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僕達が生きる明日へ  作者: 愁真あさぎ
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エピローグ

長くなりましたが、これで完結です



では、お楽しみ下さい






 ---数週間後---




 はじめは、修理に出していたコラルロッドにまたがりエンジンをかけた 機体を浮上させると家の敷地から出ていつも通い慣れた通学路へと走らせる



大きな通りに入ると、コラルロッドに乗る学生達がずらりと機体を並べて通学していた



はじめもその流れに乗り、少しスピードを落としながらその群れに混じった



今日の風は一段と暖かく心地よかった、トレードマークだったつんつん頭をやめさらさらと青い髪が風に揺れる



「おう! はじめ」


横から声を掛けられ、そちらに顔を向けるといかにも改造コテコテのコラルロッドにまたがり、真ん中だけ白く染め髪はピンク色の厳つい顔が居た



「おう! ヤジ! うぃーす」



はじめが気安く挨拶をすると、厳ついピンク頭がニヤリと不気味に笑って、改造コラルロッドを寄せてきた



「なぁ、いまからどっか行かね? いい店みつけてよぉ」



はじめは、目を細めぶっきらぼうに応える



「行かねー」


「あぁ? 何でだよ!」


「行かねーつったら行かねえの、じゃあな」



ヤジと呼ばれたピンク頭のコラルロッドを振り切ってはじめはスピードを上げた


他の学生達の間をぬって、先に進んでると例の研究所があった場所にさしかかった



研究所だった場所には、黄色いテープが張られいまだに警察が出入りしていて物々しい雰囲気だ



はじめは無言で研究所跡を通り過ぎた



例の研究所跡の道を抜けると、学生達が真っ直ぐ進むのに対しはじめはひとり道を外れて緑の生い茂る敷地にコラルロッドを走らせる



緑が続く道を草木の匂いに包まれながらはじめは大きく息を吸った その先に白い大きな建物が見え、そのなかに入って行った




入り口らしきところでコラルロッドを止め、エンジンをきり降りると機体のある地面に丸い円の切れ目が現れ自動的に地下へと吸い込まれていった



はじめは乱れた自身の髪を手ぐしでさっと整え、建物のなかに入っていく











「よう! 気分はどうだ?」



いつものように鬱陶しいほど明るい声に悠呂は目を開ける ベッドの横の椅子にはじめはがさつに座った



「………毎日、毎日、来てくれなくてもいいよ」



うんざり顔ではじめをねめける


「なんだよ! せっかく毎日けなげに見舞いにきてやってんのにその顔はよ」



悠呂はむっつりとした表情で手元のボタンを操作し、上体を起こした



「どうせ、学校に行かずサボる口実でここへ来たんでしょ………」


「うっ………」



痛いとこを突かれてはじめは顔色をかえる


「大丈夫なの? そろそろ中間テストが近いんでしょ?」



「う、まぁ……そう、なんだけど」



はじめは苦し紛れに頭を掻いた


「だけど?」


悠呂のいた~い視線を外して



ゆっくり立ち上がり、窓際に歩くと外を眺めながらはじめは静かな口調で先をつづけた



「………あんなことがあって、その…お前大丈夫なのかなって心配になっちまって……そう思ったらテスト勉強どころじゃなくってさ」



その言葉に、はじめの背中から視線を外した悠呂は俯いた






---あの日




 気を失うように眠ってしまった悠呂は、何も知らずに助け出され病院へすぐに搬送されたがしばらく昏睡状態がつづき、目が覚めたときには白いベッドの上で数日が経っており、泣きながら覗き込む母親と母親の後ろで安堵したような、苦いような表情をした浅乃木の顔があった



星羅が死んだという事実を知らされたのはそこから更に七日後のこと……



「う……嘘だ!」

「嘘じゃない」



悠呂は浅乃木を睨みつけた、その目を受け止めるように浅乃木も睨み返す



「嘘だ………だって」

「嘘じゃない……俺は……いや、俺達は星羅お嬢さんがその命をかけて助けてくれたようなものだ」



そう言って浅乃木は自身の膝に目を落とし、手をそっとのせた


「……それって、どういうこと」



浅乃木はじっと自身の膝に目を落としたまま、黙っていたがきゅっと膝の上で拳をつくると顔を上げ、悠呂を真っ直ぐみつめた



「聞くか………彼女の最期を」


そう言って浅乃木は星羅の最期を話し始めた



浅乃木の話す内容が全て何かの物語でおきた出来事のようで、とても信じ難かった



でも、想像できてしまう………ドア軋む音をさせて閉まっていく隙間から見えた星羅の最期の柔らかい笑顔---




気がつけば、溢れんばかりの涙が布団を濡らしていた



今思う……あんな短期間な出逢いだったけど、自分は彼女の事が好きだった



彼女を助けるためにしたことなのに、その彼女を失ってしまった………さらに、彼女の命と引き替えに自分たちが助かってしまった




「うぅ……」


涙はとめどなく頬をつたい流れ、気がつけば息も出来ないほどに泣いていた



--くるしい、あぁこのまま息をしなければこの気持ちを伝えに行けるのに



そう思った瞬間、目の前が真っ暗になった















**************


「おい! 悠呂、大丈夫か?」

はっと我に返って顔を上げると心配そうな顔をしたはじめが覗き込んでいた



「う、うん、ごめん平気…大丈夫」


「あせった~また、過呼吸になったんかと思った」



そう言って、はじめは大仰にベッドに前のめりに倒れ込んできた



「ごめん、もう大丈夫だから」


利き手とは違う手ではじめの肩に手をかけると、布団から顔を上げたはじめはその手をみるなり眉根を寄せて布団に声をこもらせながらぽつりと言った



「なぁ、その腕本当に治さないのか?」



そう訊かれて悠呂ははじめの肩にのせた手を離し、自身の動かなくなった右腕をさすった



「うん」


「うんって、今の医学は進歩しまくってんだぞ?治せんのになんで?」



悠呂は右腕をきゅっと掴んで、薄く笑ってみせた



「これは、その進歩しすぎた医学に対してのあてつけなんだ」


「はあ?」



困惑顔のはじめに笑んで悠呂はつづける



「考えてもみて、本来、神でもなんでもない人間が勝手に神の領域に触れていいと思う?」



その質問にはじめは苦い顔をして質問で応えた



「それ、星羅たちのこと言ってんのか?」



「………星羅たちみたいな子供は創っちゃいけないんだよ」



そう言って悠呂は悲しそうに目を伏せた



はじめは黙りこむ



「僕は、その過ちを未来の人間に伝えたい! 同じ過ちをおかして欲しくないから………だから、この腕は治さない」



悠呂の力強く、晴れやかな表情をみてはじめはふっと笑んだ



「………おう」



「命の尊さを……個人の尊厳を僕たちが伝えなきゃ」



はじめは腕を組み、楽しそうに笑って「おう」と相づちを打った



「僕たちが生きる明日へ………」









大変長らくご無沙汰しておりました、色々ありなかなか手がつけられず今になってしまいました(笑)



しかし、ようやくこの物語を終わらせてやれることが出来ました



私にとっては本当に処女作なので思い入れのある作品です



今までチョロッと読んで下さった読者さま、小説のなんたるかを教えてくれた作家仲間の方々本当にありがとうございました



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