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お兄ちゃんって呼ばないで  作者: メイリ
7/8

何とか竜也の攻撃を避け続けた私は仕事に精を出していた。

お仕事しないとおまんま食えんからね〜。

好きなゲームも買えんよ。


「草薙先輩!」


私を呼ぶ声が聞こえる。

このよく響く声は……


「草薙先輩!頼まれていた打ち込み終わりました!次は何をしますか?あ、この資料コピって来ますね!」


私の返事も待たずに走り去っていくあの子は私の1年後輩にあたる 海堂 真也君。

戦隊でいうところの元気の有り余っている追加戦士、ゴールドかシルバーかってところだ。

イメージ的にはシルバーなのかな?


体育会系の出身でいつも元気いっぱいだ。

何故か私によく懐いていて、いつも手伝ってくれる。

顔は喋らなければイケメンだなぁって思うんだけど、いかんせん大人しくしていられないのである。

なのでカッコイイけど三枚目っていうのが彼の立ち位置だ。


そして暴走しやすく人の話を最後まで聞かないのも悪い癖だ。



「おお〜〜い、海堂く〜〜ん!コピーするならこっちをしておくれ〜〜。それは違う資料だよ〜〜。」


あ〜〜あ、行っちゃった。

しょうがないなぁ。

私は本当にコピーが必要な資料を持ってコピー室へ向かった。



コピー室の前に来ると中から声が聞こえる。

ちらっと覗くと海堂君と彼の同期の女の子がいた。

女の子が何か言っているけど海堂君は聞き流しているようだ。


しっかし、あんな無表情の海堂君は見たことがない。

普段私が目にする海堂君は基本バカみたいに笑っている。

…………ヤバイ、海堂君がイケメンに見える。

私は目をゴシゴシしてもう一度見てみた。


お、海堂君と目が合った。

その途端、海堂君はいつものバカみたいな笑顔になった。



「草薙先輩!どうしたんですか?何か急ぎの用事でも入りましたか?」


海堂君の変わりようが気に食わないのか海堂君の同期の女の子が睨んでくる。

おいおい、私は何も悪いことしていないよ。


「あ、いや、あのね海堂君……一生懸命コピーしてくれているところ悪いんだけど、コピーしてもらいたい資料はこっちなのよ。」


「うわー、俺またやっちゃいましたか?すいません、いつもここまで持ってきてもらっちゃって。」


そうなのだ。

何故か海堂君はコピーするものを間違って持っていく上にダッシュでコピー室へ向かうものだから、その度に私がコピー室まで本来コピーする資料を持っていくハメになる。


「いや、いつも手伝ってもらっているのは私だから別にいいんだけど、もうちょっと落ち着こうね。」


私のこの言葉に海堂君の同期の女の子が噛み付いてきた。


「先輩、何言ってるんですか?海堂君はとっても落ち着いていますよ。どうせ先輩が間違って資料渡しているんじゃないんですか?海堂君をお手伝いさんか何かと思っているのかもしれませんが、海堂君は私達同期の中でも1番仕事が出来るんですよ!」


…………何でこの子にそんなこと言われなきゃならんのだ?

ふむ、この子は私が無理矢理海堂君を使っていると思っているのか。

まあ、手伝ってくれるから放置していたけど海堂君の仕事の邪魔になるならそれは問題だ。


「海堂君、手伝いはもういいよ。」


「え?」


「いや〜〜、私も手伝ってくれるからそのまま手伝ってもらっていたけど、彼女の言う通り海堂君の仕事に影響が出るのはマズイよ。実際、落ち着いている?海堂君がいつも間違って資料を持っていくのはもう影響が出ている証拠だね。大丈夫!私だって先輩なんだからちゃんと出来るよ。」


私はそう言うとコピー室を後にした。

まあ、半分以上は彼女の嫉妬だと思うけど出来れば同期とは仲良くやった方がいい。

カワイイ後輩が手伝ってくれなくなるのはちょっと寂しいけど、しょうがないよね。



私が自分の机に戻ろうと歩いていたら後ろから誰かが走ってくる音が聞こえた。

おいおい、会社で走るなよ〜〜と思いながら横に避けたらその足音は私の横でビタッと止まった。


「く、草薙先輩!」


あら、海堂君でしたか。

まあ、この会社の中走り回っているのは海堂君ぐらいだしね。


「どうしたの?コピーだったら大丈夫だよ。後で私がやるから。」


私はなるべく海堂君の負担にならないように笑いながらそう言った。


「あ、あのすいませんでした。同期の奴が失礼なこと言って……。」


ふむ、もしかしてあの彼女の言葉に私が傷ついているとでも思ったのかな?

海堂君は優しいね〜。


「まあ、彼女の言葉はキツめだったけど間違ったことは言っていないんじゃない?私も海堂君の優しさに甘えちゃっていたんだもん。」


「ち、違うんです!俺は、俺は!自分がやりたくて手伝っていたんです。今度からはコピーだって間違わないでやるんで、これからも先輩を手伝わせて下さい!お願いします。」


海堂君が腰を90度に曲げて頭を下げている。

こういうところが体育会系なんだよね〜〜。


「じゃあ、無理のない程度でお願い。もちろん自分の仕事を最優先だよ。」


「は、はい!ありがとうございます!」


海堂君が嬉しそうに笑顔になった。

しょうがないカワイイ後輩のタメだ、女の子のやっかみぐらいは引き受けるか……。



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