7.シズさんの霊能力
それから一週間が過ぎ、そんなこんなで背後霊シズさんとの奇妙な同棲生活にも、おれは次第に慣れていった。トイレに入るときも風呂に入るときも、シズさんは気を利かせて目をつぶっていてくれたようだ。それでもどうせ見られはするのだが、おかげであまり抵抗は感じなくなった。ただ困ったのは、せっかく大量に買い込んだアダルトDVDもシズさんの目を気にして見ることができず、ある種の欲求不満は布団の中で一人シコシコして解消する以外に方法がなかったことだ。だがそれ以上に困ったことに、シズさんを買うのに81501円も使ってしまい、生活費が尽きてきて、今月の家賃も払えなくなっていたのだ。するとシズさんが珍しく自分から話しかけてきた。
「大丈夫です。なんとかなりますわよ。メールをチェックしてごらんなさいな」
おれは言われたとおりメールをチェックしてみた。するとネットオークションの落札通知が二通届いていた。古本屋のワゴンセールで五百円で仕入れた古いマンガ本が四万五千円で落札していた。レア本だろうと直感して買っておいたのだが、まさかそこまで超レア本だったとは。おれは笑いが止まらなかった。もう一つは昭和三十年代の女子高校の卒業アルバムで、こういうのもマニアがいるので、転売目的でオークションで五千円で落札したのを別のオークションに出品したのだが、こちらはなんと五万三千円の値が付いていた。
「よかったですわね」
シズさんは耳元でそうささやいたが、おれは落札者からのメッセージ欄を読んで、少し考え込んでしまった。落札したのは五十代の女性で、母親が亡くなって遺品を整理したときに、間違って母の高校の卒業アルバムを処分してしまったのだという。それと同じものをたまたまオークションで見つけ、なんとか落札できて喜んでいる、というようなことが書かれていた。
おれはしばらく悩んだが、自分が仕入れた価格と同じ五千円で譲りますと返事を出した。マンガ本が高く売れたから、あとはまあ、そのうちなんとかなるだろう。
「まあ、あなたは本当にお優しいのですね。やっぱりあの方とよく似ていらっしゃいますわ。大丈夫です。今月の生活費はなんとかなりますわ」
シズさんはそう言ったが、おれは内心やはりちょっと落胆していた。
一時間ほどして、その落札者から返事が来た。自分たちはお金には困っておらず、落札金額の五万三千円を振り込んだので、遠慮なく受け取ってほしいと書かれていた。おれは思わず顔がほころんだ。壁の鏡に映ったシズさんの顔も、にっこりと微笑んでいた。おれは鏡に向かって右手でピースのサインを出した。シズさんは微笑んだままゆっくりピースと口を動かした。さっそくおれは商品を包装し、近くの郵便局まで走っていった。