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竜と人への鎮魂歌  作者: ポティト
少年編
9/12

少年は竜人に会う

「一回戦目からお前かよ、カーソン」


「グリア、ここに立ってるから容赦なく倒すぞ」


 その言葉に嘘は無いようだ。


 屈強な審判が、直径十五メートルの円盤の中心に立ってる僕達から二メートルほど離れて、開始の合図をした。


 真剣な表情で、重い一撃を幾何十と繰り広げるカーソンの剣をいなしていく。


「やっぱり手抜いてたのか!」


「人ってのは死に近づくと、それ以上の力が出るんだよ!」


 納得しないカーソンは今まで以上の力を込めていく。


 重かった。一太刀をいなすと腕に痺れが走る。


 その分、攻撃が単調だった。


 隙を見て、腹に蹴りを入れて距離を取る。カーソンが体勢を立ち直す前に木剣を振り上げて追い討ちをかけようとするが、カーソンのフィジカルが一枚上手だった。


 体勢を立ちなおしたカーソンから一旦後ろに飛んで距離を取ると、互いにその場で一息ついた。


「グリア、お前強いな」


「ありがとよ。そんじゃあ戦い終わらせようか」


「こっちの台詞だ」


 互いに地を蹴り、木剣と木剣が交わったとき、会場が静かになった。


 観客の視線は俺たちの上空にあった。


 カーソンと互いに後ろへ跳び、上を見る。


 赤い竜が忽然と現れたのだ。赤い竜はそのままゆっくり会場の中心に降り立った。


 そこに屈強な審判が斧の魔装具を担いで、赤い竜に切りかかったが、空を切った。避けられたのではない、消えたのだ。


 しかし、代わりに赤髪で、赤い竜の耳と、尻尾と三メートルを超える翼が生えた人間が立っていた。


「これから人間を滅ぼす戦争を始める」


 外見からして二十代後半ほどの男は、審判に向かって歩き始めた。


「貴様を竜として排除する!」


 審判が二メートルの斧を勢いよく振り上げ、走りながら振り下ろす。


 片手で受け止め握り壊し、そのまま審判の胸にもう一方の手を突き刺した。


「竜なんかと一緒にするんじゃねぇよ」


 その光景を見て、会場は悲鳴に包まれ、混乱した。


「なにしてんだ、ガキは大人しくしてろよ」


 俺とカーソンが木剣で切りかかるが、両方握りつぶされた。すぐさま腹に拳を入れられ吹き飛ばされる。


「ルーカ、消えてないで出てこいよ。それじゃあ威嚇になんねぇだろ」


 赤い竜の男の後ろに青い竜の少女が現れた。


「消えて、殺すの、楽しい」


「その趣味気もちわりぃよ。それよりさ、四人で来るんじゃなかったのか?」


「残りの、二人いつも、一緒に変な、行動」


「あの白黒コンビが……! まともな奴がいねぇじゃねぇか。まぁいいや、こんな国オレが壊してやるよ」


 手の平を空にかかげ、赤い魔力を溜め始めた。


「なにやってんの! 面白くない」


 白い長髪の少女が空から降ってきて、赤い竜の男の顔に乗っかり、そのまま空中で回転して着地を決める。


 その少女は黒い竜の翼、耳、尻尾がついたあいつらの仲間だった。


「殺すのは戦力となる大人だけって言ってたじゃん! 話し聞いてるの?」


「挑発だよ、挑発。こうすれば強いやつらが来るだろ?」


「本気で、打とうと、してた」


「ルーカ! でたらめ言うんじゃねぇ!」


「ほら、やっぱり! 頭悪そうな顔してるだけあるね」


「分かったよ、悪かった。言うとおりにするよ。あの黒髪は何処にいるんだ?」


「遠くで見てるよ。これから僕と『温泉』というものに行くんだよ! ちゃんとやってね。あ、呼んでるからもう行く」


 黒い翼を広げ、飛んでいった。


「本当にあいつらは自由気ままだな」


「二人、力、別次元。適わない」


「そんなの分かってるよ。おぉ、話してるうちに強そうな人たちが来たぞ」


「人間、食べたい」


「そんじゃ、食い殺しますか」


 一瞬だった。


 救助に来てくれた人たちは決して弱くは無かったが、力が違いすぎた。


 武道大会の会場が赤く染まり、そしてゆっくりと青い竜の少女が近づいてきた。


「子供の肉、おいしい」


 体に力が入らず、動けなかった。


「なんで、怖がらない。おかしい」


 僕の顔を覗き込んだ瞬間、頭の頂点から顎に向かって一本の矢が突き刺さった。


 青い竜の少女は白目を剥いて、こちらに倒れこんだ。


 代わりに立っていたのは、この国最強の女性兵士だった。

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