乙女座、暫し過去の話を
とりあえず俺達は向かい合って座っている。
「今日は何故来たんだ?」
「ん、ああ、たまには全員の顔見ようかなぁ、っと思ってな」
本当は覚えてないんだが。
さっき残念兄貴が言ってた言葉を借りた。
言っとくけど返さねぇからな。
……俺何言ってんだろ。
「そうか……来た所で特にする事など特にないのだがな」
「そ、そうか……」
「……………」
「……………」
何これ、スゲェ気まずいよ。
最初にコイツ選んだの失敗だったかな…。
いや、コイツ普通に良い奴なんだよ?
ただ単に話の話題に困っているだけなんだ。
(マ、マズイな……このままではロアールが退屈してしまう……何とか話を……)
何の話するかなぁ…。
あ、そうだ。
「メイディンってさ、13星座に入る前って髪もっと長かったよな」
「ん?ああ、確かにそうだったな。だが今ではこっちの方が良い」
「ふーん、動きやすいからとか?」
「それもあるが……こっちの方が落ち着くんだ」
ここで少しメイディンの過去に触れてみようと思う。
コイツは昔、処刑執行人だった。
あの頃のメイディンは心が無かった、と言っても過言じゃない。
処刑というより拷問に近かったような気もするが。
戦争の初期だったからまだ切羽詰まってなかったんだよ。
だからそんな仕事してたわけだ。(本人から聞いた)
「あの頃はお前、やんちゃしてたよな」
「やんちゃと言うな。ただ与えられた仕事をこなしていただけだ」
殺人ではなく、処刑。
犯罪ではなく、仕事。
そういう建前でただただ人殺しを楽しんでいた節があった。
今では自粛しているらしい。
「いやぁ、にしても怖かったよ。殺気だけで死ぬかと思ったもんだ」
「そんなにか?」
おぉ…そう言いながら強烈な殺気を向けないでくれ…。
何か悪い事したか?
「それでも、今の私があるのはお前のおかげだ」
「いやいや、そんな大した事はしてねぇよ」
した事と言えば、本気で戦っただけ。
そして勝っただけ。
そしてさらに本気で止めを刺しかけただけ、はははっ。
……いや、笑い事じゃねぇな。
「過去の自分と決別する為に、髪を切ったんだ」
「そう言う事ね。良くあるよな」
「良くあるとか言うな。臓器という臓器をバラバラにするぞ」
「相変わらず表現が怖ぇよ!」
今更言っても、って感じだが。
っていうか、殺すって言われた方がまだ幾分かマシだ。
「シルゴートも言ってたよ。お前は丸くなったって」
「ほう、アイツとは一度本気で殺らないといけないな」
女が言う台詞じゃねぇよ!
とは、良い加減口が裂けても言ってはいけないような気がした。
「ま、まぁ戦うのは自由だが、殺すのは禁止だぞ?」
「それはどうかな」
何でだよッ!
そこは「承知した」とか言うお前だろ!!
俺はお前と言う人間を見誤っていたのか!?
とは、口が縦に裂けても言ってはいけないような気がした。
というより言ったら間違いなく殺される。
抵抗する間もなく。
「仲良くやれよ。今まで(一応)仲良くやってきただろ?」
「数人とは慣れ合っているが、奴とは何があろうと慣れ合う気はない」
そう言う割にはアルティス迎えに行った時、仲良さそうに並んで歩いてたらしいな。
とは、一周回って口が普通になっても言ってはいけない気がした。
てか、思ってるだけで殺されそう…。
「とりあえず奴とは気が合わない」
「へ、へぇ~……」
こういうの何て言うんだっけ、犬猿の仲?
犬と猿ではなく、山羊と乙女だが。
「いつの間にか私の過去の話から、奴の悪口になってしまったな。私としては大歓迎だが」
一方的にお前が言ってただけなんだけどな。
良い加減"口が裂けても~"のくだりはやんないぞ。
「……そう言えば私はこれから用事があるんだ」
「そうなのか?レイルと言い、皆忙しいんだな」
「ああ、お前と違ってな」
……今地味にグサッと来たぞ。
だが俺はこんな小さい事で一々気にしたりしない。
「なら俺もそろそろ行くかな。今日は忙しいし」
「ほう、そうなのか。それは意外だ」
「自分で言っちまった事だから仕方ないんだけどな……」
つーか、本当に俺手紙なんて書いたっけ?
まぁ、12人から返事が来てるって事は書いたんだろうな。
……記憶にねぇ。
「じゃあな」
「ああ」
俺は外までは歩いて出る。
時間はまだ朝の9時40分。
因みに俺は良い事を考え付いているのだ。
「次はウィンツだッ!!」
俺は『聖冠団』本部へと走り始めた。
アイツの能力を借りれば、移動なんて些細な問題気にしなくても良いからな。
因みに所要時間は1時間ほどだろう。
……何か乗って行こうかな。
あ、駄目だ、金持ってきてねぇ。
??サイド
「やはり儂の思惑通りに動いてくれますね……」
「流石だな、じーさん」
「いえいえ」
一人の青年と一人の老人が木陰で話している。
そこにメイディンが近付く。
「さーて、そろそろ準備に入るか」
「ああ……」
メイディンはニィッと笑っていた。
今回書いてる途中に良い最終回が思いついたぜ!
よし!頑張るぞ!