火炎の操作
■火炎の操作
魔力の方向制御が上手くできるようになったら、次はいよいよ、四属性それぞれの扱い方に進みましょう。
四属性とは、火、水、雷、土に相当していることは皆さんもご存知のとおりです。この四属性は、人間の情動にそれぞれ対応しています。火は破壊衝動、水は慈愛衝動、雷は自己拡散(向上)衝動、土は現状維持衝動です。
この中でも、もっとも強力で根源的な衝動である破壊衝動、すなわち『火』属性の基本について本章で学びましょう。
最終的には強大な火炎を喚び出すことが火属性習得の目標となりますが、まずは、すでに起こっている火炎を操作することが最初のステップになります。
蝋燭を準備してください。そして、火を灯します。
それから、魔力で火を操作します。まずは、物体の移動と同じやり方で火を揺らして見ましょう。これはたぶん簡単にできると思います。
では、火の燃える速さを速くしたり遅くしたりに挑戦してみましょう。
このためには、魔力にあなたの破壊衝動を乗せる必要があります。魔力を呼び出すイメージに、破壊のイメージを重ね合わせましょう。もし上手くイメージができないのであれば、本などで破壊や殺戮のイメージを学ぶといいかもしれません。
そうやって生み出した魔力を炎に当てると、炎の大きさが変わるはずです。本来ニュートラルな破壊衝動というものがあり、それに対してより破壊的なイメージを作れた人は炎が大きくなり、控えめなイメージを持った人は炎が小さくなります。イメージがニュートラルからどのくらいずれているか、炎の大きさを見ながら何度も確かめてみましょう。最終的に魔力を当てても炎が揺れず、大きさも変わらないイメージが作れたら、それがニュートラルの破壊イメージです。そのイメージを忘れないように心に刻みましょう。
ここまですべてができたら、火炎の操作は完了です。
それでは学習メモにお進みください。
●学習メモ
火は破壊のイメージ、って安直だけど、魔法ってそもそも安直なものなんだなあ、なんて思う。
それがどうして、ちょっとした妄想で発動してしまわないのか、なんて思うけれど、ちょっと練習してみて分かった。
基礎の基礎、魔界の自己をイメージするとか、その前後関係を理解するとか、そういう前準備をしてからじゃないと、何も起こらない。
そこに破壊衝動を乗せる、それでようやく妄想ではなく魔法に変わる。
ともかく、ろうそくに火をつける。
そう言えば、先日の物体の移動の練習で家をめちゃめちゃにしちゃって、その後、片付けられるだけは何とか片付けて家を逃げ出し、夕方に何食わぬ顔で帰ったら、空き巣騒ぎになっちゃってた。
そんな騒ぎはさすがにもうごめんだから、今回はろうそく一本と火種ひとつを持って、夜中にこっそり家を抜け出し、小作人の納屋に忍び込んでる。
ろうそくの火が真っ暗闇の小屋の中を照らす。
鍬だの鋤だの、脱穀機だのが浮かび上がる。
炎がどこかからの隙間風を受けてちらちらと揺れると、農機具たちの影もダンスを踊る。
さて、破壊衝動。
……僕に、そんなものがあるだろうか。
何かを壊したい、って?
分からない。
僕は、だって、彼女の病気を治して、彼女の――。
考えているとき、割り込んできたものがある。邪魔なやつが、いる。
普段は親友だと思ってる。本当に。
だけど、彼女が、あの微笑を彼に向ける、それだけは、どうしても耐え難くて。
そのときだけは、あいつを、消し去りたくなる。
消えてしまえ。
心の中で何度も唱えた。
もちろん本当に消えることは無くて、彼が僕の様子に気づいて僕の瞳を覗き込んだとき、僕は心とは裏腹に、彼に微笑みかけていた。
邪魔なやつ。
消えてしまえば良いのに。
心の中で声にしたとき。
目の前で、ろうそくの炎が大きく膨らみ、視界を覆った。
僕は思わずしりもちをつく。
これが、破壊衝動か。
僕にもこんなものがあるんだな。
それから、その気持ちを強くしたり弱くしたり。それは簡単だった。
炎も、それに従って大きさを変えた。
なんだか思ったより、簡単だったな。