変化
***
休日があけた。
「おはようっ!みき!映画楽しかった?」
「・・・」
あれ・・・聞こえてなかったのだろうか?
(スッ)
みきは私の横を通りすぎて行ってしまった。
・・・何かおかしい・・・?
***
休み時間になった。
「はな!みき!校庭行こう!」
「・・・行こうはな・・・」
(ふいっ)
「えっ・・・あ・・・」
みきは、はなの手をつかみ、どこかへ行ってしまった。
・・・みき・・怒ってる?
何に怒ってるか聞かなきゃ。
***
それから一ヶ月ほど、私はみきに声をかけ続けた。しかし、みきが私の話を聞くことはなかった。いつも、はなを引き連れて私を避けていた。はなは何か言いたそうだったが、みきにひっぱられていった。
・・・そのとき私は思い出した。クラスの中で誰にもかまってもらえず、一日中ほとんどしゃべらず、休み時間中ずっと本を読んでいた人たちのことを。私はその人たちのことをかわいそうと思っていた。私にとってその人たちは‘自分とは違う人間’だった。
だが、今の自分はその人たちと同じなのではないか?と思った。
私の中で友達は全てだった。大切なものは友達しかなかった。家での居場所がなく、孤独だった私をわかってくれるのは、友達だけだった。友達の前だけで笑顔になれた。私にとって友達はこの世で一番大切なもの。人一倍友達を大切にしていた。そんな自分に今、友達はいない。
・・・私は・・・すべてを失ってしまった・・・
そのとき私の中で何かが壊れる音がした。そのとき頭に浮かんだのは家族と弟の顔だった。
なぜ・・・私は家族としゅんたのためにがんばっているの?・・・しゅんたはみんなから愛されている。愛情も、自由も、私がほしいもの全部持ってる!私は何ももらえないのに、どうしてがんばらなくてはいけないの!?私が持っているのは・・・一人になれる孤独な自分の部屋だけ。いつもその部屋から聞こえる、家族と弟が笑いあう声を聞きながら勉強をするふりをしていた。私はいつもうらやましいと思っていた。でも、やっぱり、私の家族だから、愛していたし、愛してくれていると思っていた!・・・いや・・・そう自分に言い聞かせていただけだ・・・本当は心のどこかでわかっていた。私は愛されていないって。弟だけが幸せになってずるいって。そんな弟と家族のためにがんばる必要なんてないって思っていた。ただ、認めなかっただけだ。認めてしまえば、全て失うような気がして怖かった。
・・・だが、全てを失った今、全てがどうでもいい気がしいた。愛してくれない家族なんて要らない。幸せな弟にやさしくする必要なんてない。・・・家族のために私が何かする必要なんてない・・・
そのときからだった。私が家族に冷たくなったのは・・・いや、それだけじゃない。私が・・・ひねくれた性格になったのも、この頃からだったかもしれない。