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僕達が生きる明日へ  作者: 愁真あさぎ
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第五十九章

大変長らく更新しなかったことを深くお詫び申し上げます。 なにぶん、長期執筆から離れておりましたのでお見苦しい点があるかと思いますが、どうかご温情いただき読んでいただければと思います。


 対策チームから外れ、単独行動を選んだ浅之木と(しん)はフェンスの近くで、自分たちが派遣し潜入させている門番の一人に事情を話していた。



「えっ! 浅之木警部……それはどういう」



いきなりの話に門番は目を丸くしている。



「言葉の通りだよ。 まっ……俺等は元々諜報員だ、人員を指揮することはもとから出来ない」



それはそうですがと門番は心配顔で浅之木、清両名の顔を窺う。



「それでも、単独で行動なんて! しかもこんな状況の時に……」


門番は少し躊躇う表情をして下を向いたが、何か決心したのかすぐに顔を上げ力強く応えた。



「わかりました! この地下の隠し通路をお教えしましょう! 但し、私も御一緒します! 」



 その有り難い申し出に浅之木は静かに首を振った。



「駄目だ。 お前はここにいろ」



しかし、と食い下がる門番に清が彼の肩に手を置いた。



「申し出は有り難いが、お前はここで自身の仕事をしていてくれ」



それでもすがるような目で見る門番に、浅之木は軽く笑って……



「だってぇ〜ん、ほらぁ、お前もあのタコ親父のクドい説教と山のような始末書を書かなきゃならなくなるよ〜それでも良いのかぷぅ〜」



浅之木は体全体を気持ちが悪いほどクネクネし、おどけて見せる。



 門番は浅之木の気持ち悪さになのか、はたまた自分が課長に怒鳴られ、山積みの始末書を書く姿を想像したのか顔色がみるみる青ざめていく。




「……先輩」



清が少し呆れ気味で溜め息をつくと、門番に目を遣り



「まっ……そういうことだ。 お前は、あの泥目の警部様の指示に従ってくれ」


清は後ろで対策を練っているだろう澤田がいる場所を指した。



「は……はぁ」


納得いかない様子で門番は返事をする。



「じゃっ……隠し通路とやらを教えてくれ」



浅之木はそれだけ言うと、清にチラと目を遣りフェンスの中を窺う。



清はそのアイコンタクトにひとつ頷くと、こちらですと案内する門番について行った。



 ひとり残った浅之木はただの原っぱにしか見えないフェンスの中をじっと眺め、煙の上がっている場所、星羅が入って行ったであろう場所を順番に確かめるように周りを少し歩いてみた。



「!? 」



浅之木はある場所で足を止めた。


確かにそこは出入り口になっていただろう地面……


その箇所は中からの振動により、深く陥没していた。



「何ということだ……これじゃ」


浅之木は額に手を置いた。 中には何十人という研究員、それに潜入させておいた仲間が取り残されている……



他に出口があるのかもしれないが、星羅が入って行ったこの箇所は絶望的だった――



「くっ……悠呂…無事でいてくれっ」








***********



 一方、清は門番に案内され目的の場所に辿り着いていた。正門から随分と回り込んだ、裏手の場所だ。


 それに中に入れるようなものは今の時点、全く見当たらない。 清は眉をひそめた……



「…お前、俺たちを騙したんじゃないだろうな?」



そう凄む清に門番は肩を竦め



「ちょっ……ちょっと待って下さいよっ。 騙したりしていませんよ!」



門番はもげるのではないかというほど首を否と振る。

「こっ……こちらです」



門番は少し怯えながら、清の前を申し訳なさそうに横切ってフェンスの一部を押した。


するとフェンスの一部がドアのように動いた。



「……!? こっこれは」



清が驚いていると門番はひとつ頷いて、先に自分が中に入り清を招いた。



「ここの隠し通路は、二十世紀時分に日常で使われていたであろう技法、いわゆる機械を使わない手動というものを使っています」




 この近年、ドアというドア、入り口という入り口は全て機械に頼っておりもし故障したとしても予備機能やら予備電源など一切、人が触れずとも入れる仕組みになっている。恐らく、今の子供達は自分の手で押したり引いたりする扉の存在はあまり馴染みがないだろう……むしろ、存在自体あまり良くわかっていないかもしれないーー




 清は中に促されながら、不思議そうにフェンスを見ている。


再びこちらですと呼ばれて振り返ると、今度は、地面に片膝をついて何やら持ち上げようとしている。


重そうにしているので、清は駆け寄り門番を手助けする。



「手伝おう」



すみませんと門番は清の手を借り、地面を剥がす。


すると中には、地下に繋がる階段が現れた。


清は階段から門番に目を遣ると、彼は強く頷いた。どうやらこの穴のような入り口が地下研究所に続く、隠し通路のようだ。



「悪いが、先輩を呼んで来てくれないか」



門番はわかりましたと返事をし、もと来た道を戻って行った。




 門番がフェンスを出たすぐのところで、浅之木は立っていた。



「あっ警部、今お呼びしようと……」



言いかけたところで浅之木はやめろといった風に手を振った。



「あ〜今オレ、警部じゃないから 浅之木さんでいいよ」



えっと驚く門番をすり抜けて、フェンスのドアをくぐろうとしてはたと立ち止まった。


「ほう〜なかなかの仕掛けじゃないか……二十世紀時分のものだな」



そう言ってフェンスのドアを開け閉めしている。



「はいっ! 結構単純な方が逆にわかりづらいと研究長が……あっ」



「研究長か……」



そう言って浅之木は頭を掻いた。




「いっいや……あのっ、潜入中は我等はヤツの忠実な下僕でして……つい、くせでそのっ」



あわあわと弁解する門番に浅之木は笑って、彼の胸元を小突くと



「気にすんな……それがお前らの仕事だろ?」



そう言って、肩に軽く手を置くとすぐに背中を向け



「それで? どうだ? 地下に行けそうな隠し通路とやらは見つかったのか? 」



と中にいる清に問いながら、さっさとフェンスの中に入って行った。




門番も慌てて浅之木の後を追う。


はい、ありましたと清は跪いて地面の穴を指差した。 浅之木はゆっくりそこに近付くと、顎の無精髭を触りほぉと感心している。



 暫く地下に続く階段を見ていた浅之木は躊躇もせず、自ら先頭だって中に入って行く。



清はそれに続かず、門番に問う。



「この階段を降りるとどこにつく?」



そう聞かれ、門番は真面目顔で倉庫ですと応える。


清はそうかと頷くと、薄暗い階段をひとり降りる浅之木の背中をじっと見遣っていた……



すぐに自分も後に続く。


 門番は暗闇の中に溶け込む二人の背中を心配そうに見送った。



***********



 薄暗く地下に続く階段を二人は足下を探るように降りて行く。 ペンライトを灯しているが、それだけでは心許ないーー



 ようやく降りきった場所には、小さい入り口らしき鉄の扉が現れた。お互い目配せすると今度は清が先頭立ってそっとその扉に触れる。


冷たい感触がするだけで、自動で開く様子はない。これもフェンスの要領なのかと扉を押してみる。

 しかし、びくともしない……ペンライトで鉄扉をあて詳しく調べてみる。


真ん中の右手辺りに丸い窪みをみつけ、その中にある取っ手らしきものを軽く引っ張ってみた。



すると、扉は重く軋むような音をたてなんなく開いた。



「先輩……」


清が浅之木に目を遣ると、浅之木は行けという風に頷いた。


それを受け、清はそっと扉越しに中を窺う。


薄暗く良くわからないが、奥へと続く廊下があるのが見える。再び、浅之木に振り返り彼に頷いてみせると清はすっと胸元から銃を取り出し、胸前に構えると静かに中に入って行く。



 浅之木はそれを見てから自分も銃を取り出し、電子式になった銃の残り残量を見た。



 電子式になったとしても殺傷能力はある拳銃ーー



浅之木は、はっと我に返り銃を構えると中に入った。






 たどり着いたところは、薬品の倉庫のようで薬品独特の匂いがほんのり漂ってくる。



 浅之木が薄暗い天井を見上げてみると、大規模な倉庫らしく天井につくほどの大棚が整然と並んで、棚の中にはぎっしりとダンボールの箱が詰まっている。



「ある意味、絶景だな」



浅之木は独りごちると、清に目を遣った。 彼は続けて警戒しながら、辺りを見遣り地下研究所に続く入り口を探している。



浅之木は、出口の捜索を彼に任せ棚のひとつに歩み寄った。

ペンライトを箱のひとつに当てて、ラベルを確かめる……



 課に配布された資料に目を通してなければ、全くわからない薬品名だ。



浅之木は箱のひとつを棚から卸し、中を開けてみた。



中からは、綺麗に袋分けされた粉末状のものがぎっしりと詰まっている。



その袋にも丁寧に薬品名のラベルが貼られてあった。 浅之木は記憶を呼び起こし、資料の内容を必死に思い出そうとした……



「……確か、細胞を強制的に分裂させる薬……だったか?」


ラベルにペンライトをかざしながら、独り呟く。



「先輩!!」



清が出口を見つけて戻ってくる。



浅之木は薬品の大袋を破り、中の小袋をひとつ取り出し後は棚に戻した。



「……? 何ですか? 」



清は浅之木の手中にあるものを覗き込んだ。



「……証拠品」



それだけを言って、袋を清に手渡した。

清は慌てて受け取ると、改めてその袋が何なのか調べてみる。 渡した張本人はフラフラとどこかへ行ってしまったので、彼が戻した箱のラベルを見てみる。



「……!? これは資料にあった薬品……」



清はフラフラ歩く浅之木の背中を見遣り、溜め息をつくと


「たくっ……先輩は…根っからの仕事人間なんだから」


浅之木の背中に呟くと、胸元から証拠品収納カプセルを出して、そこへ納めた。





 大変長らく更新しなくてゴメンナサイ。サイトをご存知の方はブログにて大体おわかりかと思いますが……まぁ〜ぶっちゃけ、スランプと創作意欲の欠如…平たく言えばやる気ナッシィングだったわけで…あはははっ汗

楽しみにしていただいている方には本当に申し訳ありませんでした(泣) まぁ〜いるかどうかわかりませんが……


そうそう、あまりにもプロットより加筆し過ぎて携帯では読みづらい長さになってしまいました……オマケに実はプロットはまだまだこの先があった……なのでその分は六十章以降に組み込むことにしました! まただいぶ間あいちゃうかもですが、気長にお付き合い下さいませ!


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