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僕達が生きる明日へ  作者: 愁真あさぎ
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第四十八章

この章も少し、長めです。読みづらいかと思われますがご了承下さいm(_ _)m

 悠呂は、目の前の人物に気を張りながらついて歩く。

静かな周りは、二人の歩く靴音が響くだけ。 相手は歩調を緩めず自分のペースでグングン歩いていく。背丈の違う悠呂は、それを小走りに追う形で相手の背中を睨みつけながらついていく。 すると相手が急に立ち止まり、壁に向かって何やら右腕を掲げ操作している。何だろうと悠呂も歩みを止め、相手の様子を見ていた。暫くして、急にその壁がバシッと音を立てた。次に電気が帯びたように光るとエアーが抜けるような音を出し壁がゆっくり、左右に開いた。


「!?」

悠呂が驚いていると、相手は再びこちらにチラリと目をやりフッと笑う。


「さぁ〜どうぞ、こちらが近道になります」

と相手は悠呂を中に促す。

罠かもしれないと警戒した悠呂は彼を睨みつけながら


「あなたから、先に入って下さい」


と銃を向け先に入る事を拒否した。相手はヤレヤレと言った感じで両手を上げ、溜め息を零すと

「では、お先に」

と先に入った。それを見届けた悠呂は、警戒しながらゆっくり彼の後に続き、中に入る。


 中に入ると景色が一遍していた。先程の全体真っ白な空間から少し落ち着いた色合いに、廊下は冷たい鉄板からフカフカの渋みのある朱色の絨毯が敷いてある。壁や天井にはシックなベージュ色の壁紙。


その雰囲気に、驚いて首を巡らしていると後ろでエアー音を出し、先程入ってきた壁が自動的に閉じていく。

そちらに気を取られていると、後ろから

「こちらだ」

とその人物は歩き出した。悠呂は、先程の壁に一瞥すると慌ててその後を追った。


 長い廊下を歩きながら、悠呂は壁や飾り棚等に目をやる。3D絵画やら、古代風タペストリー古い花瓶など、悠呂の目には珍しい骨董品ばかりだった。


その中の3D絵画の一つを見つけて、悠呂はおもむろに足を止めた。


その絵には小さな女の子が花冠を頭に乗せ、幸せそうに微笑む姿があった。


真正面から見ると写真のようで、左右に動いて見てみると、ちゃんと横から見た絵になっている。


ゆっくり真正面に戻って、その絵の中の女の子を見つめた。

幼いが、これは星羅なのだろう。頭のてっぺんから少しずつ色が抜けて白銀色になっている。

絵の中の彼女は幸せそうに微笑んでいる……今は一度も笑わない彼女の面影がチラついた。

そして、すぐに涙に濡れた彼女の顔が浮かび、忘れていた怒りが込み上げてきた。堪らず拳を硬く握る。

そこへ横から低い声がした。


「これは、星羅お嬢様が三歳の頃の絵だ……」


はっと隣に目をやるとその人物は愛おしいそうな眼差しで、その絵を見ている。悠呂は何も言わず、再び絵に顔を戻した。


「彼女はよく、邸を抜け出す癖がありましてね……」


いきなり隣の彼はそう切り出した。悠呂は目だけを彼にじっと向けた。その彼も目だけを悠呂に向けたまま、話を続ける。

「つい先頃、そのお嬢様の行方が知れなくなった……私の部下によると、ある少年に攫らわれたと報告を受けた」


そう淡々と話しながら彼はじっと悠呂を見下ろしている。悠呂も無言でじっと睨み返す。

 彼は暫く口を噤み、悠呂を見ていたがすぐに背を向け歩き出した。悠呂も何も言わず後をついて行く。

歩いて暫くすると再び、低い声で話し出した。

「そのお嬢様が、先程ここへ帰ってこられた」


「えっ?」

悠呂は思わず声を出してしまった。

その声に相手は、やはりと言った視線を背中越しに向けてくる。その視線に悠呂は眉を寄せ睨み返し、無言で歩く。

目の前の彼は、悠呂から視線を逸らすと、歩くのを止めた。すっと悠呂は身構えたが、襲いかかってくるようすはなく彼の先に目をやると一つの扉の前に立っていた。

 目の前の人物は扉の横に設置されているタッチパネルの呼び出しボタンを押した。 ブーとブザー音がなる。


(……するとここが)

と悠呂が扉を見つめていると、タッチパネルモニターのスピーカーから老齢の嗄れた声で応答があった。それに目の前の彼は、チラッと一度こちらを見てタッチパネルに顔を近づける、会いたい旨を伝えると、余程この彼を信用しているのか、中の相手は容易く部屋のロックを解除した。

目の前の扉がエアー音を鳴らし、静かに開いていく。 悠呂は鼓動が早くなった。もうすぐ目当ての人物と接触をする。手が汗ばんでくるのが分かった。


 先に目の前の人物が一歩中に入り、こちらに体を向けると

「入れ」

と目だけで合図をしてきた。

悠呂は喉元をゴクリと鳴らし、右手を少し動かした。カチャリという音を聞いて手に持っていた銃に目をやった。その銃を暫く見つめて、静かにズボンの腰にねじ込むと、ひとつ息を吐いて中に進む。


 中は大きな窓があるようだが、分厚いカーテンで閉め切ってあり、少し薄暗く先程出てきた研究所の様な薬品の匂いが微かにする。


目の前には、年季の入った書斎机がドンとあり、良くは見えないが机の上に写真立てが置いてあった。机の側に背の高いスタンドランプがついている。明かりはそれひとつだった。

一通り、首を巡らし警備兵の彼の目の前に立つと悠呂は顔を見上げた。彼は、その視線を受けると顎であそこだと示した。示された場所に目をやると、書斎机の横にもう一つ開け放したままの扉が見えた。そこから、微かなもうひとつの光りが漏れており、人の影が渋い色の絨毯に映っている。


「修造」


と呼ばわり、横にいた警備兵の彼はその扉の中へ消えていった。


何事か話しているのだろう、絨毯に映る影が二つ動いている。


すると、すぐに一人の老人が車椅子で現れた。その後ろには先程の警備兵の彼も付き添っている。



 悠呂は目を見張った。あの国立図書館の書物の中で見た人物が目の前にいる。 そして、その写真の中よりえらく年老いている事にびっくりした。


今にも倒れてしまいそうな意気消沈しきった表情、顔色は悪く土気色でまるで死人のようだった。


(これが……アスラビ・尾崎・修造ーーー)



 尾崎は入り口近くで茫然と立つ少年に目を細め認めると、傍らに立つ警備兵の彼に

「なんだ、あいつは?」

と声を掛けた。


警備兵の彼は落ち着いた様子で応える。

「修造に話があるそうだ」

とこちらを見た。


「何? 私に話だと?」


と怪訝そうに尾崎は彼に聞き返した。

彼は静かに

「はい」

と応えた。


すると尾崎は、再びこちらに目を向けた。


続けて投稿となりました。このシーンは構想を書いてても早く読者様の目に入って欲しい〜と思っておりました。それで頑張って書き込み致た次第です♪完結に向けて日々、苦戦しておりましが何卒応援のほどよろしくお願いします♪感想、ご意見は随時承っております♪

次回も楽しみにしていて下さい。

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