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僕達が生きる明日へ  作者: 愁真あさぎ
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第五十四章

 

ー禁止区域外ー


 星羅が中に入ってもう何時間か経っていた。


これからの突入や潜入員をどう動かすか、万一の場合の準備について悠呂の父、『浅乃木 比呂』は清と刑事の澤田、アゲイスと入念に打ち合わせをしていた。


怪我人の為の救急はどこに控えさせておくかと話しをしている時のこと、澤田は自分の顎髭を触り不気味に笑うと嗄れ声で質問をしてきた。


「小耳に挟んだんですがね……浅乃木さん、あんたのとこの下の(せがれ)が中に居るんだってねぇ〜?」


その質問に、その場が凍り付いた。しかし、澤田はしてやったりという顔をして、濁った目を浅乃木に向けている。



浅乃木はニヤニヤと不気味に笑う澤田を一瞥し、心の中で毒づいた。



(全く、あのタコ親父の人選センスのなさには呆れる。 よりによってコイツを寄越すとはな……)



澤田から視線を逸らし、まぁなと応え、話を先に進めようとすると尚も食い下がってくる。




「浅乃木さんも大変ですなぁ〜よりによって大事な倅がこんな事件に巻き込まれちゃってねぇ〜」



澤田の表情は面白がっているという風だった。 しかし、浅乃木は相手にせず話を進める。



その場の雰囲気も気にせず、澤田は更に続ける。


「あぁ〜! もし、手違いで浅乃木さんの大事な息子さんが……」


下手な芝居を打ってくる。


「澤田刑事!!」


寸出の所で助け船が出た。その主は清だった。彼はどうやらかなりご立腹だったらしい……。


「今は、その手違いが出ないようにと入念な打ち合わせをしているんでしょう! 無駄口は慎んで下さい!」


階級下のしかも部署違いの者に、窘められて澤田は不服そうに鼻を鳴らした。



 大体の打ち合わせを終え、ふと顔を上げると少し離れた土手に一人の少年の姿が目に入った。



澤田の濁った目と嫌味の応酬から逃れたいのもあって、浅乃木は清の肩を叩いた。


「何ですか? 先輩」


「清、悪いが後は頼む。 それとあのおっさんもやっつけといて」

と斜め後ろを親指で差した。


「へっ? 何言ってんすか! まだ、打ち合わせは終わってないんすよ? まぁ…あのおっさんはやっつけちゃいたいですけど……」


「じゃっ…任した! 頑張ってくれたまえ! スレッド・桐矢くん」


「あっ……先輩! 」


後を清に任せ、その場を離れた。




 青い髪の少年は、胡座をかいて手近にある草を落ち着かない様子で無造作に抜いては放りを繰り返していた。


向けられている視線の先は、禁止区域で何時間か前に星羅が消えた場所である。

 余程、気掛かりなのかこちらの事には全然気付いていない様子だ。


浅乃木は彼の真後ろに立ち、暫くずっと様子を見てみたが、気付く様子がないのでひとつ溜め息をつくと、彼の頭にぽんと手を置いた。


「!?」


そこでようやく浅乃木の存在を知り、不機嫌そうに頭の手を払う。


そのあまりにも彼らしい反応に噴き出しし、構わず彼の隣に腰を下ろした。


「んなっ!? 勝手に横に座んなよ! 」


憎まれ口を叩く少年をよそに、浅乃木は笑いながら胸元からタバコを出し、一本くわえると慣れた手つきで火を点けた。

胸一杯に煙を吸い込むと、ゆっくり紫煙を吐き出す。


「ふぅ〜、つれないねぇ。 そんなに嫌わないでよっ。 いっちゃん♪」


「いっちゃんて言うな! 」


お決まりの返答が返ってきて、尚も噴き出した。


「あんまりカッカッしてると、ハゲるぞ?」


「ハゲねぇよっ! そんな話聞いたことねぇ! 」


「いや〜ん。 冗談だってばん♪ いっちゃん」


「気持ちわりぃなっ! つか、いっちゃんて言うな! 」


「前から気になってたんだけど……漢字でいちと書くからいっちゃんなのか? 何ではーちゃんじゃないのよ?」


「知るかっ! うちの母ちゃんに聞けよっ! 」


「ん〜……面倒くせぇからいいや」


「だったら聞くなよ! おっさん!」


「んまっ! 今、お宅なんとおっしゃって? おっさんって言ったの? ひっど〜い! 悠ちゃんにも言われたことないのにっ」


と顔を覆い泣き真似をして見せる。


「だ〜! うぜぇ! あっち行けよ! まだ作戦会議の途中なんじゃねぇ〜のかよ! 」



「ん? あぁ〜お前の頼りになる従兄弟の兄ちゃんに任せてきた」



「任せてきたって……大丈夫なのかよ? あんたが指揮とってんじゃねぇのかよ? 」


嫌に真面目な顔で、質問してくるので浅乃木はちょっと拍子抜けした。


「……ぷっ」


「なっなんだよっ! 何笑ってんだよ! 」


とはじめは顔を赤らめた。


「いやいやっ……嫌に真面目な顔したから、つい……」



はじめは、憮然とする。



「まぁ〜そう、怒るな。 俺は指揮官じゃない、刑事が来た時点で権利は殆どあっちにある。 俺等は情報を提供するだけさ……」


浅乃木は、また煙草のフィルターを口に含むと息深く煙を吸い込んだ。


「……なんだよ、それ」


はじめは煙を空に向かって、吐き出す浅乃木の横顔を見て、納得いかないという顔をする。


「俺の所属してる部署は末端に近いからな〜、諜報活動が主だし……警部って言われてたってうちの部署内だけの効力に近い、刑事がいなけりゃ逮捕だってできないってな」


そう、言ってあっけらかんと笑う浅乃木に、はじめは少し苛立ちを覚えた。


「じゃ〜、おじさんは何で刑事にならなかったんだよ? 」


少し怒り気味の口調に、驚いて浅乃木は仏頂面したはじめに目を遣り、微笑むと……。



「教えてやんな〜い♪」とあかんべぇをした。


「なっ……。 あぁっ! くそっ! ムカつく! 」



よほどあかんべぇが効いたのか、顔を真っ赤にしてそっぽを向いてしまった。



そんなはじめの姿に優しく目を遣り、再び紫煙をくゆらせた。



 そんな時だった。浅乃木の右腕からけたたましい音が鳴り響いた。


その騒がしい音に、そっぽを向いていたはじめが、慌てたようにこちらを向く。

浅乃木は、半分以上灰になった煙草を砂利で押し消し、受信ボタンを押した。



 モニター画面に現れたのは何年か中へ潜入させておいた、少し体付きの良い潜入員だった。


どうやら何か掴んだらしいと、その潜入員の表情から窺える。


「お疲れさん」


浅乃木は画面の中の潜入員に労いの言葉を掛けてやる。


「お疲れ様です」


画面の中の潜入員は固い表情で返す。


浅乃木もその表情に身を引き締め、対応する。



「…何か動きがあったのか? 」


浅乃木の固い口調に傍にいたはじめも緊張が高まる。


画面の中の潜入員ははい、と歯切れの良い返事をすると内容を話し始めた。



「浅乃木警部のお子さんの行方ですが……秘密裏に調査させたところ、どうやらこちらに潜入しているのは確かなようです」



その内容に浅乃木は眉根を寄せ、口に手を当てた。



会話を傍で聞いていたはじめは、いてもたってもいられず強引に浅乃木の右腕を掴むと、画面の中の潜入員に噛み付く勢いで質問した。



「それで? 悠呂は? 悠呂は無事なのかよっ! 」



いきなり現れた少年の姿に、画面の中の潜入員は目を丸くする。



「あっ…浅乃木警部、この少年は? 」



画面にかじりつく、はじめから自分の右腕を奪い返した浅乃木は、ちらりとはじめを見て……。


「あぁ……気にするな。 息子の幼なじみだ」



そう画面の中の潜入員に告げるとはじめの頭に手を置き、優しい口調で語りかける。


「はじめ……心配してくれて有難うな。 だか、少し大人しくしていてくれるか? ここで一緒に話を聞く分には構わないから」



浅乃木のその言葉に、はじめは自分のしたことの恥ずかしさを知り、赤面して頭の上にある手を払っいのけた。




 潜入員の話によると、悠呂は何らかの形で研究所の深部に行ったようだ。


画面の中の潜入員は渋い顔をして、今知る悠呂の情報を伝える。


「自ら行ったのか、連れられて行ったのかは不明なんですが……」


「……そうか」


浅乃木は無精髭を触りながら、この状況下なのに何故か、息子の突拍子もない行動に心躍らされている自分がいることに驚いた。



「それで、娘の行方は?」


との質問に潜入員は、ひとつ頷いて……。


「恐らく、ホシに接近したかと思われます」


「そうか、わかった。 ご苦労、引き続き頼む。 作戦は以前教えたのと変わらずだ」


「了解しました」



失礼しますとの声で通信は切れた。



隣で心配そうに、何も映らない画面を見たままのはじめにヘッドロックをすると、浅乃木は彼の髪をクシャクシャと触りながらーー


「大丈夫! あとは、おっさん達に任せろ! 」


と元気よく声を掛け、はじめをヘッドロックから解放してやる。頭をクシャクシャにされて、憮然としているはじめに笑顔で応え、じゃあなと言うと踵を返し、清達の元へと歩きだした。


え〜と、かなり考えに考えて書き上げました♪ 悠呂父やはじめくんファンの方には嬉しい章です♪

完結はあと5話ほどに延びるかと思いますが、最後までお付き合いいただければと思います♪


次回をお楽しみに……

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