ブルマと砲弾Ⅱ
お爺さんは身体全体から赤黒い気を噴きだしています。
これはエロスの波動と呼ばれるもので、この世において変態の限りを尽くした人間が会得する究極奥義です。
今までこれを会得した人間は中世日本のロリコンストーカーの先駆者である光源氏しかいません。
「このブルマは一億トンの金よりも価値のあるものじゃ!」
ブルマ>貴金属であることの証明です。ここは数学のテストに出ますよ。
「『ツンデレラのブルマ』を破いた貴様には! 地獄ですら生ぬるい仕置きをしてやらねばなるまい!」
本気でキレているお爺さんは身体全体をドリルのように回転させて地面に潜ります。コンクリの床だろうが何だろうが、お爺さんにとっては紙切れに等しいものです。
「ぐふふ、見えぬ地中からの奇襲は防ぎようがあるまい?」
バズーカを携えた老人はうろたえます。
まさかこんな非常識な攻撃手段を(バズーカも十分非常識ですが)使ってくるとは思いもよらなかったからです。
「卑怯ですぞ!」
「負け犬の戯言じゃ」
お爺さんは十秒ほど飛び出すタイミングを見計らいます。
そして
「今じゃ! ドリルジジイスペシャルを喰らえィ!」
と勢いにのって地中から必殺の頭突きを喰らわそうと飛び出したところで
「ひでぶッ!」
バイクに跨って戻ってきたお婆さんが躊躇なくお爺さんを轢きました。これが熟年夫婦喧嘩のスタンダードです。お婆さんはそのままバズーカを持った老人を轢き倒してようやく止まります。
「今帰ったべさ。おんや? うちのジジイがくたばっとる」
あなたが轢いたんですよと親切に教えてくれる人はこの場にいません。お爺さんはばったりと地面に顔をくっつけて倒れていました。
「この場におる全員倒れておるの。つまり、ワシの勝ちじゃ」
と勝手に勝鬨をあげています。
しばらくすると、ふらふらと若い介護士が起き上がりました。彼はバズーカ所持の危ない老人が倒れているのを確認して宣言しました。
「……勝者! クソバ……」
お婆さんは神速でトゲ付の金属バットを背中から取り出して、若い介護士に突き付けます。もちろん、無言です。蛇に睨まれたカエルのようです。
「……勝者、美人の若奥様」
「うむ」
満足げに頷いて、お婆さんはお爺さんに近寄ります。
お爺さんは
「ぐへへ、ロリロリツイン……おおお、今日はツインテール大漁じゃあ……」
どんな夢を見ているのかはお察しください。
「起きぬかロリコンセクハラジジイ」
お婆さんは得物の金属バットでお爺さんをしばきます。リアルDVの現場を見た若い介護士は震えあがっています。
何度もどつきますが、お爺さんは一向に夢から醒めません。醒めたくないのでしょうか。
「……ツンデレラが待っておるぞ」
「何?! それは英才教育をむっちりせねばならんな」
反応速度0.1秒で起き上がります。
お爺さんは目の前にいる人物をみてあからさまにがっかりしました。
「何じゃ、うちのババアか」
お婆さんは金属バットでお爺さんをタコ殴りにした挙句、縄で縛りあげて若い介護士に問いました。
「三階へ行くぞ、道はどこじゃ」
若い介護士は震えながらこくこくと頷くと、丁重にお婆さんを案内し始めました。
こんばんは、星見です。
ついに三階へ。三階を守護するのはどんなジジババか?
ジジイ、ジジイと来たので次はババアです。
ヒントは第一部に描かれています(笑)
ではまた次回お会いできることを祈りつつ……