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スーサイド・フェスティバル主催者の発言、主催者の部下の発言

このフェスの主催者、君島定春は爆発に巻き込まれて死んだ。君島は、このフェスを開催した2018年6月の時点で享年31歳。死後に自殺関与や器物破損など、様々な容疑をかけられた。君島は、青いメガネをかけている中背の男。自分の部屋にはCDが900枚ある。比較的お洒落で社交性もあり、一見こういう無謀なフェスを主催するような人間には見えない。君島は、ステージの横にいて爆発に巻き込まれた、と言われている。しかし、一説によると自ら炎の中に身を投じたとも言われている。


フェス開催前の君島の発言と思われる録音が残っている。

「このフェスは、スーパー・サイド・フェスとして登録します。パンフレットや公式サイトも、基本はスーパー・サイド・フェスとして名前を出しておきます。サイドにいるような、中心にはならないようなバンドやアイドルが集まるフェスの意味ですね。そして、フェスの後半になったら、ステージのロゴを本来の目的のスーサイド・フェスの文字に変えます。終盤には公式サイトのほうもスーサイド・フェスに変化している、ということまで仕込みます。もちろん、パンフレットやグッズにも、『これは死をもって現代社会に反旗を翻すフェスだ』とこっそりとローマ字で文字を入れておきます。うまいデザイナーに頼んであるので、一見普通のフェスグッズに見えるはず。そうでないと、こういうイベントは開催できませんからね。あくまでも、開催ぎりぎりまでは普通の小規模フェスのていでいく」

ちなみにこの事件のあと、サイトは閉鎖された。このため、スーサイド・フェスティバルという正式名称も、ほとんど知られていない。


君島はこうも発言している。

「まあ、生きていたら私は捕まるでしょうね。自殺関与になるのかな。私自身もこのフェスの終盤に死のうと思っています。彼らが死をもって社会にメッセージを残すんですから、自分も一緒に死ななければならないと思ってます。このイベントに関わってくれているスタッフで、口がかたい一部の人間にだけ、実際の趣旨を説明してあります。まあ、どのスタッフまでがこの自殺フェスの意図を把握していたか問われるでしょうね。でも、そんなことははっきり言ってどうでもいい。警察が調べれば、誰が協力したかなんてすぐ分かるでしょう。私はどうせ死ぬ。こういうフェスを開催した責任をとって死にますよ。裏SNSで自殺するメンバーやファンについては、口裏を合わせてあります。関係ない人は巻き込まないようにします」

君島はこう発言しているが、実際は自殺する意思のなかった人間も8人、この事件でケガをしている。


別のインタビューで君島はこうも発言している。

「我々の仕事というのは、やっぱりアーティストの意思を尊重することだと思うんです。アーティストがこういうフェスをやりたい!と言ったら、それを実現させる。たとえそれが無謀な試みであっても実現させる。それが社会に対して強いメッセージをうったえるものであるなら、なおさらですよ。フェスの意義っていうのは、そういうところにもあると思うんです。仲間と楽しく音楽を聴いて過ごす。そういうのもフェスの醍醐味ではあります。でも、僕はやっぱり、もっとこう、自分達にしかできないフェスをやって、世に問いたいと思うんですよね。すごい愚かなことだとも分かってます。でも、こうでもしなきゃ、変わらない。この音楽業界だって変わらない」


事故当日、スタッフとしてステージの消化活動にあたっていたイベント会社の社員、白井はこう語っている。白井は短髪で体育会系。がっしりした体格でおしるこが好物だ。

「君島さんは、僕の上司でした。すごくやる気にあふれている人で。今回のフェスも小規模だけど、俺たちにしかできないものをやろう!ってすごく意気込んでいたんです。まさか、あんな事故が起きるなんて。しかも、君島さんは自分から炎の中に飛び込んでいったんです。僕は、君島さんがバンドメンバーを助けるために火の中に飛び込んでいったのだと思ってました。でも、今思えば、君島さんは計画的にあの場で死ぬつもりだったんだと思います。君島さんがなぜ、こういう死を選んだのかはよく分かりません。たしかにうちの会社はかなりブラックです。長時間残業が毎日当たり前のようにあります。でもこの業界では、それが当たり前じゃないですか。こういう働き方に異を唱えたかったのかもしれません。でも、それだったら、もっと他にやり方あったと思うんです。こんな事故を起こさなくても。というか、思い出したら腹立ってきた。ちくしょう、消化すげー大変で。その後の処理も警察対応も、もう本当に大変で。もういろんな人からいろんなこと聞かれまくって、すっげー大変だったこと思い出しました。ちくしょう」

なお、君島の遺書は残されていない。

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