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僕達が生きる明日へ  作者: 愁真あさぎ
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第五十六章

大変、長らくお待たせ致しました。少し間が空きましたので乱文気味です。あと、少し長くなっております。ご注意下さい。

 薄闇の中、男は素早い指さばきでキーボードを叩き、ぶつぶつと呟いている。


その大画面には夥しい数字と文字が羅列し、物凄い早さで下にスクロールされていく。


部屋の中はしんとしていて、男が打つキーボードの音とコンピューター操作の解除を示す音だけが響いている。時折、不気味な笑い声を上げ口元を歪めた。


何かを打ち終え、Enterキーを押すと目の前の画面は文字の羅列から建物の見取り図に変わり、何枚か表れた。



「クックックッ……いいぞ〜これだぁ」



 男は出てきた見取り図を舐めるように眺めると、顎に手を置きながら上下ボタンを操作してスクロールする。


途中いくつかの見取り図で手を止め、画面をクリックして大きくしたり、戻したりして何かを思案しているようだ。


 あるひとつの見取り図を見つけ、完全に手を止めた。



「ここからにするか……」


不気味に笑んで独りごちると、顎に置いた手を下ろし姿勢を前に戻して再び素早い指さばきでキーボードを叩き始める。



画面はみるみるうちに数字と文字の羅列が埋め尽くし、それに加え見取り図達が姿を出しては消えを繰り返していく。



そして、見取り図の一つ一つに赤いマークがついていく。



「フッ…フフッ……フハッハッハッハッ」



笑いが止まらない。



「これで終わる……俺達のすべてが……あはっ…あはは…さぁ〜鎮魂歌だ! 存分に味わえ! 」



勢い良くEnterキーを押した。



 間を置かずに目の前の大画面は赤一色に染まり、中央にデカデカと

「DANGER」の文字が点滅する。



するとすぐにけたたましい警報音が鳴り、抑揚のない声が緊急アナウンスを告げる。



男は含み笑うと、すくりと立ち上がりその部屋を後にした。





 悠呂は後ろ、足下にある銃をどうやって我が手に取ろうか?村瀬の様子を伺いながら思案していた。


 ところが、体が飛び上がる程のじりりといった大音量が鳴り響いた。


「緊急警報、緊急警報 プランZが発令されました。 直ちに所内から退避して下さい」


「なっ…何? 緊急…警報? 」



 悠呂は突然の出来事に唖然としている。 勿論、目の前の村瀬も同様だが彼の反応は悠呂のものとは幾分違った。


「何っプランZだと!? 一体どういうことだ! 」


大声を上げた村瀬は、悠呂との対峙も忘れてすぐさま修造のデスクに向かう。


どうやら彼も知らぬことらしい。



「ひやああぁ……! 」


いきなりの奇声にそちらに目を遣れば、アスラビ・尾崎が狂ったように頭を掻き毟りその場に頭を抱えて突っ伏してしまった。


彼の傍には、いわれなき戒めから解放された星羅が苦しそうに咳き込みながら、倒れている。

苦しそうにしてはいるが彼女は無事らしい……。


悠呂は安堵し、小さい溜息をつくと足元の銃を拾い上げ腰元にねじ込み、彼女のもとを這うように近付いた。



「星羅、星羅? 大丈夫? 」


彼女の体をゆっくり起こしてやりながら、耳元で呼んでやる。


ぐったりしている彼女は悠呂の声に反応し、眉根を寄せて呻いた。


良かった、意識はあるらしい。


しかし、あのけたたましい警報音とアナウンスは今も続いている。彼女の体を支えながら、悠呂は天井を仰ぎ見た。



「私だ、これは一体どういうことだ? 」


警報音の中にあの低い声が混じる。デスクでどこかに連絡を入れる村瀬に目を遣る。


「何!? 良くわからんだと? 何をしているすぐに調べろ! 」


村瀬は怒鳴ると乱暴に通信機を切った。


しばらく、デスクに拳を打ちつけ肩を震わせていたが、すぐにこちらに顔を向けたので、悠呂はとっさに星羅を庇うように後ろ背に隠し身構た。




 村瀬は少し嘲笑ったように見えた。


何というか、してやられたと言った感じで自分を嘲笑ったように思える。


そしてあの険しい顔から一転して、覇気のなくなったような顔をして床のどこか一点を見ていた村瀬は何か意を決したように、眉根に力を入れると真っ直ぐに悠呂を見た。



悠呂は、身構える。

村瀬は真っ直ぐこちらに向かって来る。

腰元にねじ込んだ銃に手を置き、息を飲んだ。



ところが村瀬はそんな悠呂を無視し、さっきから突っ伏し訳の分からないことを呟いているアスラビ・尾崎に近づくと、憐れむような顔をしてじっと彼を見下ろした。



「……んっ、悠…呂? 」


後ろから声がする、振り向くとゆっくりだが星羅が体を起こしている。


慌てて、彼女を支えて声を掛けてやる。


「大丈夫? 」


「……うん、有難う」


そう応えた彼女は、じっとどこかを見つめる。その視線を辿ると、どこか壊れてしまったアスラビ・尾崎が村瀬に抱えられ車椅子に座らされている姿だった。



彼女はそんな父親の姿を見ながら、ボロボロと涙を零す。


悠呂も、何とも言えない気持ちになって唇を噛んだ。




 しかし、いたたまれない思いではあったが、先のアナウンスが気になり悠呂は気持ちを切り替えて、彼女を立ち上がらせようとした。


その途端、大きく床が揺れお互いバランスを崩し再び座り込んでしまった。



「なっ…なに!?」


何がどうなっているのか分からない星羅は、悠呂の腕にしっかり掴まりながら天井を見上げた。



「第九区、研究資料庫爆発まであと一分三十秒……」


あの抑揚のないアナウンスが非常な通告をする。


「ばっ爆発!? この研究所が爆発だって? 」


悠呂は背中に冷たいものを感じた。


その声にアスラビ・尾崎の世話をしていた村瀬は冷静な口調で悠呂の疑問を肯定した。



「…そうだ、ここはじきに火の海になる。 ふっ……ヒーローゴッコもここで終わりだな。 」



「あなたがやったの? 村瀬……」


星羅は震える声で問う。


村瀬はこちらを見たまま何も応えない。それを見かねて、悠呂が口を開く。


「星羅……村瀬さん達もこのことは知らなかったみたいだ」

星羅は小さくえっとこちらに振り向いた。



「その少年のいう通りです。 我々にも想定外の出来事です」



村瀬は、嘘偽りはないと言った瞳で真っ直ぐ星羅を見つめた。


その瞳を受けて、星羅は息を飲む。


「じゃあ、誰がこんなこと……」


村瀬は瞳を伏せ、首を横に振る。


 その時だった、大きな破裂音と共に下から突き上げてくる揺れを感じた。


悠呂達も村瀬もこの揺れに、バランスを崩しそうになる。



 どこかで何かが爆発したようだった。揺れが収まるのを待って村瀬は再びデスクへ向かい、どこかへ連絡を入れる。



「私だ、調べはついたか?……ふむ、ふむ、先程の揺れは? なるほどあそこか、わかった。 お前達はもういい、早くここから脱出しろ。 そうだ、どんな誤作動か知らんが自爆プログラムが作動した……わかっている。 それは全て私が引き受ける。 ああ、お前達は避難しろ」



ーー自爆プログラム? 悠呂は現実では有り得ない言葉を耳にして、目をみはった。




「あっ……あの」


悠呂はどういうことか尋ねようとして、声を掛けたがそれは村瀬の怒声でかき消された。



「何をしている!! 早くお前達もここから脱出しろ! 」


「えっ……? 」


村瀬の意外な言葉に悠呂は、唖然とした。



  再び、大きな揺れが一同を襲う。



「…おかしい、やけに爆発のタイミングが早い」


村瀬は揺られながら、宙を見据える。


しがみついてくる星羅を抱きとめながら悠呂は天井を仰いでいると、傍に人の気配がしてはっとそちらに目を向けた。



すると村瀬がこの揺れの中、険しい顔をしてこちらに手を差し延べていた。



正直にその手を掴むと、力強く引いて立たせてくれた。



「あっ、あのっ村瀬さん」


戸惑いながら声を掛けたが、再び村瀬の声に遮られた。



「いいか、良く聞け。 先程爆発したのはアナウンスにあったように恐らく第九区研究資料庫だ。 資料庫は地下三階にある。 ここは地下一階だ、まだ脱出するには十分時間はある。 自分で傷つけておいてなんだが……時間はあるが、その足だ十分間に合うとは思うが、何せこの自爆プログラムは想定外に作動している。 今度いつどこのフロアが爆発するのか我々もわからん。 それだけは肝に命じておけ! 」



「あっあの……」


村瀬は険しい表情から一変して、優しい顔になると悠呂の肩にぽんと手を置いて頷いた。



「お前は単身ここへ乗り込んで来た強者だ。 自信を持て! 」



そう言うと星羅に目を遣り


「お嬢様を頼んだぞ」


その一言を残して、村瀬はアスラビ・尾崎の車椅子を押して先に出て行ってしまった。


「村瀬! 」


星羅の呼び止める声も虚しく、二人はドアの向こうに消えてしまった。




開け放たれたドアの向こうから、研究員が逃げ惑う騒然とした声が聞こえてくるーー。



悠呂と星羅はお互い支えるように寄り添いながら、呆然とそのドアを見つめていた。



我が作品を読んで頂き、誠に有難うございます!

105日ぶりに更新です。いや〜なかなか、ストーリーが浮かんでこず、苦しみました笑 しかし、何でも中途半端だった自分を変えるべく、どんなに長くなろうと完結させようと意気込んでおります。


そんな作者ではありますが、気長に応援していただければと思います。


本当にあとがきまで読んで頂き有難うございます!

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