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僕達が生きる明日へ  作者: 愁真あさぎ
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第五十八章

大変お待たせいましました。

乱筆乱文気味ではありますが、お楽しみいただけるばと思います。


 村瀬達が立ち去った後、二人はしばらくその場で佇んでいた。相変わらず聞こえてくるのは、くぐもった爆発音と床から突き上げるような地響き。


その音が徐々に近付いて来ていることが、二人には分かっていた。


近付くこの音がいずれこの地下研究所を潰すだろう。


そうなる前になんとかここから脱出しなくてはいけない。


 こうしてはおれぬと、先に行動を起こしたのは悠呂だった。だがしかし、足を一歩踏み出してみればその足は力無く崩れ、床に膝を折ってしまった。


あまりの出来事続きですっかり忘れていた。自分は村瀬に撃たれていたことを……。


彼と対峙していた時は、神経を張り詰めていた為痛みを忘れていたが、緊張の糸がすっかり切れたいま、痛みがぶり返してくる。


――気のせいだろうか?少し目眩もする。


意識をなんとかはっきりさせようと、頭を振っていると真正面に星羅の顔が現れた。


大丈夫かと聞く彼女に悠呂はうんと応えたが、彼女は肩の傷を見るなり眉根を寄せ、自分の首に付けていたリボンを外すと悠呂の服をたくし上げ、肩に巻いた。


「ごめんなさい。 今はこれで我慢して」


そう言ってくる彼女に悠呂は薄く笑って有難う、十分だよと応えた。



星羅も薄く笑うと、すっと悠呂の脇に身を沈め肩を貸す。


悠呂もその肩を借りて立ち上がった。


「ここを出たら医務室があるから、まずそこへ向かいましょう」


そう言って星羅は悠呂を見た。



 悠呂はそれに頷くと星羅に支えられ、廊下に向けて歩き出す。


部屋から廊下の様子は大体把握できていたが、実際目にすると予想をはるかに超え、そこは騒然たる有り様。


煙の立ち込める視界が、尚一層混乱の拍車となり、まさに阿鼻叫喚とはこのことだと二人は思ったーー



 地響きのせいだろう、天井から石クズが雨のように降ってくる。逃げ惑う研究員たちも手を傘に出口があるだろう方向へ殺到している。


 悠呂達も意を決し、その波に乗って出口に向かうことにした。


 しかし、歩けど歩けどそこは星羅の見知った研究所とは様変わりしていた。 あの頑丈を誇っていた建物が、嘘のようだ。通れたはずの道はものの見事に岩のような瓦礫で塞がれてしまっている。


その行き止まりが逃げ惑う研究員たちの動揺を更に煽っていた。


その騒然たる雰囲気に飲み込まれそうになりながらも、星羅は懸命に頭の中で他に通れた道はなかったかと見取り図を思い浮かべ歩いた。



 壁のような瓦礫にぶち当たり、懇願をも神頼みともつかぬ研究員の叫びを尻目に、星羅は悠呂を支えながらその道とは別のフロアの廊下に入った。


案外、このフロアは冷静さを欠かない研究員達が容易に見つけるらしく、まだらだが急ぎ足程度に星羅達を追い抜いて行く。


その中で彼女だと気付く者もいるが大概は分かっていながら申し訳なさそうに通り過ぎて行く者が多い。



それでも、声を掛けようかどうしようかとチラチラとこちらを窺う者もいた。



 そんな彼等に星羅は黙視で大丈夫だと告げてやると、すみませんと言いたげな目を寄越して一礼し先を急ぎ歩いて行く者、それでも

「お手伝いしましょうか? 」と親切に声を掛けてきた者もいた。


「大丈夫だから、先に避難して下さい」


と丁重にお断りして、彼等の安全を優先させた。




 しばらく歩いていると逃げる研究員の中に見知った背中があった。



 しかし、その人物は星羅の記憶ではここに存在していることが有り得ない筈の人ーー。


信じられなくて後を追おうとしたが、足がそれを拒否し追うことが出来なかった。


 悠呂は首を傾げて顔を覗き込み、呆然と一点を見詰める彼女に声を掛けた。


「どうしたの? 」


悠呂の声にはっとした星羅は、戸惑いの表情を見せ何か言いたげだったがすぐに首を横に振ると何でもないと告げる。



彼女は表情を少し曇らせたまま、俯き加減に歩みを進める。


何だかそれ以上は聞いてはならないような気がして、悠呂も黙って歩いた。




 無言のまま、二人は暫くその人がまばらな廊下を歩いていたが、いきなり星羅は道を外れ違う方向へ導いた。



「えっ? 」


と声を漏らす悠呂に、星羅は少し声を落として説明する。



「傷……手当てしなきゃ。 ここの先に医務室に続く廊下があるの」


と指をさした。




 このフロアはあまり被害がないのか、瓦礫も少なく塞がっているところもないようで、スムーズに目的地へ到着することができた。



「ここよ」


と立ち止まった扉のプレートには

「医務室2」と書かれてある。


 星羅は悠呂から体を離すと、扉の脇にあるパネルを操作して扉を開ける。


先に一人で入り、電気を点けた。


 悠呂は自分の足でゆっくり入り、中の様子を窺った。


そこは白を基調とし、医務室に相応しく清潔感のある部屋になっていた。


ここも被害は少ないようである。 整然と並ぶ白いベッドが二つ、医療器具もそのままになっていて綺麗に並べられ、いつでも軽い手術ならできそうだった。


奥にはガラス張りの手術室が設けられている。 ここで手術をしていたのだろうか?



 鉄物が触れ合う音がして、目をそちらに向けると壁に埋め込み型の戸棚があり、その前で引き出しを開けて星羅が治療器具を探していた。


ぼぅとその様子を見ていると、星羅がこちらに気付きはっとするといきなり頬を染め、悠呂のすぐ側にあるベッドを指差してそこに座っててと指示をする。


 悠呂は言われるままベッドに腰を掛け、自分はそんなに彼女を見つめてしまっていたのだろうか?と照れて頭を掻いた。



 一人、照れていると治療器具一式を揃えて星羅がやってきた。 近くにある椅子を引っ張り出してそこに座る。



悠呂を見ると、先より更に頬を赤らめ下を向きながら指示する。


「上の服……脱いで」


言われた悠呂もなんだか恥ずかしくなってモジモジし始めてしまった。


 そんな悠呂を知ってか知らずか、星羅も頬を赤らめたまま、手元に引き寄せた台に持ってきた治療器具一式を広げ、包帯やら消毒液やらの準備を手際良くし始める。



 悠呂はというと、顔を真っ赤にして脱ごうか脱ぐまいかと服を腹の位置で上げ下げし迷っていた。


それに見かねた星羅は、まだ脱いでいなかったのかと言った表情で母親がするように、えいっと脱がしてやった。


そのことがまた、恥ずかしくて悠呂は申し訳なさそうに



「すみません」


と言いながらまた頭を掻いた。



 肩の傷口はやはり、星羅のあてがったリボンでも間に合わず、今も傷口から脈打つように溢れてくる。


弾丸のない銃とは言え、改良され殺傷能力は遥かに高い。


まるきり素人の星羅には、消毒とこれ以上流れぬように止血にと腕に固く三角巾で縛るといった粗末な処置しか出来なかった。


「ありがとう」


と笑顔を向けてくる悠呂の顔色は、時間が経つにつれ悪くなっていく。

これ以上、自分ではどうすることも出来ない歯がゆさに星羅は、引きつった笑顔でそれに応えるしかなかった。



「もう少し、休んでいきましょう。 あなたも少し横になった方がいいわ」



 悠呂は星羅の提案に薄く笑みを見せ、頷くと深い溜め息ついて倒れ込むように横になった。


 星羅は治療器具を元に戻しながら、早くここから脱出し彼を病院に連れて行かねばと焦りを感じた。



かなり我慢しているのだろう、本当ならいつ意識を失ってもおかしくない状態ではないのだろうか?素人目でもそう感じる。


 チラと彼に視線を遣ると、天井をぼんやり眺めてベッドに仰向くその胸元は上下に激しく起伏している。時折、カチカチと歯を鳴らすのは寒気がしているのだろうか?


 もう少し寝かせて遣りたいが、ここでこうしていても治る筈もなく、ましてやここは今崩壊寸前。

下手をすれば、火の海に飲まれ二人とも命を落としてしまうーー



 星羅は一度、堅く目を閉じて大きく息を吐くと意を決し力強く目を開け


「そろそろ、行こうか……」


と促した。


悠呂も顔をこちらに向けて、薄く笑うと小さく頷いた。




大変お待たせいましました。第五十八章無事更新できました☆ かなり行き詰まっておりましたので、文章のまとまりの悪さがかなり気になります。早く完結をと気持ちだけは焦るのですが、どうにも上手くいかず読者様には大変ご迷惑をおかけしているんではないでしょうか……

ごめんなさい。頑張りますので、最後まで長い目でみてやっていただけると有り難いです。


長文になりましたが、次回をお楽しみ下さい。 By愁真

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