蠍座、なんか見た目や〇ざみたいだぞ
「よぉ、遅かったな」
「ってもまだ8時半だぞ」
「夜のな」
今思えば何故こんな遅くなったんだ。
まぁ、多分俺が道に迷ってたからだろう。
なんせ、今回俺が来たのは山奥も山奥。超山奥なのだ。
逆に今日中に来れた事を褒めてもらいたい。
「いい加減場所変えろよ」
「あ?何でそんな事しなくちゃなんねぇんだ」
「来づらい」
「知るか」
ここはジェットの家兼病院。
木造。何でもアポンに作らせたらしい。
何やってんだよ。
「さーて、早速だがどこが悪ぃんだ?」
「別に診てもらいに来たわけじゃない」
「あぁ?じゃあ何しに気やがったんだ。こちとら忙しいってのによ」
「嘘こけ。こんな所に患者が来るわけねーだろ」
「部下に連れて来させんだよ」
「部下って言うなよ。看護師だろ」
「似たようなもんだ」
「違う」
「……なら下僕だ」
「より違う!」
「ペットか」
「最悪だろ!」
「ゴミ」
「より下があったよ!」
いつものように口が悪い。
もしかして一番まともなの俺じゃね?
どんな組織だよ。俺が一番まともって。
「今回特に用事は無いんだけどさ」
「あぁ?別に飯食ってねぇからいらねぇよ」
「?………いや、楊枝じゃねぇよ!」
ボケ分かり辛っ!
「最近変わった事ないか?」
この質問も久し振りだなぁ。
5話ぶり。およそ1ヶ月ぶり。
……この世界の時間で言うと数時間ぶりだけど。
「変わった事なぁ……そう言えばこの前変な患者が来てよ」
「どんな奴だったんだ?」
そして久々にこの話題を振って返してきたぞ。
地味に嬉しいぜ。
コイツ、強面で口が悪いけど基本良い奴なんだよ。
「ヒョロヒョロの男でよ。うちのナースを誑かしてやがったんだ」
「ほう」
「まぁ、それは良かったんだが、治療してやった後、金払わねぇどころか院内で暴れ出したんだ」
「ほほう」
「酔ってやがったんだよ。ったく、何でうちのバカ共はあんなの連れて来やがったんだ」
「それでそいつはどうなった?」
「俺が死なねぇ程度にボコって実験台にしてやった」
「やり過ぎだろ!」
「安心しろ。臓器売買とかそういう犯罪系統はやってねぇから」
「当たり前だろ!やってたら即刻牢獄に連れてくわ!!」
「実験台っつってもうちの研修医の手術や解剖の……」
「今から牢獄連れて行くぞ!!」
「慌てるな。全て冗談だ」
まぁ、分かってたけど。
コイツ基本優しいんだって。
「最近変わった事なんて一々覚えてねぇよ」
「……………」
覚えてる奴数人いたんだが……。
やっぱ忙しい奴と暇な奴ってそういう所が違うんだな。
「そう言えばよ。お前、炎の子の修行見てやってるらしいな」
「ああ、まぁ、アイツの力を暴走させねぇ為にもやっとかねぇと」
「それに関しては俺も本気で頼むぞ。失敗させるなよ」
「……任せろ。あの時みたいな事にはならねぇようにする」
「アレが目覚めたら……また多くの輝流士が死ぬ事になる」
「わーってる。そんな事させねぇよ」
その言葉を聞くと、ジェットは少し眉を顰めた。
「……お前、他人の為に死ぬ事は出来るか?」
「は?あー……」
「例えば、周りの誰かが瀕死となり、お前が肩代わりできるとすれば、お前は肩代わりするか?」
「……どうだろうな。難しい質問だ」
「因みに、俺は絶対に他人の為に死んだりはしねぇ」
ジェットのサングラスの奥の瞳がギラリと光った。
「医者として、今まで人の死を何度も見て来た」
医者として。
それは、戦争で人が死ぬ所を見たのとは訳が違うのだろう。
「大抵の奴はな、生きたいっつーんだ。死にたくない、生きたいってな」
「だろうな」
「だが、結局はそいつも他人だ。医者として出来る限りの事はするが、代わりに死んでやる事なんかしねぇ。いや、できねぇ」
「お前の質問はそういうのとは少し違うんじゃねーか?」
「ああ、だが大差はねぇ。他人の為に捨てるくらいの命なら、生きている価値もねぇってことだ」
そう言えば、クラビスに人間は自己中心な奴しかいないって言われたな。
ただ、ジェットみたいに考えられる奴なんてそんないない。
「で、結局何が言いたいんだ?」
「自分で考えろ、ウジ虫」
ウジ虫と言われたのは生まれてこの方初めてだ。
その時、部屋にノックの音が響く。
「失礼します」と言ってナース服の女性が入ってくる。
ナース服か………なんか良いね!
………良くね?
「院長、患者の容体が急変しました」
「そうか、すぐ行く」
そう言ってジェットが立ち上がる。
それにしても二人して落ち着き過ぎだろ。
これがプロなのか?
ジェットは立ち止まって、振り返らずに言った。
「ロアール、任せたぞ」
「ん?ああ、任された」
カインの修行の事を言っているのだとすぐに分かった。
ジェットはその後何も言わずに部屋を出て行った。
カッコイイシーンみたいな雰囲気を醸し出していたが、実際の状況はそうでもなかった。
……ところで、俺は帰るべきだよな?
何か今回は短かったな。
それにしても、宿題(?)みたいなのを出されちまった。
家に帰った。
只今の時間およそ21時。
部屋の電気を付けてベッドに飛びこむ。
とりあえず疲れた。
ゴロゴロしていると手に何か触れた。
「何だ……?」
封筒。
差出人不明。
何か怖いよ、怖いよお父さん。
お父さん居ないけど。
「んだよ、おい……」
とりあえず開ける。
中には一枚の手紙。
おいおい、ここからまた何かあんの?
だからジェットとの会話シーンが短かったの?
まぁ、俺は紙を食べたりしないのでもちろんまず読む。
その手紙を読んだ瞬間、俺は部屋から飛び出した。
まだ『光化』は持続している筈だ。
「クソッ、面倒くせぇ……!!」
手紙に書かれていた内容はというと
『午後6時にレンカルの城を占拠する。我らを捕えたくば、貴様一人で来い 闇の幻影』
もちろんガセである確率は高い。
というより、99%ガセだろう。
だが、一応見て確かめないといけないのは事実だ。
奴等は何をしでかすか解らない。
ジャクラが居る限り恐らく大丈夫だろうが、タウラスから訊いた情報、シュレッドの情報が頭をよぎった。
もし、あの手紙の内容が本当で、そのシュレッドとかいう奴が居たのなら、ジャクラでもきついだろう。
「―――――クソッ!本当に面倒な事ばっかしやがる……!」
~大地を照らす13星座の名前解説~
スウェルは確か適当に決めたので飛ばして、今回はカウリー。
もう言わなくても良いですか?
カウリーは『Cow(牛)』から来てます。
グランホーンは『Grand(雄大な)』『Horn(角)』から来ています。
英語で書くと
Cowry.Granhorn