16.出会いと再会
おれは不思議な気持ちでシズさんの写真とその婚約者の写真を眺めていた。するとそのとき、玄関のベルが鳴った。
「あら、来ましたわ。すみません、父が寝たきりで、近くに住む弟の娘が介護の手伝いに参りましたの。ちょっと失礼しますね」
婦人はそう言って玄関の方へ行き、やがて姪を連れて戻ってきた。その娘の顔を見て、おれは驚きのあまり思わず叫んだ。
「シ、シズさん!」
それはまさにシズさんだった。しかもそれは、若い女性の身体を備えた、生きた人間の姿だった。
「たしかにわたくしは猪飼シズと申しますが、どこかでお会いしましたかしら?」
声までシズさんそっくりだった。
「あら、姪をご存じでしたか。いえね、弟が曾祖母のお姉さんのすてきなラブロマンスに感動して、自分の娘にシズという名前を付けたんですよ。そうしたら顔まで似てきましてね」
伯母のご婦人が言うのを聞きながら、おれは姪のシズさんの顔をじっと見ていた。そのとき左肩の上から声がした。
「この人ですよ、あなたにふさわしい方は」
シズさんの声だった。その瞬間、おれの背中で何かが離れていくような感覚がした。次の瞬間、向かいに立っている娘の左肩の上にシズさんの顔が現れた。そっくりの顔が二つ並んでいる。すると二つの顔はやがて重なり、一つになった。
姪のシズさんはおれと目が合うと、にっこりと微笑んだ。それはまさに、背後霊のシズさんとまったく同じ、静かで穏やかな微笑みだった。
(完)
主人公とシズさんに幸あらんことを祈りつつ、エンディング曲として、ぜひ Jim Brickman の Valentine をお聴き下さい。(すみません、YouTube で簡単に見つかりますので、ご検索ください。私のいちばん好きなラブソングです)
技術的にはまだまだで、いろいろと反省点もありますが、内容としては自分なりにまずまず満足のできるものに仕上がったと思います。全16回にわたり、最後までお読み下さった読者のみなさま、本当にありがとうございました。




