置!」
と呟いた
一瞬の出来事だった。周囲の戦闘員たちはバタバタと倒れてしまった。
魔法か? 少しだけ光が見えた気がした。それに無詠唱、呼称発動のスキルを持っているのだろうか?
●ゼライェロー
「乙女大剣!」
ランリーは自分の身長より大きな剣を、どこからともなく取り出した。
そのランリーと対するのは
体をすっぽり隠すほどの大きな盾を装備した戦闘員5人が前衛で守りを固め、弓を装備している戦闘員たちが後方から遠距離攻撃。
前の防御は強固だ! ランリーの攻撃は届かず弓の戦闘員は攻撃を撃ち放題! ピンチだ、どうするランリー?
「く、卑怯な! 隠れて攻撃とはおまえらそれでも騎士か!!」
「キーキーキー」
などと言っているあいだに無数の矢がランリーにふり注ぐ!
「纏え! 風壁」
乙女大剣に纏わり付くように竜巻状の渦が現れる。
乙女大剣を戦闘員たちに向けると走りだした。
竜巻状の渦を帯びた乙女大剣によって、放たれた矢は全て弾かれていた。
「乙女のお仕置!」
ランリーは戦闘員たちに突撃。大きな盾とその後ろにいた戦闘員たちを纏めて吹き飛ばした! 戦闘員は全滅だ。
*
「おのれ、ゼラニオン共め!」
ボスは爬虫類の魔物に命令する
「行け! ファイアーイグナス。ゼラニオンを食ってしまえ」
ファイアーイグナスはイグアナを大きくした様な魔物。口からは炎酸の玉を飛ばして牙は大木をもかみ砕く。皮膚は強固の鱗に覆われ、大爪は大地をえぐり裂く。
王都周辺で見られる魔物の中でも最強種だ!
仮に人が戦うのならば、100人単位で罠を駆使して、戦略的に挑まなければならない強大な魔物なのだ!
「グシュッギャアー」
ファイアーイグナスはゼラニオンに向かって駆けてくる。素早い!
「ふむ、イグナス種か、ちと面倒ぢゃ」
「サラリーちゃん行きます?」
「いや、ランリー任せるのぢゃ」
「え? 私か? いいのか!」
どうやらゼライェロー1人で相手をするようだ
●ファイアーイグナス vs ゼライェロー
ゼライェローが飛び出る、レッドとブルーは近くの建物の上にジャンプして高みの見物を決めこむ。
ゼライェローが先制攻撃を仕掛ける。
大きく振りかぶり斬りかかるが、それを予測していたファイヤーイグナスは大爪をランリーに叩きつけた。
それを乙女大剣で受け止め‥‥きれずに弾き飛ばされてしまった。
ゼライェローは建物の壁をぶち破り中まで吹っ飛ばされる
「うぐ、やるではないか!」
ゼライェローが素早く元位置に戻るとファイアーイグナスは間髪入れず炎酸を吐きかけた。
炎酸をまともに受けると、骨一つ残らず燃えてしまう。
例え助かったとしても重度のやけどと酸による腐食で骨まで溶けてしまう。危険度の高い攻撃なのだ!
「はね返せ風壁!」
炎酸は風壁に当たると勢いを失ってしまう
ゼライェローが力を込めるとファイヤーイグナスに炎酸がはね返り、ファイヤーイグナスの前脚を掠める。
炎酸を弾き返されたファイアーイグナスは興奮して、怪獣が火を出すように炎酸をはき出したままかみついてくる。
これでは風壁で防ぐことはできない!
ゼライェローは大地を蹴りファイアーイグナスのかみつき攻撃を躱す。そのまま頭上まで跳び上がり首筋がけて攻撃する。
「くらえ! 乙女大剣大切断!」
ゼライェローが首筋を攻撃、さすがのファイアーイグナスもこれで終わりか?
ガキーン! 乙女大剣の攻撃はファイアーイグナスの強固な鱗で弾かれてしまった。
「さすがに固いな」
その瞬間ゼライェローは衝撃を受け吹き飛ばされてしまう。
尻尾だ! しかも尻尾の鱗は鋭利な棘の集合体。大丈夫かゼライェロー?
ファイアーイグナスは間髪入れずゼライェローに向かって大爪をふりおろす。
忘れていたがこの大爪にかすられでもしたら、傷口から猛毒が入り体を溶かしてしまうのだ!
「少し油断したな」
吹き飛ばされたものの、尻尾の攻撃は乙女大剣で受け止めていたゼライェロー、すぐに立ち上がり大爪を躱すと
「神槍!」
ゼライェローは神槍を呼び出す。神槍は長さ2メートルの円すい形
「ふ、遊びは終わりだ! 神槍の水斬」
ゼライェローは神槍をファイアーイグナスに向かって軽く振るうと、レーザービームの様な水がファイアーイグナスの巨大な体を真っ二つにした。
「グギャー!!」
ひどい叫び声を上げると、ファイアーイグナスは霧散していった。
ゼライェローの圧勝だった!
「ランリーよ、まだまだ、だな!」
サラリーは上から目線でランリーに言った。高みの見物だけに
「ランリーちゃん、お疲れさま!」
ああ、アスリーちゃんがかわいい! 癒やされる。あの小さいやつとは大違いだ!
ランリーがあきれ顔で服を叩きながら戻ってくる
「どうでも良いがサラリー、ボスが居ないぞ?」
「しまった! また逃がしてしまったのぢゃ!」
エンディングテーマが流れだした。
どうやらボスには毎回、逃げられるらしい?
それにしても、ランリーが最後に使った技は魔法だった。
それも陽二にも使うことができる水針の攻撃
武器のおかげなのか……ものすごい威力だった。
「陽二、面白かったわね」
「そうだね、振動やら視覚や聴覚、全身で体験できるのもすごいよね」
「ゼラニオンや敵になって体験する事もできるのよ」
「すごいね! 体験ができる映画、想像以上だよ!」




