ガスとゲスと刀(ドス)Ⅰ
お婆さんは三階のボスババアをあおって、そのまま四階に突撃させました。
数十秒後、巨大な爆音がします。ガス爆弾炸裂です。
五階と六階でも同じことを繰り返し、とうとうお婆さんは七階にたどり着きました。最上階です。これさえクリアすれば、賞金を手に入れることが出来ます。
しかし、ここで問題点がありました。
お婆さんの目の前にいるガスババアを始末しなければなりません。
このババアはまだ倒していないからです。
「よくぞ参った」
階段を駆け上がり、屋上へと続くドアを開けます。すると、屋上の中央には全身を甲冑に包んだ男が屹立していました。頂点から降り注ぐ太陽の光を浴びて、男の黒い鎧は輝いています。何故か全身に矢が十本ほど突き刺さっているせいで、どこぞの落ち武者のようです。
男の名前は藤崎ゴドウ。日本武士道党の創設者にして、暴力団ひとりと呼ばれている人物です。
「貴様……」
お婆さんが慄きました。
「生まれる時代を間違えた男か」
と、とんでもない発言をぶちかまします。いや、実際そうなのですが、本人目の前ですよ。一人戦国時代ですが、口にしてはなりません。大人はそういう本音と建て前が大事なのです。もっとも、そういう常識がお爺さんとお婆さんに備わっているかは別問題ですが。
「この男さえ倒せば、ガスベガスで女優デビュー」
お婆さんの後ろで戦闘準備を整えている、作務衣のお婆さんは目の色が変わっています。風向きによってはお婆さんがガスを受けてしまい戦闘不能になりかねません。お婆さんは風を読みます。
「うむ、ガス爆弾や、行こうではないか! 我らが舞台、ガスベガスへ! こやつが最後の関門じゃ」
お婆さんの脳内に反則という言葉はありません。
勝てば官軍です。
「お主ら、この大会の規則は知っておろう? 一対一が原則なのではないか?」
藤崎ゴドウはもっともな意見をババア二人にぶつけます。
「ふん、規則とふすまは破り捨てるためにあるものじゃ!」
なんという最低な意見でしょう。お婆さんはだんだんゲスになってきている気がしないでもありません。
「ぐふふ、数の暴力に勝るものはなし。さあ行くぞ、覚悟するべさ!」
それが最後の戦いの始まりの合図でした。
こんばんは、星見です。
何というタイトルでしょうか。さて、書き溜めていた分がなくなりました。仕事をとっとと片づけて明日から執筆するとします。
ではまた次回お会いできることを祈りつつ……




