12.さらなる新事実
それから一週間が過ぎた。おれは部屋の壁に掛けた鏡の前で、毎日シズさんに謝り続けたが、シズさんは姿を現さず、おれはすっかり元気をなくしていた。そんなとき、ヒロアキから電話がかかってきた。
「おい、こないだの合コンにルナちゃんっていう子が来てただろ。おまえ、あれからあの子と会ってないだろうな」
おれはギクリとした。会う寸前まではいったが、結局は合わなかったのだから、何も動揺する必要はないと自分に言い聞かせて、平静を装って答えた。
「あ、ああ、いや、会ってないけど。それがどうかしたのか」
「実はな、あの合コンに参加していたおれの同僚が、駅前のスターバックスでルナちゃんの彼氏に包丁で刺された。意識不明の重体だ。あいつルナちゃんとスタバで何度か会っていたんだが、彼女には同棲中の彼氏がいて、そいつが嫉妬して刺したんだ」
なんてことだ。あまりの衝撃に、おれは絶句した。ヒロアキはかまわずに話を続けた。
「その彼氏というのがものすごく拘束する男らしくて、ルナちゃんも別れたがっていたんだ。ところがそいつはルナちゃんが他の男とこっそり会っているのを知って、殺意を抱いたらしい。ひどい話だぜ、あいつルナちゃんとはコーヒー飲みながら話をするだけで、まだ手も握っていなかったんだぜ」
ヒロアキは最後の方は涙声になっていた。だが、ヒロアキが続けて言った言葉に、おれはさらに驚いた。
「実は合コンの直後、おれもルナちゃんからお誘いのメールをもらってたんだ。もう一人の同僚も同じメールを受け取ったらしい。まあ、おれはあんなお嬢様タイプのおとなしい感じの女よりは、明るくて活発な方が好みだけどな。とにかく、お互い女には気をつけようぜ」
そう言ってヒロアキは電話を切った。
おれは身震いした。一歩間違えば、おれが刺されていたかもしれなかったのだ。おれはシズさんに心の中で感謝するとともに、ものすごく悪いことをしてしまったという罪悪感に苛まれた。それからひたすら鏡の前でシズさんに謝り、懺悔する日が続いた。
そんなある日、おれが商店街で古道具えびす屋、いやリサイクルショップ・ブリームの前を通りかかると、おやじが声をかけてきた。
「やあ、ちょうどよかった。実はあのあと、親父がもう一つ思い出したことがあって、レイさんという人にはやはり若くして亡くなったお姉さんがいたそうだ。その人の名前は聞かなかったそうだが」
もしかしたら、その人がシズさんかもしれない。若くして亡くなったという条件は合っている。だがそれだけではわからない。おれはもっと情報がほしくてもどかしかった。
「ありがとうございます。もし他にも何か思い出されたら、ぜひ電話ででも教えてください。どうかお願いします」
そう古道具屋のおやじに頼んで、おれはこれまでわかった事実を頭の中で整理しながら、アパートへ帰っていった。




