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5.誰でもいいというのは良くないと学んだなぁ

家に帰って寝るときに考えてしまう。

あの女は何を考えているのかと。

だいたい友達の恋愛話にのっかって俺を利用したのではなかったのか?

それを別れさせるとか自分が楽しければなんでもいいみたいな考え方が気に食わない。まあ人は結局自分さえよければいいというがあからさますぎではないだろうか?

考えれば考えるほど腹がたって来た。


翌日、バイトに行くといかにも弱そうな頼りなさそうな男がいた。

確か名前は斎藤だっけ? 俺は名前と顔を覚えるのが苦手なので久しぶりに会う人は大変だ。髪型が聖域なき構造改革とか言っている今の総理大臣にそっくりだ。

そんな斎藤が俺の顔を見るなり、

「俺に彼女を作ってくれよぉぉぉぉぉ!!!」

と、泣きつきてきた。こんな男見るの初めてだ。

「はぁ…」俺はまず事情を把握できなかった。

「とりあえず斎藤だっけ? 落ち着け。座れ。事情がわからん」

俺は斎藤を座らせ、向かいの椅子に俺も座る。

「俺、来週誕生日なんだよ! それなのに彼女ができたことないんだよ! だから俺に彼女を作ってくれよぉぉぉぉ!!」

「いや、俺にそんなこと言われても…。ここのバイトだって女はたくさんいるし斎藤だっけ? 大学か専門学校に通ってるんだろ? 出会いはいくらでもあるじゃないか」

「駄目なんだぁぁぁぁ! 誰も俺なんか相手にしてくれないんだよぉぉぉぉ!」

のび太みたいな眼鏡を涙いっぱいに濡らしているがそれだけの気合があるなら頑張れる気がするのだが。かといってこんな男を相手にする奴がいるんだろうか?

「おはよって、あんた何斎藤君泣かせてるの?」

斎藤が号泣している時に休憩室に入ってきた沙織。あきれた顔をしている。

俺が何かしたみたいじゃないかと思ったが、

「なあ、沙織。斎藤に女を紹介してくれ。できれば来週の彼の誕生日まで」

こいつならなんとかしてくれそうというよりも、こんな面倒くさい奴の相手をしている暇もないのだ。

「彼女…ねぇ…。どういう人が好みなの?」

「女なら誰でもいいんだよぉ!!」

「誰でもって…」

沙織が一歩後ろに下がった。ドン引きしたみたいだ。

「沙織。お前が付き合ってくれ。それでこの問題は解決する」

俺いいこと言った。俺天才。

「嫌だよ。こんな変な人なんかと付き合いたくないよ」

おまえ。本人の前で変な人とか言うなよ。と、言いたくなったがこらえた。

沙織はため息をついて斎藤に、

「ここのバイトにも女の子20人はいるでしょ? 好みの順から告白していったら誰かと付き合えるんじゃない?」

めっちゃ適当すぎる。俺はつい天を見てしまったが、

「そうだね! 俺、頑張るよ!」

「頑張るんかい!」

俺はつい反応してしまった。

「よーし、俺、頑張るぞ! 生きる目的が出てきた!」

彼は休憩室を出て、

「おはよー。咲子ちゃん。俺と付き合ってくれ!」

「嫌です!」

「俺の人生もう終わりだぁぁぁぁぁ!」

という馬鹿でかい声が休憩室にまで聞こえてきた。

「なあ、沙織。おまえなに考えてる?」

「何も考えてないよ。ああいう人嫌いだもの。どうせ全戦全敗するでしょ。それよりも早く着替えないと。遅れたら怒られるわ」

「ああ、そういえば俺もだ。斎藤についつきあってしまった」


その後体当たり作戦で誰とも付き合えないと思っていたが頑張れば報われるらしく20人いる中で20人目の女の子が「私でよかったら付き合うよ」と承諾してくれたのだ。世の中何が起こるかわからないものだ。

「顔はゴリラみたいだけどきっと性格はいいと思うんだよ!」

と、斎藤はウキウキだったが、「相手がどういう人かわからないで告白してきてたのかよ」と言ってしまった。

俺は2ヶ月の新人だが俺でさえある程度は把握してるぞ。名前覚えきれていないが。

「今日バイトが終わったらデートなんだ! エリと一緒に肉まんを食べるんだ!」

「何故肉まん…?」

「お金がないからローソンの肉まんしか買えないんだよぉぉ! 第一うまいからいいだろう!」

「いや、美味しいけどね。というか外は雨か。買いに行くのはいいけど風邪ひくなよ」

「大丈夫だよ! 家で食べるから」

斎藤と仕事をして閉店後、何故か俺に「明日のノロケ話楽しみにしといてくれよ!」と、親指を立てられては雨の中スキップして帰って行った。

「大丈夫なのかねぇ…?」

いつの間にか沙織もいたのか話しかけてきた。

「余計なことはしてないんだろうな?」

「なにもしてないよー」

「ま、明日くらいは聞きたくもないノロケ話聞いてやるか」



ところが翌日、ノロケ話を聞く覚悟でいたのだが

「俺はどうすればいいんだよぉぉぉぉぉ!」

休憩室に入るなり泣きついてきた。何故か斎藤は眼鏡をかけていない。沙織は「このパターン見たことある気がする」といった顔をしている。

「とりあえず斎藤。事情がわからん。何があった?」

「昨日あの後ローソン行って肉まんを買ってエリの家に行ったんだ。そしたらエリは留守だったんだ。電話をかけても出ないし、俺は外で待ってた。朝まで」

「朝まで!?」俺と沙織が同時に言ってしまった。

「そしたら、エリが男の車に乗って帰って来たんだよ! 朝の7時に!」

「もちろん斎藤はその男に『おれのおんなになにしとんねん!』とか言って殴ったんだよな?」

「言えるわけないだろう! 怖いもん!」

「…だったらエリに怒ったんだよな? 朝帰りについて怒ったんだよな?」

「言えるわけないだろう! 怖いもん! でも俺ちゃんと言ったよ。『遅かったね』って!」

沙織は手のひらを額に当てている。俺もあきれて言葉が出てこない。

「そして俺は冷え切った肉まんを出して『一緒に食べよう』って言ったら肉まんだけ取り上げられて俺は家に入れなかったんだよぉ! そしてずぶぬれになっている俺も入ろうとしたら顔面にグーパンチが来て眼鏡粉砕したんだよぉ!」

「とりあえず斎藤。お疲れ」

「新しい人生頑張ってね」

これくらいしか言葉が出ない俺たち。

「なんだったんだよ俺! せめて今夜くらい俺につきあってくれ! 今日俺は暴れたいんだよぉ!!」



こうして、俺たちはバイトが終わってから斎藤がカラオケに行きたいと言っていたので付き合ったわけなのだが、





サザンオールスターズの愛しのエリー3時間熱唱は精神的にきた。


沙織は途中で寝やがったし。

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