双子座、とりあえず平和らしい
「やっと……着いた……」
俺は今、『聖冠団』の団長室の目の前に居る。
団長の知り合いだっつったら簡単に入れてくれたぞ。
そんなんで警備とかは大丈夫なのか?
……良い事思いついた。
「団長、失礼します」
俺はノックして言う。
団員のフリをして驚かせてやる。
けど返事が来ない。
「団長、宜しいですか?」
「うん、良いよ。ロアール団員」
「のぁっ!?」
後ろに居たとは…。
「いつの間に外に出たんだ?」
「さっき君がノックした時窓から出た」
コイツマジか…。
コイツの能力は『光』。
光速で移動したり、光放ったりと面倒な能力だ。
本人からしたらとても使い勝手が良いんだろうけどな。
「とりあえず中入んなよ」
「ああ」
俺達は向かい合ってソファに座る。
何か赤髪の眼帯してる奴が、がやがや言ってるがウィンツは笑って誤魔化す。
……頑張れ、赤髪眼帯。
「さて、アル君は外に出てってもらって良い?」
「解りましたよ……」
赤髪眼帯が溜め息ついて外に出て行く。
苦労してんだろうなぁ。
「何を話したもんかな」
「そうだ、そう言えば今カイン君の修行してるんでしょ?」
「ん、ああ、してるけどそれがどうかしたか?」
「後どれ位やるの?」
「まだ初めて1ヶ月経つか経たないか位だからな……一応3ヶ月で予定してんだけど」
「ふーん、終わったら連絡してよ」
何でコイツに連絡しなきゃなんねぇんだ?
「カインに何か用があんのか?」
「用と言う訳じゃないんだけどね。ちょっとゲームをしようと思っててね」
「ゲーム?」
「うん、ゲームだよ。あ、この事はカイン君には言わないでね」
コイツ本当に何考えてんのかいまいち解んねぇんだよな。
ていうか何考えてんのか解る奴がいねぇ…。
変な奴らしかいねぇんだよ。
俺もその内の一人なんだろうな。
「『聖冠団』は上手くやってんのか?」
「というと?」
あ~、質問が曖昧だったか?
まぁ良いや。
「変わった事はねぇか?って事だ」
「うん、カイン君の事件からは特に何も……いや、一つあるな」
「何があったんだ?」
こう言う事は聞いとかないといけない。
俺には関係ないかもしれないけど一応な。
「ついこの間なんだけどね……」
そんな最近だったのか。
「『聖冠団』が真っ二つに割れちゃったんだ」
「どういう風にだ?」
「団長である僕派と第6部隊隊長派の二つ」
団長に歯向かったのか?
度胸があるというか、無謀というか…。
「何故そんな事になったんだ?」
さっきから疑問形ばっかだな。
「実はね……………」
…やけに溜めるな。
「イヌとネコ、どっちが可愛いかで口論しちゃったんだ」
「何だそれッ!!」
激しくどーでも良かった!
因みに俺は犬派だ!
……獅子座だけど。
「結局折衷案で皆ヤマネコ派になったんだけどね」
「それ全然折衷されてねぇぞ!?」
全員ネコ派にされてんじゃねぇか!
「とまぁ、事件と言ったらこの位かな」
「平和で結構でございますね……」
逆に何で事件がそれだけなんだよ。
つーか、事件じゃねぇよ。
ただの内輪もめだ。
いや、さっき言った通り平和で良いんだけどね?
「ここにいると退屈しなくて済むんだよ」
「まぁ、団長なんだから忙しいんだろうな」
「いやいや、面倒な仕事は全部アル君にやってもらってるからそこは大丈夫だよ」
最悪な上司だな、オイ。
赤髪眼帯やっぱ苦労してんな。
「お前団長辞めさせられるんじねぇの?」
仕事しない上司とか居るだけで腹立つだろうし。
「大丈夫なんじゃない?」
「根拠は何だよ」
「いざって時に活躍するから」
「聞いた俺が間違いだった気がする」
根拠もへったくれも無かった。
寧ろマジで辞めさせられそう。
「そのいざって時が無いんだろ?」
あんな事件しかない位だし。
「無いけど、僕がいるだけでとりあえずは安定してるんだ」
「へぇ、お前に統率なんて出来たのか」
「違う違う、僕が居るから、『聖冠団』はここから追い出されないんだよ」
大地を照らす13星座の称号。
それがまさかこんな所で活躍するとは。
その辺のただの人間に大地を照らす13星座と言っても、何だと言われるだけだ。
だが国のお偉いさんはその称号の偉大さを知ってる。
一応戦争の英雄だし。
「追い出そうにもお前がいるんじゃ迂闊に手を出せないってことか」
「そーゆーこと」
「成る程な」
その時ノックの音とさっきの赤髪眼帯の声がした。
「団長、そろそろ時間ですよ」
「ありゃりゃ、もうそんな時間か」
「何かあんのか?」
「ちょっと野暮用がね」
そう言うとウィンツは立ち上がる。
俺もそろそろ行かないとマズイな。時間的に。
時間と言えば………あ、そうだった。
「ウィンツ、ちょっと頼みがあんだけど」
「何々?いくら払う?」
「金はまた今度にしてくれ。後払いで」
「しょうがないなぁ。で、何?」
「俺を『光化』してくんない?」
『光化』、それがウィンツの破動。
自分、もしくは相手を光にするという解り辛い能力だ。
「良いけど、僕から離れたら1日位しか持たないよ?」
「その位で丁度良い」
「ふーん………終わったよ」
うん、特に何の動作はしてないが出来ているらしい。
見ているだけで出来るのだそうだ。
「ありがとな」
「いやいや、ロアールに貸しを作っとくのは悪い事じゃないしね」
あー…いくらせびられんだろ。
「じゃあまたね」
「おう」
俺はとりあえず外まで歩いていくことにした。
流石に廊下という狭い空間じゃ光化する訳にもいかないし。
制御できねぇから人に当たったりしたらただ事じゃなくなる。
……考えただけでエグイわ。
外に出てから俺は9枚の手紙の中から1つを選んでいた。
「よーし、これだ!」
選ばれた手紙の差出人はシルゴート・ファリス。
そういや、上手い事本編で出てきていないキャラが選ばれてないな。
ということで再チャレンジ。
「今度こそ……これだ!」
今度はまだ本編に出てきてない奴じゃないか!
差出人はジャクラ・ソウルダー。
13星座の中で最も清楚で、最も残虐な姫君。
どうやって城に忍び込むかな…。
「ま、それは着いてから考えるか!」
と言う事で俺は走り出した。
光の速さで。
……うん、一瞬で着いたぜ!
~大地を照らす13星座の名前解説~
はい、始まりましたこのコーナー!
このコーナーでは13星座のメンバーの名前の由来を書いていこうと思います。
初回はロアールです。
まずロアールは『Roar(咆哮)』という単語から来ています。
第一話で言ったリオンは『Lion』をローマ字読みした所から来ていたんですよ。
グノーツは……言ったんで良いか。
英語で書くと
Roarl.Gnortsとなります。