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お雑煮クライシス

 元旦の朝になりました。

 入所者たちは大食堂でお雑煮とおせち料理を食べることになっています。もちろん、その中にお爺さんとお婆さんも混ざっていました。

 食事を始める前に、若い介護士が皆の前に立ち

「皆さん、この食事が終わった後に、世界最凶ジジババトーナメントを開催します。まずはルールをご説明いたしましょう。至極簡単です。この老人ホームの屋上にある、”三途の川招待状”を手に入れれば、その方が優勝となります。タッグを組むのは二人まで。おやつにバナナは含まれません。

 この老人ホームの各階には一人、合計七人のボスジジイかボスババアが待ち受けています。彼らを倒さない限りは上の階に上がることはできません。また、バトルには縛りがあるものもありますので、注意してください。もちろん、参加者同士の潰しあいもOKです。意地汚く最高に醜いバトルを期待していますアミーゴ。開戦は午前十時。この料理を食べ終わった後です。では、みなさん! 正々堂々と反則ギリギリのコス汚くデンジャラスなプレイを見せてくださいボンジュール」

 とわけのわからない挨拶をします。

 もちろん、こんな説明をジジババたちが理解できるはずもなく

「ミカたん人形の持ち込みは何体までかの?」

「エロ本は武器ですか?」

「貧乳ロリツインテール娘を召喚したいのじゃが」

「ミカたんはワシの嫁」

 好き勝手なことをのたまっていました。

 おや、お爺さんとお婆さんは静かに聞いています。が、口元はニタニタと笑っていました。

「では、みなさん!」

 無駄にハイテンションのまま、司会が続けます。

「新年あけまして、おめでとうございます! 今年こそはここから出て行けるように健康に気を付けて、お過ごしください。というか、とっとと出ていけこのクソジジババ」

 本音がポロリと見えた気がしますが、目の前のおせち料理で早速争奪戦を繰り広げて始めているジジババはそんなことは聞いていません。

「権増爺さんや、この伊勢海老はワシのものじゃ!」

「ふん、これは伊勢海老に偽装したザリガニだと気付かぬかたわけめが」

「そうじゃ、この施設がそんな金を出すわけなかろう。ワ○ミ並みにブラックじゃけえのお」

「ミカたんペロペロ」

 入所者たちが繰り広げる争いの舞台は主に伊勢海老(実はアメリカザリガニ)、殻つきのウニ(実はたわし)、ミカたん(彼氏募集の24歳)です。

 しかし、お爺さんとお婆さんは何にも手を付けずに静かに座って見ているだけでした。

 一通りご馳走が食い荒らされた後、入所者たちはお雑煮に手を付けます。

「おお、今年は紫色のお雑煮か」

「何か泡出ておるの」

「餅も紫色か、これは珍しいのう」

 毒々しい紫色に彩られたお雑煮を一切躊躇せずにガツガツと平らげていきます。

 お爺さんとお婆さんはお雑煮にも手を付けません。

 一分後、常識人の若い介護士以外は全員泡を吹いて倒れていました。

「ぐふふ、毒殺完了!」

 お爺さんが高らかに吠えます。いや、どうみても外道なのにどうしてそんなに誇らしげなのでしょうか。

「やはり、きび団子は暗殺用の武器というのは王道じゃの」

 とお婆さんも得意げです。さすが鬼畜ババア。

「ふむ、婆さんや。行くとしようかの」

「うむ、爺さんや。これで邪魔者はおらぬ! この老人ホームのボスジジイとボスババアを倒して、賞金を得るべさ」

 外道なお爺さんと鬼畜なお婆さんは途方に暮れる若い介護士を打ち捨てて、大食堂を後にしました。

こんばんは、星見です。

やってしまいましたよ、お爺さんとお婆さん。

でも、こんなのはまだ序の口です。


ではまた次回お会いできることを祈りつつ……

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