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幼かった私の生活

***

「ねぇっ!さき!はな!校庭に遊びに行こうよ!」

「「うん!」」

私たち三人は、それからどんどん仲がよくなっていった。私は、とても楽しい時間を過ごしていた。

「あっ!そうそう!今度の土曜日、みんなで映画見に行こう!」

「いいね!」

「さきは?」

「あ・・・ごめん、ウチは無理かも・・・」

「また~?いっつもそうだよね~・・・ノリ悪いな~しかたない。はな!二人で行こう!」

「あ・・・うん・・・」

「ごめんね・・」

私だって遊びに行きたい。でも・・・

***

「ただいま・・・」

「おかえり。さき。」

「ねぇ・・・おやつは?」

私は毎日聞く。

小学生の私たちにとって、‘おやつ’というのは楽しみの一つでもあった。

「あ~・・・また買っとくわね。」

また・・・か。もう何ヶ月もそんなこと言ってる。いったいいつになったらおやつを買ってくれるんだろう・・・。

私は二階に上がる。二階のリビングに入る。・・・弟が何かを隠す。

「おねーちゃんおかえりー」

年の4つ離れた、小学一年生の弟、しゅんたは、軽い障害を抱えていた。外から見れば普通の子。でも、頭の働きが同じ年代の人より少し遅い。発達障害だった。

だがそのおかげで、人懐っこく、体の小さい弟は、家族からは、いつまでも赤ちゃんみたいでかわいい、とかわいがられていた。

・・・弟が、いつも私が部屋に入ったときに隠すものを、私は知っていた。

私にはめったにくれない、おやつだった。私にはくれないものを、母は毎日弟にあげていた。

「おねーちゃんには内緒ね」

って言っていたのだろう。家で家族がとる私への対応に愛情は感じられず、幼かった私は、(私は親に愛されていないのだろうか)と思ってしまっていた。

(がちゃっ)

母がリビングに入ってきた。

「さき、何してるの?早く部屋に行って勉強しなさい。さきにはしゅんたの分もがんばってもらわなきゃならないんだから。」

「わかってるよママ。」

私は部屋に戻る。でも、勉強はするふりだけをしていつもボーっとしていた。母がのぞきにきたらやっているふりをしていた。

弟が生まれる前までは、家族が私に接する反応は普通だった。

弟が生まれ、障害を持った子だとわかると、私には一切かまってくれなくなった。でも、私はそんなことですねたりはしなかった。むしろ、たった一人の弟を愛していた。障害があっても、弟は弟だった。だが、私が小学校に入学すると、母はすぐ私を学習塾に入れた。

「いい?しゅんたは大きくなっても働くことは難しいと思うの。でもママたちが死んだらしゅんたは生きていけないでしょう?そのときはさき、あなたがしゅんたの世話をするの。しゅんたもさきも、幸せに暮らすにはお金が必要なの。いいお金をもらうには、いい仕事に就かなきゃいけない。いい仕事に就くためには頭がよくなきゃいけないの。だからさき、幸せになるために、塾に行って頭をよくするのよ。そしたらみんな幸せになれる。」

それを、母はいつも私に言っていた。

あれからずっと塾にいき、学校から帰っても勉強、休みの日は朝から晩までずっと勉強をさせられた。しかも、夜の勉強はいつも母と向かい合わせの机に座り、母は読書をしていて、サボることはできなかった。

学校から帰って勉強をすると、必ず一回はちゃんとやっているかのぞきにくる。私はいつも監視されていた。家の中では何も自由がなかった。お金も一円も持っていないし、休日はずっと勉強だから、遊びに行きたいといっても、

「そんな暇あるなら勉強しなさい。大人になるまでなんてあっというまよ」

といわれるのがオチだった。だから、私は休日に友達と遊びに行ったことはなかった。その頃は、友達と映画を見に行くのが女子の間ではやっており、

いつもうらやましいと思っていた。でも、私はその思いを口にはしなかった。

私はこのときはまだ、弟のことも家族のことも嫌いではなかったし、何より、母の期待を裏切りたくはなかった。

「ママは私に期待してくれてる。成果を出せばきっとかわいがってくれる」

そう思い、我慢して勉強した。

きっと・・・きっと!!

「ママやパパ、みんなはは私を愛している」

そう、無理と信じていた。

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