⑤
そんなこんなでバーベキュー大会も終わりを迎えた。
後は後片付けのみ。
私達のグループもテキパキとお片づけを進めていた。
大きい鉄板だって意外と力自慢の私は1人で持ち上げてキレイに洗っている。
それを見た彰人さんが面白そうに話しかけてきた。
「琴音さんは力持ちですね。でもそういうのは僕がやりますよ。」
そう言って代わろうとしてくれた。
さすがイケメン!行動もイケメンだったか。
「うーん、でも大丈夫ですよ。そんなに重くないですから。それより柴田さんの方を手伝ってあげて下さい。まだ片付けるものあったと思うので。」
私の言葉に彰人さんはニッコリ笑って
「やっぱり琴音さんは良いですね。……ほら、あちらでは大変そうですよ。」
彰人さんが視線を向けた先にはさっき彰人さんを狙ってきていた綺麗どころがわめいている。
「もう〜〜、こんな重いのもてないよ〜〜。誰か助けて〜〜。」
何故かこっちの方を見ながら鉄板が重いのをアピールしている。
その後ろではマッチョの近藤さんが一生懸命鉄板を持とうと手を出そうとしているのだが、意外と動きの良い綺麗どころがそれを避けている。
…………いや、それ持ててるから。
しかもそんな良い動き出来るなら楽勝で洗えるよ。
アレは明らかに彰人さんへのアピールだね。
だけど彰人さんは気づいているようだけど、見なかったことにしたらしい。
うん、それで良いと思うよ……だって持ててるし。
「あ、琴音ちゃんありがとね。もう、彰人ったら琴音ちゃんにそんな重い物持たせて!」
「いえ、私が大丈夫って言ったんです。そんなに重くないですよ……ほら、あっちでも振り回してますから。」
私がさっきの彰人さん狙いの綺麗どころに視線をやると、柴田さんもそちらを見た。
懲りずにまだ「重いよ〜〜。」と言いながら近藤さんの手助けは上手に避けている。
視線は彰人さんにロックオンのまま……。
器用だな〜。
「あらあら、あの子も力持ちね。それにバランス感覚も良いのかしら。でも、彰人の好みではないわね〜。……もうそろそろあちらのグループも片付けを終わらせたいだろうから、彰人!琴音ちゃんと一緒にこの荷物車まで運んでちょうだい。あなたが見えなくなれば諦めるでしょ。」
「そうだね。よし、僕を助けると思って琴音さん手伝って下さい。」
「あ、はいわかりました。じゃあ行きましょうか?」
私と彰人さんは両手に荷物を持って車に荷物を運び始めた。
その時なんか視線を感じた。
でも、私の野生の勘が見たらいけないと告げている。
私はその勘に従って、あえてその方向を見ることはしなかった。
たとえその方向から叫び声が聞こえたとしてもだ。
「草薙センパーーイ!何でそっちに凄い勢いで向かおうとしているんですか!ダメですよ〜、今から二次会があるんですから。ほら、行きますよ〜。何で今日はそんなにおかしい動きしているんですか?いつもはクールビューティなのに……。ちょ、ちょっと何でそんなに必死なんですか〜。あ〜〜もう、みんな草薙センパイを連れて行くの手伝って!」
……見なくてもだいたい起こっていることは想像出来る。
ピンク、苦労をかけてすまん。
この借りはいつか、いつか必ず返すよ!
あいつは一体何をしているんだ。
ピンクに迷惑かけんなや。
私は心の中で竜也を罵りながら彰人さんのあとに続いた。
「はい、琴音さん。そっちの荷物も持つから貸して?」
そう言うと彰人さんが私の荷物を持とうとしてくれた。
でも彰人さんもすでに両手に荷物を持っている。
「あ、ありがとうございます。でも彰人さんもいっぱい持っているし、それに私力持ちですから!」
「そっかぁ〜、そうだよね琴音さんはそういう子だったよね。うん、ゴメンね。じゃあもう少しだけ頑張って下さい。」
彰人さんは何やら嬉しそうに何かに納得されたようだ。
そういう子って、どういう子?
考えてもわからんから、考えることは諦めた。
車に荷物を置いたタイミングで他のグループも駐車場へやって来た。
柴田さんも他の人と一緒に来たようだ。
柴田さんは私の近くに来て耳元で面白そうに話し始めた。
「あのね、琴音ちゃんと彰人がいなくなったらあの鉄板を重い〜〜って言ってた子、直ぐに鉄板を近藤さんに手渡してプンプンしながらいなくなっちゃたの。何ていうかあれぐらいわかりやすいと面白いわよね〜。」
柴田さん楽しんでいますね?
なんか柴田さんを楽しませることが出来たなら良かったですよ。
「琴音さん!今日はとても楽しかったです。今度、またどこかにご飯でも食べに行きましょう。」
「ええ、そうですね。またゲームの話しでもしながらご飯食べに行きましょうか。」
私の返事に彰人さんはキラキラ笑顔を返してくれた。
くっ、不意打ちのグリーンの笑顔は心臓に悪い!
私は心なしか頬が熱くなるのを感じた。
ふう〜〜、結構楽しかったな〜〜、と帰宅した私は大事なことを忘れていた。
家に帰れば奴がいることを……。