占いする女
「ねぇ、私っていつになれば彼氏ができるの?」
ギルドの一角にてテーブルで向き合う女性二人。そのうちの一人は水晶を前に置きながら椅子にだらしなくもたれかかっており、もう一人の女は真剣な表情でその女を見つめていた
「だ~から、あんたがモテだすのは30を超えてからだって言ってるでしょうが」
何度かこういうやり取りがあったのか、水晶を前にしている女は水晶を覗き込むことなくタバコを口にくわえながらそういった
「だ・か・ら!!30なんて、遅すぎるでしょ!!それを早くする方法は無いかって聞いてんの!!」
向き合う両者の見た目は女優やアイドルと言えば言いすぎだが、十分に人目を引く容姿なのだが方やだるそうな態度に表情がデフォとなっており、もう片方のほうは逆に男を選べそうであるが・・・
「我慢しな。あんたはどうやっても今のうちは彼氏ができてもせいぜい持って10日だ」
「うっ」
女が告げた言葉に身に覚えがあるのか、小さくうめいた後にそのままトボトボと女の前から立ち上がり去って行った
「よ、おつかれさん」
漸く終わったかと思っていたら、そこに声をかけてくる男がいた
「あんたか、どうしたんだい?また、奥さんの機嫌が取れるものでも占って欲しいのかい?」
「いや、そんなことじゃねえよ。あ、あの時はありがとな。って、そうじゃなくて、相変わらずお前の占いは占いというよりも、予知や予言だな」
「別にそこまでの確実性は無いさ。ただ、人ってのは誰かに言われたり、こうやって占われたりするとそこから外れようとはしないからね」
他愛無い話をしながら女は相変わらずだるそうな表情のまま、近くにあったビールを煽った
「しっかし、お前の場合毎日やって疲れるんじゃないのか?」
そう、この女はギルドに所属しているにも関わらず毎日町の住人やギルドの連中、はては国外の人物からすらも依頼されている
もう、正直それだけでも生計を立てて生きていけるのだが、なぜここに所属しているかと言えば
「別に疲れはしないさ。この力自体も嫌いじゃないからね。それよりも、私はマスターに恩が有るからね」
そういうと、女はクエスト掲示板に向かっていった
「さて、たまには討伐クエストでもやるか・・・この、町の守護ってのは楽そうだな」
『ちょっと待った!!』
女が一つの紙を興味深く読み上げて受付しようとしたら、ギルド全員で待ったがかけられた
「なんだい、人がクエストに行こうとしているのに邪魔するのは」
「おまっ、タダでさえ予言めいたことをポロポロと零しまくってるのに町の防衛はやめろよ」
「前に、『あ、ドラゴンが来る』とか言って、町に被害が出たじゃないか!!」
「あれは、不慮の事故だ」
「他にも地震が発生するだの、空から何か降ってくるだの言って被害が小さいことのが少ないだろうが」
「そうは言ってもな、事実そう分かるから言ってるだけだが」
「お前、他のギルドの人間にお前が言ったことが起こるとか言われて畏れられてるんだぞ?」
そう、この女の占いはタダの占いではなく言ったことが現実として起こるために色々と便利で厄介なのである
「じゃあ、どうしろっていうのさ。ただ、占いだけでやってる気はないよ」
「せめて討伐ものにしてくれ。それが人だろうが魔物だろうが同情しないが、防衛だとその後修理行くのは俺達だからな?お前は来るなって言われてるし」
そういわれては仕方ないのか女は渋々と手に取った紙を元の場所に戻して討伐物の依頼を受けた後外に出て口笛を吹いた
《キュィィィィ》
可愛らしい鳴き声と共に降りてきたのは
「ばか、お前!門の傍でドラゴンを呼ぶな!!・・・ああ、近くにいた人が吹っ飛んだ」
「よしよし、ちょっと私を乗せて連れて行って欲しいところがあるんだ」
《キュイィィィ》
ドラゴンは再び鳴くと女を背中に乗せた後翼をはためかせて飛び立った
「バカやろぉぉぉぉぉぉっ!!また、ギルドの屋根が吹っ飛んだじゃねえかぁぁぁぁ」
「ハッハッハ!修理は頼んだよ」
それだけ言うと女はドラゴンと共に空のかなたに消えていった
ギルド【リトル・ウイング】唯人は居らず、いるのは癖があるものばかり
されど、日常は常にあり続ける