15.生まれ変わっても
「シズさんが何度も生まれ変わっているということは、おれもそうなんだよね。おれは前世ではどんな人だったんだろう。今のおれのようなダメ人間ではなくて、ちょっとはまともな人間だったのかなあ」
「いいえ、今のあなたとそっくりな方でしたわ……あ、いえ、きっとそっくりな方だったと思いますよ。ほ、ほら、人間の性格がなかなか変わらないのと同じで、幽霊も何度生まれ変わっても、性格はなかなか変わりませんから、おほほ」
おれはシズさんの言い方がなんとなく気になった。もしかしたら、シズさんはおれの前世をよく知っているのではないだろうか。そして、その人というのは……
おれがシズさんにそのことを訊こうとしたとき、メールの着信音が鳴った。
メールはこないだの女子高校卒業アルバムの落札者からだった。母の遺品を整理していて、処分したいものが出てきたので譲りたいという申し出だった。おれがネットオークションに出品している物を見て、適任だと思ったらしい。
「きっと掘り出し物がございますわよ。今すぐお電話なさいましな」
シズさんにそう言われて電話をかけ、すぐに見に行くことにした。
その家は郊外の閑静な住宅地にあった。玄関のベルを鳴らすと、品のよい五十代ぐらいのご婦人が現れて、おれは中へ通された。
「母は先月亡くなりまして、遺品を一度処分したのですが、ほかにもまだ押し入れの中にこんなものが残っていたのです。祖母や曾祖母のもののようなのですが」
婦人はそう言って、古い写真帖や手紙類が入った段ボール箱を持ってきた。古写真や古書簡はマニアがいるので、おれも仕入れてはネットオークションに出品していた。
「拝見いたします」
おれは段ボール箱の中からまずは古びた写真帖を取り出し、めくってみた。明治後期から昭和初期のもののようだ。状態も悪くないし、これなら高く売れそうだ。
二冊目の写真帖を取り出してめくっていると、おれの目がある写真の上に止まった。
「こ、これは!」
女学生ぐらいの若い二人の女性の写真だった。その二人、とくに右側の女性が、シズさんにそっくりだった。
「ああ、それはわたくしの曾祖母とその姉の写真です。曾祖母はレイといいまして、姉の方はシズという名前でした。二人とも若くして亡くなったと聞いております」
やはりそうだったのか。シズさんは猪飼レイのお姉さんだったんだ。
「曾祖母は祖母を産んですぐに亡くなりました。シズはそれより前に結核で亡くなったそうです。なんでも婚約者の方がいらしたのですが、その方も旅順で戦死なさったとか。悲しいロマンスとして、その話を祖母からよく聞かされました。ああ、たしかその婚約者の方の写真もありましたよ」
「ぜ、ぜひ見せてください」
おれは胸が高鳴った。婦人は別の写真帖を取り出した。
「たしかこのあたりに……あらっ。まあ!」
婦人はそう言って、おれの顔を見て、また写真の方へ目をやった。
「ど、どうなさいました?」
「この方、よく見るとあなたとそっくりだわ。不思議なこともあるものねえ……」
おれは奪うように写真帖を手に取った。写真の男の顔はちょっと古風な雰囲気ではあるが、おれに本当によく似ていた。瓜二つと言ってもよかった。




