牡羊座、恐ろしか~
確かにシーパスは俺の部屋に居た。
居たけど……寝てた。俺のベッドで。
待て待て、確かに俺待てせちゃったよ?だって時間指定があるとは思わなかったもん。
けどさ、けどもさ、いやいや……え?俺にこの状況をどうしろと?
ちょっと落ち着くのを兼ねて、シーパスの具体的な紹介。
少しパーマのかかった薄い金髪の少女。
14歳、身長149㎝、体重秘密。
……駄目だ、全然落ち着かない。
マジでどうしよう。
いや、普通の奴なら起こすんだろうよ。
だがな、コイツはこう見えて何企んでるか解らん奴だ。
下手したら起こそうとして肩に手を掛けた所を、仲間に写真撮らせて、寝込みを襲ったとか言われたり…。
あ、声で起こせばいいんじゃん。
「おーい、シーパス、朝だぞー」
「……………」
「おーい、シーパスー」
「……………」
「シーパスー……」
「……………」
「さっさと起きろやぁぁあああ!!!」
「きゃぁっ!」
シーパスは何事かと飛び起きる。
どうやらガチで寝ていたようだ。
「ロ、ロアール!?何で此処に!?えっ!?何であたし……えぇっ!?」
「何でじゃねーよ」
「ロアールの部屋………ロアールってば大胆~」
「お前もういっぺん寝かしてやろうか?」
ただ、二度と起きる事はねぇだろうけどな。
「あ、そっか、あたしが自分で来たんだっけ」
思い出したみたいだ。
つーか、人の部屋に勝手に入り込んで、人のベッドで勝手に寝るって図々し過ぎる。
図太さの塊みたいな奴だな。
「一体どうやって入ったんだよ」
「え?確か鍵が開いてたけど」
……そういや、飛び出して来たんだっけか。
てか準備してる描写無かったよな、と思っている皆。安心してくれ。
ちゃんと飯食って、歯磨いて、顔洗って、着替えてからゴロゴロしてたから。
いつでも動けるようにちゃんと準備はしてたんだ。
「にしても勝手に入るなよ……」
「だって、親しき仲なら遠慮なしってことわざがあるじゃん」
「礼儀ありだ。遠慮くらい弁えてくれ」
コイツ、この年で13星座のメンバーであることから分かる通り、勉強をあまりした事が無い。
故に、頭が悪い。
「でもあたし達別に親しくないから遠慮も礼儀もいらないんだよ」
「あ?」
「だって親しいって親子の関係って事でしょ?」
「ちげーよッ!!」
確かに『親』しいって書くけども!
つーか、親しくなかったら遠慮も礼儀もいらないって、どんな理屈だ。
「あたしとロアールは親子じゃなくて夫婦だもんね」
「いつも言ってんだろ。後六年経ってお前の考えが変わらなかったら考えるって」
14歳じゃ結婚できねぇし。
俺ロリコンじゃねぇし。
つーか、爺さんの後少女って……アップダウン激し過ぎんだろ。高低差80ちょっとだぞ。
「ふふふっ、今日のあたしはいつもとは違うんだよっ」
「どういう事だ?」
「見よ、この薬っ!」
そう言って出したのは無色透明のビンに入った液体。
うわー、何か嫌な感じがする。
「大体分かるけどどういう薬なんだ?」
「この薬は体を一時的に成長させられるのだっ!」
「だろうな」
「ではっ!」
そう言ってゴクゴクと一気に飲み干す。
おいおい、そんな飲んで大丈夫か?
歳とり過ぎて婆になったりしねぇよな?
「んっ、う、うぁ、ぁぁぁ……!!」
「シーパス!?大丈夫か!?」
俺が駆け寄ると、シーパスの体が光り出す。
そして次の瞬間には……。
次の瞬間には…………。
次の、瞬間には……………。
四歳位の幼女になっていた。
「…………は?」
「あ、間違えた。これクラビスのじーちゃんにあげる若返りの薬だ」
「クラビスにッ!?」
アイツ若返りとかに興味あったのかよ。
「開発したんだけど、副しゃ用があるかもしれないから、実験おねがいってわたされてたの」
「下回ってねーぞ」
副しゃ用って何だよ。
副作用な。
てか、少女に実験任すなよ爺さん。
確かにシーパスなら有害物質とか飲んでも影響ないだろうけどもさ。
「とりあえず今度こそ成長しゅるほう飲むね」
そう言って今度はビン二本分飲みやがった。
ただ、今度は成長薬だったようで、俺と同い年くらいになりやがった。
俺26歳ね。
「ふふふっ、どうだ!あたしのボディ!」
「はいはい、凄い凄い」
でも、実際に凄かった。
あ、言わなくて良いって?
「むー、もっと見てよー。1時間くらいで効果切れちゃうんだからさー」
「わ、わかったから!お前の凄さはよーく分かったからすり寄せるな!」
「あ、そーだ。良い事思いついちゃった」
そう言ってまたもやビンを一本取り出す。
どこに隠し持ってんだよ!
てかまた飲んだらアラフォーなるぞ!?
「えいっ」
「うぐっ」
うん、上の台詞だけで解る通り、俺が飲まされた。
いやいや、俺をアラフォーにして何の意味が……。
「これはさっきの若返りの薬だよ」
「何ぃっ!?」
ってことは俺―――――
「何でこうなった」
15歳位になっちゃいました。テヘッ。
いや、テヘッじゃねーし。
今の状況じゃ、シーパスに身長負けちゃってるよ。
なんか屈辱的だ。
「もういっちょ」
「ちょっ、ぐぶっ」
やめろぉぉっ!!!
と言いたかったのにビンを突っ込まれた。
まさかこれ……。
「きゃぁっ!可愛いっ!」
「可愛いっ!じゃねぇよ!!」
今度は5歳位になっちゃったよ!
知らない人達が見たら、俺達親子だよ!
親しき仲にも遠慮なしだよッ!!
「可愛い~!」
そう言って俺に抱きつくシーパス。
いや、抱きつくっていうより抱えてるって感じ。
「やめろっ!くるしいっ!」
「きゃあ~!」
ダメだッ!聞いてない!
こうなれば逃げるしかない!
「逃がさないからね」
「うっ………」(しまった……)
目がかすむ……。
コイツ、輝流使いやがった……。
コイツの能力は『毒』。
よくわかんねぇけど、麻酔みてぇなの(無害なのだと信じておこう)を空気中に散布してたんだろう。
コイツには毒が効かないから……。
「うーん、どうしよっかなぁ」
シーパスは俺を椅子に座らせ、考えている。
……逃げるなら今しかない。
俺は近くにあった本を窓に向かって、今出せる全力で投げつける。
幸い、ちゃんと割れてくれた。
これで換気されるから、帰ってきても大丈夫だろう。
それに逃げ口も確保した、一石二鳥だ。
「きゃっ!何っ!?」
今の内に俺は『光化』。
そして
「またな、シーパス」
俺は、割れた窓から外に出た。
シーパスが何か言ってたが、俺は無視して次に行くとしよう。
てか、マジでヤバい……。
「く、くそっ……」
俺は建物に寄りかかるように、倒れこむ。
まだ他があんのに……。
「ん、少年、どないしたん?」
赤い髪に眼鏡を掛けた女性が俺の顔を覗き込んでくる。
………俺はどうやら、とてつもなく運が良いらしい。
そこで俺の意識はシャットダウンした。
その頃、ロアールの部屋。
「むぅ、逃げられちゃったかー。今度は窓を防弾ガラスにして……」
シーパスが次の作戦を立てていた。
~大地を照らす13星座の名前解説~
今回はレイウス。
レイウスは何かのマンガから取った気がする……忘れちゃいましたけど。
ケイルというのは、名前のスから繋いで『scale(秤)』という意味があります。
英語で書くと
Rayus.Cale