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18話 世界樹

 目を覚ますと、俺は寝ころんでいた。

 周りを見渡すと、巨大な木々がいくつも俺の周りにそびえたっている。

 どうやら森の中のようだ。

 

 寝ころんだまま空を見上げると、見たこともない色の美しい二匹の鳥が互いを追いかけあうようにして飛んでいる。

 

 空にはいくつもの楕円形の雲が浮かんでおり、丁度良い量の日光を降り注がせている。

 うっそうとした木々の下で俺が今寝ころんでいるところだけがまるで切り取ったように日光が直接降り注いでおり、非常に気持ちがいい。

 

 まるで木々が俺のことを気遣って日光を通してくれているようだ。

 

 体が温かい。

 とても眠たい。

 瞼が自然と落ちてくる

 

 「これ!寝るな!!」

 

 しわがれた声とともに俺の頭にまるで鈍器で殴ったかのようた衝撃と痛みが走る。

 かなり強くたたかれた。めっちゃ痛い。

 俺が頭を抱え声のした方に目を走らせると....。


 「まったく・・・自分の目的を忘れて寝ようとする神種がいるとはのう・・・」


 目の前にあきれ顔をして俺の顔を覗き込んでいる白髪の老人が立っていた。

 

 その言葉で俺は俺の目的を思い出す。

 町を踏みつぶさんとする世界樹の暴走を止める。


 それが今の俺の目的だ。


 「ちがうちがう、そっちではない。本当・・の目的のほうじゃ。」

 「さっきから何を言っているんだ?いや、そもそもここはどこだ?あなたは誰なんだ?」

 「わしの名は《世界樹》ニュートロン。この世界を構成する特異点の一つでもあるものじゃ。ここはわしの中の心象世界。気持ちのいいところじゃろう?」

 

 白髪の老人が手を空に向けると、空を飛んでいた美しい小鳥が指にとまり、美しい声でさえずっている。

 老人が右手を振るとどこからともなく木の実が現れ、慈しむようにそれを指の上の小鳥に与えている。

 

 「今のわしのこの姿は、かりそめの物。本物はお主が先ほどまで止めようと躍起になっておった巨大な木じゃよ。」

 

 白髪の老人は笑いながら答える。

 

 「やはり俺の頭に語り掛けていたのはあなたなのか?」

 「あなたではなくニュートロン様と呼びなさい。どうも代名詞で話されるとムズムズするんじゃ。」

 「それじゃあニュー爺、繰り返し聞くが俺に語り掛けていたのはニュー爺なのか?」

 「にゅ、ニュー爺!?お主数万年の時を生きる世界樹に対してはもうちょっと敬意のある呼び方を・・・・・・まあよい。好きに呼ぶがよかろう。その問いの答えとしてはYesじゃのう。ただ、わしはお主個人に向けて思念伝達を図っていたわけではない。神種の存在を感じてとりあえず思念をばらまいていただけじゃからの。このように心象世界に閉じ込められてしまっては外の様子も何も確認することはできんからのう。」

 

 ニュー爺が苦々しい様子で話す。

 

 「ってことは暴走はやっぱり自分自身の意思じゃないのか。だったら早く止める方法を考えないと。」

 「まぁそう焦るな。この心象世界の中にいる間は外の時間は外との間で何倍にでも引き延ばすことができる。今は極限まで伸ばしているから。外での時間はほぼ止まっているようなものじゃ。まずは落ち着きなさい。」

 「それはありがたいな。ここで魔力の回復を待っていれば。力ずくでニュー爺の本体を止めることもできそうだ。」

 「残念ながらそれは不可能じゃのう。あくまで時間を引き延ばしているだけじゃからいつまで待ったところでお主の魔力は回復したりはせんよ。」

 「じゃあどうするんだ?魔力が回復しないんじゃ完全に手詰まりじゃないか。」

 「案ずるな。方法ならある。こっちに来てみい。」

 

 そういいながら森の奥へ手招きしてくるニュー爺についていくと、進むにつれて森の雰囲気が特殊になるのを感じる。

 まぁもともとニュー爺の心象世界不思議なところだらけだから驚きもしないけど。


 「これじゃ」

 

 そう言って連れてこられたところには巨大な赤い宝石の埋められた巨木の前であった。

 巨木にはめられた宝石はまるで血のように赤く、心臓のように脈打っている。

 

 「わしのメインコアじゃ。こうなってしまった以上、もはやコアを破壊して止めるしかあるまい。それが私のことを親として敬ってくれているエルフたちのためにもなる。」

 

 「自分自身ではこのコアは壊せなかったのか?」

 「無理じゃ、いろいろと試してみたが。わしはあのコアに一定以上近づくことができぬようになっておる。他の樹木の操作などもやってみたが、一定以上あのコアに近づくと制御・・・というか能力がまったくもって効かなくなるのじゃ。まったく、ずいぶんなことをしてくれるわい。」

 

 ニュー爺がやれやれといった様子で首を振る。

 

 「しかし、あのコアを破壊したらニュー爺は・・・・」

 「いやいや大丈夫じゃ。今の体は捨てることにはなるが。消滅したりはせんよ。また新しい体でやり直すだけじゃ。」

 「なんだよ・・・ちょっと心配しちゃったじゃないか。ニュー爺のこと守ってる少女にニュー爺のことどうにかするって言っちゃったからニュー爺消滅なんてさせちゃったら怒られちまう。」

 「まぁ、そういうわけでわしに代わってあのコアを破壊してはもらえんか。そうすればわしの暴走も止まるじゃろう。」

 「それにしても、ニュー爺の本体をあんなふうに暴走させたのは一体誰なんだ。」

 

 「わからん・・・数日ほど前に黒いローブをまとった魔術師らしき者がわしに会いに来てのぅ。わしの居場所をしているからにはただモノではないのだろうと思い警戒していたのじゃが、わしが本当の世界樹であると知ったとたん、急にめちゃくちゃに強力な精神干渉系の魔法を発動し始めたから危ないと思って心象世界に逃げ込んだのじゃが、今度は心象世界から出られんようにされてしもうた。あの者何者かはわからんがただモノではないぞ、そもそも人間であるかも怪しい。心象世界は人間に認識することは不可能じゃからの。」

 

 1「顔は確認できなかったのか?」

 「ローブで顔を隠していた上に強力な認識阻害のスキルを使っていたからのう。普通の人間には認識すらすることもできんじゃろうて。」

 

 そんなやつがいるのか、認識できないなんてそんなチートスキルがあるとは。

 俺は考える。


 「お主も神種なら相対することもあるじゃろう。十分に注意せい。」

 「なぁさっきから言ってるその神種っていったい何なんだ?」


 俺はここにきてずっと引っかかっていたことを聞いた。


 「お主、目的どころかそれすらも知らぬのか。」

 ニュー爺が驚いた様子で答える。

 

 そして俺はニュー爺から俺の正体のヒントを話されたのだった。

 



 

いつも読んでいただきありがとうございます。誤字などは感想欄で教えていただけると嬉しいです。

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