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ガスとゲスと刀(ドス)Ⅱ

 お婆さんは邪魔なガスマスクをはぎ取りました。藤崎ゴドウ相手では手加減している余裕がありません。彼の一挙手一投足を観察して、少しでも敵を分析せねばなりません。何せ、彼は必殺『竹槍戦闘機落とし』を持つ剣豪です。関東竜胆会が今、首都圏で最も警戒している暴力団でもあるのです。

 作務衣のお婆さんは勝手に藤崎ゴドウに突撃を開始していました。猪突猛進、ガス任せの突進です。お尻からのガス噴射エネルギーを利用しての驀進ばくしんは見る者を驚かせます。そりゃ、ガスを利用して突撃しようなんて人間は古今東西、世界史上多分この人だけです。良い子の皆様は真似しないでね。

 お婆さんは噴射でばらまかれたガスを吸わないように風上へと退避します。このあたりが何とも抜け目ありません。

 そのガス突進を藤崎ゴドウは危なげなくかわします。

「ぬるいわ! たわけめが!」

 藤崎ゴドウは腰の刀を抜いて、作務衣のお婆さんめがけて横一文字に薙ぎ払います。とっさに放ったガス風圧でそれを受け止める作務衣のお婆さん。ぶすん、ばすんと惜しげもなくガスを放ちます。

「おのれ、汚物で我が刃を穢すか! 武士道にかけて貴様を斬る!」

 藤崎ゴドウは大きく飛び下がりました。形はこれでも歴戦の武士。関東竜胆会に一人でケンカを売ったこともあるのです。相手の力量が分からぬ愚か者ではありません。

「ぬふふへへへ、ガスベガスガスベガス」

 もはや正気を保ってない作務衣のお婆さん。ほぼ本能丸出しで動いています。

 かたや藤崎ゴドウは油断せずに相手を見定めます。

 あのガスの防壁の前では刀による斬撃は受け止められてしまうでしょう。しかも、刀の軌道は見切られやすいことが欠点でした。藤崎ゴドウは思案します。まだ奥の手は使えません。なぜなら、あの得体のしれない挑戦者のババアがまだ控えているからです。

 同士討ちとは何とも可笑しな話ですが、兎も角も目の前で正気を失っているボスババアを何とかしなければなりません。

「ぐふふ、苦戦しておるようじゃな。藤崎ゴドウよ。ならば、この伝説の美婆も参戦するとしようぞ」

 とお婆さんは宣戦布告します。

 この圧倒的に不利に見える状況にも、藤崎ゴドウは一向に臆していませんでした。

こんにちは、星見です。

新年度、この季節というのは慣れません。多分一年で一番ストレスの多い時期なのではないでしょうか。


そろそろこの異説鬼退治Ⅳも佳境です。異説鬼退治Ⅴも考えていますが、はてさてどうなることやら。


ではまた次回お会いできることを祈りつつ……

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