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15話 接近

昨日は更新できず申し訳ないです。

うっかり寝てました。

アリアに急かされ村を出てみると、何やら巨大なものが村に接近してきていた。

 「なんだよ。あれ」

 シエンがその野太い声に恐怖をにじませた声色でつぶやく。

 俺もそれに目にして言葉を失ってしまう。

 木だった。巨大な木が周囲の木をなぎ倒しながら近づいてくる。

 黒い瘴気をまとった太い根で木にはあるまじきスピードで進んでくる。

 トレントだろうか、いや、それにしてはおかしい。


 「「「アフォアガアゴゴアオアアオゴゴゴゴッ」」」」

 「ぐぉっ」

 あまりに巨大で耳障りな声に耳をふさいでしまう。

 まるで何か苦しんでいるような声だ。

 「向かってくる物は仕方がないでしょう。このまま村に到達されたらあんな巨体では簡単に村が踏みつぶされてしまいます。何とかあの木を撃退するか止める方法を考えなければ」

 

 確かにあれはまずい。速度こそ遅いが、巨大すぎる。

 周りの木々をなぎ倒しながら進んでくるあたりパワーも半端じゃなさそうだ。


 「見たところトレントのようですが、あんな巨大な個体は見たことがありません。基本木に擬態している種族なので、あれほどの大きさならトレントだと認知されていなくても分かりそうなものですが…。」

 流石にアリアは気丈だ、この村の村長の娘だけある。

 しかし額には大粒の汗が浮かび、声には恐怖が混じっている。

 

 それも仕方がないだろう、自分の村にあんな化け物が近づいてきているのでは、その焦りと恐怖も 当然だ。

 遠くから見たときは大きさを測りかねていたが、奴のなぎ倒している木の大きさから推定するに、高さは70メートルというところだろうか。


 「確かにそうだろうな。俺もこの森で一か月遭難していたから知っているが、あんな巨大な木は見たことがない。しかも色が異常だが、あんなトレントがいるのか?」


 あの化け物のトレントとして異常な点の最たるのはその色だ。

 幹や枝は灰色でおどろおどろしい黒い瘴気のようなものを纏っており、幹の真ん中の大きく割れた口のようなものと目のようなものから、体から発しているより一段と黒々しい瘴気を放っている。

 葉に当たる部分が白く発光しており、ところどころに深い青をたたえいる。

 まるで巨大な氷の葉のようだ。


 「わかりません。というかそもそもトレントは擬態することで動物などを食らう魔物のはずです。ですので基本的に他の木に紛れることができるようにほかの木とそう変わらない見た目をしているはずなのですが・・・」

 「っつそんなこと考えてる暇じゃねぇぞ!!あのままじゃこの村にまたたどり着いちまう!!!」


 シエンはそう怒鳴ると同時に両の手を前に突き出しまばゆい炎を発生させ始める。

 「うぉおおおおお≪炎砲≫!!!」


 シエンがはなった炎の渦が木の怪物に向かって飛んでいく。

 こいつ、剣で切りまくるだけかと思ったが魔法系統のスキルも覚えているらしい。

 なかなか多彩な奴である。

 かなりの火力だ。おそらく全力で放ったのだろう。

 「「「「ゴギョアゴアアオオオオオオッ」」」」

 炎が直撃した怪物は体をうねらせ苦しんでいる。

 流石にあの巨体すべてを包み込むことはできないがダメージを与えられているのだろうか。

 

 やがてシエンの手のひらから出ていた炎は徐々に勢いを弱めていく

 「ちっこれだけやって根一本かよ。」

 シエンが悔しげにつぶやく。


 炎が静まると、怪物の被害は20はあるだろう怪物の根の一本を焦がしていただけであった。

 「今のは俺の全力だ。あんな調子じゃまにあわねぇ。」

 シエンが苦し気につぶやく。

 「ならば次は私がやってみます。」

 ≪水流陣≫

 アリアがそうつぶやくと、怪物の真下に巨大な魔方陣が現れ、そこから大量の水が濁流のように流れ始めた。


 ≪氷化≫

 アリアがスキルを唱えたとたん、ビキンという音とともに怪物を飲み込んだ水が凍りつき、怪物の動きを封じ込める。

 瞬く合間に氷が怪物を覆ってしまった。

 「すごいなアリア、こんなスキル持ってたのかよ。」

 「少し違います。これは才能によるスキルではありません。これは私が習得した魔法の昇華版です。」

 「だとしてもこれ凄いんじゃないか?村の魔法使いたちとレベルが違うような気がするぞ。」


 「そいつぁ当然だぜ。アリア様はかつて、氷花の魔術師と呼ばれたエスメラルダ王国の一流魔法使いなんだからな!」

 俺の背中をたたきながらシエンが豪快に笑う。

 

 「関係ない話をしている場合ですか。≪氷硬≫」

 アリアが重ねてスキルを使ったことによって、怪物を包んでいる氷がより一層硬くなる。

 「ふぅ。これでしばらくは大丈夫でしょう。」

 「なぁ、こんなスキル使えるんだったらガーゴイルの軍団くらい簡単に倒せたんじゃないか?あの森のフェンリルだってそうだろ?」

 「いえ、今回のこの攻撃は魔石を使いつぶして打ったものです。それに、この規模の魔法を使うにはやはり時間がかかりますから。フェンリルの時などはそんな時間も魔石もなかったですからね。これは私の手持ちの最後の水属性の魔石です。」

 そういいながら彼女は黒く、輝きを失った魔石を俺に見せてくる。

 

 すると、怪物を覆っている氷からぴしぴしと音がし始めた。


 「・・なんかおかしいぞ。氷にひびが・・」

 冷汗を垂らしながらシエンがつぶやく。

 見ると、氷にひびが入り、そこからあの黒い瘴気が漏れている。

 

 「「グギゴゴゴゴゴアアアアゴァァァァッ」」

 氷がはじけ飛び、再び怪物が動き出す。

 

 「そんな・・・ミストゴーストの魔石を使って作った氷から抜け出すなんてAランクの魔物かそれ以上のクラスじゃないと不可能なはずなのに・・・」

 アリアが驚愕の表情で怪物を見つめている。

 「くそっあいつのステータスもみれねぇしよ。本当にアイツは何者なんだ。」

 シエンが悪態をつく。


 確かに俺もさっきから試しているがコイツステータスが読めない。

 どんだけ試しても

━━━━━━━━━━━━━━━━━━

ステータスを閲覧することができません。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 なんて表示が出てくる。

 一体どういうことだ。アイツは何なんだ。

 「くそっ俺ももう魔力がすっからかんだ。どうしたらいい・・。」

 俺が考えている間にもあの化け物はどんどん近づいてきている。


 このペースだとあと2分もたたずにここまで到達してくるだろう。

 「おい、あのメタルガーゴイルをやった魔法をもう一度使えないのか?」

 シエンが俺に説いてくる。


 「無理だ、あれはスキルで生み出した白狼炎を圧縮して作り出したものだが、今の俺じゃそいつを生み出す魔力も残っちゃいない。」

 普通に走って根っこをたたき切ることも考えたがそれじゃだめだ。

 

 よく目を凝らしてみるとわかるのだが、あいつは走る過程で自分の根をガンガン傷つけているのだが折れたりするたびにすぐに治っている。

 シエンが焼いた場所などももうすでに完璧治癒済みのようだ。

 俺がたたき切るスピードよりも治るスピードのほうが速いだろう。

 それでは意味がない。

 そうなると、方法としてはあいつの核を見つけて破壊するか再生できないほどのダメージを負わせるかしかない。

 あんな巨体では、核などがある場所など見当もつかない。

 探している間に村が踏みつぶされるだろう。


 アイツを一瞬で蒸発させるようなスキルはないわけじゃないがいかんせん魔力がすっからかんである。

 「いや、待てよ自分の魔力が使えないなら・・。」

 俺の頭に一つの考えが浮かんだ。

 「アリア!今すぐ村の前に魔法使いたちを呼んでくれ!それから全員に魔法詠唱の指示を頼む!!」 

 「何をするつもりなんだ?!」

 アリアが問いてくる。

 「何とかできるかもしれない・・・」

 

 俺は俺の思いついた方法を二人に説明した。


 ::::::::::::::::::::

 説明をし終えた二人は村に走りながら顔を合わせる。

 「アリア様…こいつはかなり厳しい賭けですよ…」

 「だが、賭けなければどのみちこの村は終わるのだ。私は少しでも可能性がある限り彼を信じてみようと思う。」

 

 「大丈夫だ。俺だって一度助けた村が滅びんのは嫌だからな。絶対に成功させて見せる。」

 俺は二カッと笑いながらシエンの背中をたたく。

 「そうだな、アリア様が信じるなら俺も信じる。そしたらこの村全員が信じるだろう。村の住人全員の命をお前に預けよう。」

 シエンが頭を下げ、それに続いてアリアも頭を下げる。

 

 「まかせとけよ、俺がしっかり守ってやる。」


 

 

 

 

 

 

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