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土石の操作


■土石の操作


 続けて、人の持つ衝動の一つである現状維持の衝動、すなわち『土』属性の基本について本章で学びましょう。


 最終的には天を衝く岩山を喚び出すことが土属性習得の目標となりますが、まずは、器に入った土を操作することが最初のステップになります。


 小さな器を準備してください。その器の半分くらいまで、土を盛ります。


 それから、魔力で土を操作します。まずは、物体の移動と同じやり方で土に魔力を吹き付けてみましょう。火や水のときと違って、より多くの魔力が必要になりますが、迅雷の操作までを習得した魔力があれば大丈夫です。


 では、土属性魔力による土の操作に挑戦してみましょう。


 このためには、魔力にあなたの現状維持衝動を乗せる必要があります。魔力を呼び出すイメージに、変わらない自分、確固たる自己のイメージを重ね合わせましょう。もし上手くイメージができないのであれば、本で古い貴族の伝統について学ぶなどしてのイメージを学ぶといいかもしれません。


 そうやって生み出した魔力を土に当てると、大きな土くれと小さな砂が違う振動をして徐々に分かれてくるはずです。本来ニュートラルな現状維持衝動というものがあり、それに対してより強いイメージを作れた人は重い石や大きな塊が激しく動き、控えめなイメージを持った人は軽く小さな塊が激しく動きます。イメージがニュートラルからどのくらいずれているか、土の分かれ方を見ながら何度も確かめてみましょう。最終的に魔力を当てたとき全体が全く同じに振動して土が大小で分かれないようになるイメージが作れたら、それがニュートラルの現状維持イメージです。そのイメージを忘れないように心に刻みましょう。


 ここまですべてができたら、土石の操作は完了です。


 それでは学習メモにお進みください。


●学習メモ


 雷の操作の次は、うって変わって簡単至極な『土の操作』と来た。

 全く手に負えない自然現象を待ち続け、一瞬の機会をとらえて操作するのに比べれば、実に簡単だ。

 もしかすると、多くの人が雷の操作で脱落しているかもしれない。嵐の日を待つうちに飽きてしまったり。その次の章で必要なのが、単に器に入れた土を準備する程度のことだと知ったら、そんな人たちはどんな顔をするだろう。そんなことならやっておくのだったのに、と言う人よりは、そんなくだらないことに濡れ鼠にならなくて良かった、と思う人のほうが多いだろう。


 僕の土の操作の訓練は、高熱が冷めてのち医者に起きていいと言われた後、前の章の学習メモを書いたすぐあとに行われた。なにせ、必要な準備は小さな器にその辺の土を盛るだけだ。


 いつものように、物体の移動と同じ要領で、器の土を動かしてみる。前のようにぶちまけてしまわないよう、横からそっと押すと、机との間の摩擦音を伴って、器ごと机の端まで滑って行った。と、思ってみると、乱暴に吹き飛ばすだけだった初めての時よりもだいぶんに魔力の扱いが上手になっていることを自覚する。いろいろと複雑なことをやってきたことは、それなりに身になっているのだ。なにより、一瞬の機会をとらえて魔力を集中する迅雷の魔法の訓練は、ものすごく身になったことを実感する。


 さて、続けて、教本の通り、現状維持のイメージを重ね合わせてみる。


 と言っても、正直、それがどんなものなのか、ちっとも想像がつかない。変わらない自分。確固たる自分。

 でも、僕は移り変わっていく。こうやってトレーニングをするごとに、僕の魔法は上達していく。変わらないことに意味なんてあるんだろうか?


 僕は、変わらなくちゃならない。もっともっと強くなる。もっともっと先に進む。彼よりも先に進み、いつか彼女の――。


 そう、それは変わってない。それがほしいということ。僕がこの力を欲した原点。それだけは、ずっと変わらず、僕の心の奥底にある。


 目的、切望、信念。

 そんなものは、そんなに簡単に変わるものじゃない。


 世界を支配して彼女の家を従わせればいい、なんて大それたことをこの前は思いついてしまったけれど、そうじゃない。僕が望むのは、健康的にほほ笑む彼女との、ひと時の語らい。二人だけのささやかな時間。そうだったじゃないか。


 器の中の土が、ぶるぶると震えている。

 僕の原点に呼応するように。


 やがて、震えながら、土は浮き上がり、細かい土は下層に、荒い土は上層に、きれいに並んでストライプを作った。それぞれが細やかに震えて、弦楽三重奏のような重厚な音楽を奏で始める。

 彼女の微笑みを思い浮かべると、音は滑らかに変化して和音を構成し、親友の出世に嫉妬する気持ちが起こると途端にそれは耳障りな不協和音に変わった。


 あるものをあると受け入れる。それが、土の魔法。

 僕の本質は、きっとここにあるはずなんだ、と思う。


 やがて浮き上がった土はくるくると混ざり合い、元の混沌の土塊に戻っていった。



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