1話 目が覚めると、襲われました。
初めまして、ぷっちょと申します。
文章の矛盾、漢字の間違いなどは積極的に教えてくれるとうれしいです。
目が覚めるとそこは全く知らない場所だった。
木々が揺らめき、自分の影が陽炎のようにゆらゆらと揺れている。
自分の周りに風はなく上空にのみ木々の合間を縫って流れているようだ。
体が痛い。
左腕の関節がおかしな方向に曲がっており、左太ももの腹が大きく裂けているのが見えた。
自分の体の悲惨なのを見て、体が思い出したように痛みを訴える。
見上げると崖が見える。どうやら左半身から落ちたらしい。
崖の高さは20メートルほどもあり、この程度の怪我で済んだのは、幸運であるというほかなかった。
まずは状況の整理がしたいが、そもそも何も思い出せない。
自分はどこから来たのか、何を目的としていたのか、いや
自分の名前すらも思い出すことはできなかった。
「うぅ・・・」
体を起こし、耳を澄ませると、こちらに近づいてくる足音が聞こえた。
逃げなくては。
本能が知らないものに対して警鐘を鳴らす。
しかし、その思いもあえなくつぶれることになる。
自分に向かってくる足音は、自分がその傷ついた体を引きずりながら雑木林に逃げ込む速度よりも、はるかに速かったからだ。
雑木林の中から人が現れる。
いや、その人影は人間に似てはいるが、明らかに人間のそれとは違うものだった。
普通の人間の2倍はあるであろう長い耳にうろこがちりばめられ、
何より背中から翼と尻尾がくっついている。
おちたせいで、朦朧としていた意識がようやくはっきりしてきたころ
自分は再認識したのであった。
「やべぇ、もはや人影とかそういうものですらなかったわ。」
近づいてくるそれは大きな声で咆哮する。
そう、ドラゴンであった。
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グリンドドラゴン
筋力B 耐久C 敏捷C 魔力C スキルD
スキル 「咆哮Lv2」「火焔玉Lv7」「睨みLLv4」
称号 「新緑のハンター」「死肉をむさぼるもの」
ランクC+
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ドラゴンのステータスを見て戦慄する。
それもそのはずである、ランクCなどすでに人間の狩れるレベルではないのだから
自分の実力なぞ、見なくても自分が一番よく分かっているが、
記憶喪失のせいもあり、淡い期待をもってのぞいてみると・・・・
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個体名:「??????」
状態異常:「記憶喪失」
LV12(ランクD⁻相当)
スキルコスト:25/100
スキル:「天落としLv1」「激震Lv1」「リザレクトLv2」「ぬるぬるLvMAX」
称号: 「自称勇者」「正義漢」
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うん、弱いわ。
しかもなにこれ「自称勇者」?
あっちゃいけないやつじゃん。
しかもなんかスキルに「ぬるぬる」とかあるし
もしかして俺、記憶喪失になる前相当やばい奴だったんじゃ・・・・
「グゥルオオオオオオオオオオオオオッ」
自分のスキルを確認しながら自分が一体過去に何をやっていたのかということに
考えを巡らせていると、そんなことはお構いなしだと言わんばかりにドラゴンが
再度咆哮する。
「まあ、待っちゃくれないだろうな。」
おそらく落ちた時に切れてしまっただろう太ももを一瞥すると、スキル名を唱える。
《リザレクト》!
記憶は全くないがスキルの使い方には不自由しない、体が覚えている。
回復した足を使って後方に飛ぶと、今度は、左腕を見ておもむろにため息を漏らす。
左腕は完全に折れていた。こいつはスキルでは治すことができない。
なぜなら、《リザレクト》は普通の治癒魔法ではない、その本質は細胞の活性化による自己治癒力の強化である。
なので、今のように明らかにおかしな方向に腕が曲がった状態でスキルを使えば、
腕がおかしな方向を向いたまま骨がくっつき、激痛が生じるどころか腕が一生使い物にならなくなってしまうのだ。
神の加護のある修道女が持ち前の強力な治癒魔法を使用すれば、骨折すらも簡単に治すことができるのだろうが、D⁻ランクの自称勇者にそんなことを望むのは酷というものだろう。
過去の自分に悪態をつきたくなるのを抑えつつ、ドラゴンの様子をうかがう。
ドラゴンも、もはや虫の息だったはずの人間が動き出したことに対して心底面倒くさそうな顔をしながらこちらの様子をうかがっているが、しかしこちらのステータスを見抜いたか、勝利を確信した表情で体当たりを仕掛けてくる。
早い、自分よりもはるかに。
それも当然だ、なぜならランクが違う、ランクとはその生物の”格”を示すものであり
+や⁻程度の実力差ならば勝てない見込みもないわけではないが、それがランクが一つ
の差ともなれば基本的に勝利することは不可能である。
そう、基本的には、だ。
ドラゴンの足元の土を《激震》によって崩し、体制の崩れたところを左によけて躱す。
ブォンッ
ドラゴンが体当たりに失敗した直後に発生した飛んできたものが体に当たった。
まるで、発砲スチロールのように軽く体が吹き飛ばされる。
「ごはっ」
尻尾だった。
目視すらできないような速度で体勢を崩したドラゴンが尻尾をふるったのだ。
「ぐっ、《リザレクト》」
自分の体を淡い緑色の光が包み、傷をいやしていく。
自分の攻撃が当たったことに気をよくしているのか、ドラゴンはそのままゆっくりと
こちらに向かって進んでくる。
このままでは、殺される。
額をうっすらと冷たい汗がつたい、生物としての本能があの生物の前から逃げろと叫んでいる。
しかし、いったいどこに逃げろというのか。
このランク差では逃げることなどできない、すぐに追いつかれて八つ裂きにされ
奴の血肉になることは目に見えている。
ならば、倒すしかないのだ。
奴の血肉とならないために、自分が力を得るためには戦うしかない。
勝率は低いが可能性はある。
頑張ろう。