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僕達が生きる明日へ  作者: 愁真あさぎ
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第四十七章

少し、いつもより長めになっております。ご了承下さい。

 はじめ達に見送られた星羅は正門に着いた。

その場所には、先程悠呂の父親と話をしていた年若い警備兵と体格の良い警備兵、二人が立っていた。

「もう、準備はよろしいですか?」


そう柔らかい声で年若い警備兵が聞いてきた。星羅は真正面を向いたまま、ゆっくり頷くと今度は体格の良い警備兵がハキハキした声で補足ですがと話始めた。

「予め、あなたが帰って来たことは中にふれて回っています。中に入りましたらいつものあなたでいらして下さい」


と軽く説明を加えた。星羅はその説明に同意するように強く頷いた。

それを見た体格の良い警備兵は、星羅に背を向け少し前に出ると右手にはめた何かを操作する。すると、軋む様な音をたてゆっくり門が開いていく。


開いていく門にじっと目をやりながら星羅は大きく深呼吸した。

 正門が開ききると体格の良い警備兵はこちらに向き直り、右手を揃え額近くに持っていき、敬礼をした。その横でも年若い警備兵が敬礼をし、あの柔らかい声で

「お気をつけて」

と見送ってくれた。

 二人に見送られ、しっかりした足取りで星羅は中に入る。


何もない原っぱ、一見、空き地の様に見えるこの場所……。

その中程まで歩いて、立ち止まる。星羅は足元に目をやると、軽く地面から振動が伝う。





 禁止区域の中に入って行く星羅をはじめはフェンスから少し離れた、小高い土手から見守っていた。

どう見てもただの空き地に見えるその場所に、研究所が存在するのが信じ難く、どうやって中に入っていくのか興味津々だった。

すると、彼女の立っている足元からゆっくり現れた鉄扉に驚愕した。

「なっ……なんだありゃ!?」


一人驚きの声を上げていると、後ろに何台かの車が止まった。何だろうとはじめが振り向くと、丁度一台の車から二人の男が降りてきた。

一人は、清潔感漂うピシッとした淡い色のスーツを着て若く、いかにも助手といった感じの男、もう一人の男は、悠呂の父親と同年代か少し下位の年格好で、髪が伸び放題のボサボサ、髭も何日も剃っていないような無精髭、何となくダルそうな猫背の男だった。

(うぇっ……なんだあいつ等)


はじめが見ていると、猫背の男のドロリとした目と合ってしまった。


(うわっ……あの、気持ち悪りいおっさんの目と合っちゃったよ……)


その男二人組は、真っ直ぐこちらに向かって来た。


(うわうわっ! こっち来るんじゃねぇ〜)


しかし、その二人組ははじめではなく、悠呂の父親の後ろに立った。

(……なんだ?)

しかし、悠呂の父親は顎に手を当てたまま何か考えごとをしているようで、その二人に気づいていないようだった。

横に立っていた清がようやく気づき、二人に声を掛けた。


「あっ……これは、ご苦労様です。澤田刑事、アゲイス刑事……先輩、刑事方が来られましたよ。」

そう清に言われて、ようやく後ろに振り向いた。

「おう……ご苦労様。」

悠呂の父親が声を掛けると、猫背の男はニヤリと笑って


「偉くご無沙汰してましたねぇ……浅之木警部。」

とガラガラの嗄れた声で挨拶した。

「まぁな……。 早速本題に入らせて貰う。」


と悠呂の父親が言うとその二人は、顔付きを変え話を聞く態勢に入った。


はじめはそのボソボソと話しているのを背中越しに聞きながら、星羅があの鉄扉に入って行くのを見守った。

 



 星羅がその鉄扉に入り、坂になっているスロープの道を下ると人だかりが出来ていた。


星羅の姿が見えるなり、その人だかりは口々に

「お嬢様、お嬢様」

と出迎えくれる。それに有難うと答えながらスロープの坂を下りきると、鉄扉は自動的に閉まり、平坦な道にゆっくり戻る。

いつも出迎えくれるアジュラーチ村瀬の姿がないのに気付いた星羅はその人だかりの中、首を巡らし探してみた。

どこに目をやっても見あたらず、すぐ傍にいた研究員に聞いてみる。


「村瀬が見えないけど……」


すると聞かれた研究員も辺りを見て


「そう言えば……見当たりませんね。どうしたんでしょう」

と首を傾げた。嫌な予感がする。星羅は人だかりを突き進んで奥に行こうとした時、一人の研究員に肩を掴まれた。振り向くと、眼鏡をかけたちょっと小太りな研究員だった。

「……? あなたは?」

と聞くとその研究員は慌てた様子で、星羅の肩から手を離しすみませんと頭を掻いた。

「第三研究室、オロダ・高城の元で助手をしているロッヂ 武田という者です」

と頭を下げると、すぐに顔を上げ先を続ける。


「隊長は、少し用事がありまして外しております」


「?」

何か胸騒ぎがする。星羅はそう感じたがそれを悟られぬように平静を装い

「そう」

と応え奥に進もうとすると再び、ロッヂ武田の

「お待ち下さい」と声が掛かった。

「どうして? 私はお父様に……」


と言うとその研究員が星羅に失礼と耳元に寄り他に聞こえぬような声でこう話した。


「……実は、侵入者が入った可能性があります。今、それを隊長が調べておいでです。ですので、お嬢様は安全の為こちらに……あっ!」


『侵入者』と聞いて星羅はすぐに悠呂だと悟った。ロッヂ武田の話を最後まで聞かずその場を飛び出し走った。


(何とか、悠呂くんと会わなきゃ……)

そう思っていると、不意に清の声が蘇ってきた。


『そうなると、悠呂くんはアスラビ・尾崎 修造と接触を試みる筈ですね』


それに気付いた星羅は

「お父様……! お父様は?」


と声を漏らすと、こちらに向かってゆったり歩いてくる研究員に飛びつき


「お父様は? 今日はどちらに?」


その星羅の形相に少し、驚きながらその研究員は

「おいでですよ」

と告げると、星羅は有難うと言葉を残し父親の自室へと急いだ。




 その途中、第五研究所の前を通り扉が開け放したままになっているのに気づき足を止めた。


後ろから追いかけてきたロッヂ武田は肩で息をしながら


「お嬢様……ここです。侵入者がいた場所……」


と吐息紛れに話す。星羅は、しばらく扉を見つめると迷わず中に入った。


「おっ……お嬢様! まだ中に侵入者がいるかもしれません! 危険ですお止め下さい!」と止めるのも無視して部屋の中に入ると電気を点けた。

部屋の中は資料や本が散乱している、これはいつもの通りだと星羅は気にせず床や柱にしきりに目を凝らす。


村瀬と争ったかもしれないーーー


血痕などはないかドキドキしながら探す。もし怪我などしていたら……そう思うと胸が痛んだ。


必死に床や柱を見ながら奥に入り、ひとつの場所で立ち止まった。

その床からゆっくり視線を上げ、星羅は小刻みに震える……。

「……悠呂くん、これを見たんだ」


そう呟くと、目の前に怪しく緑色に光る蛍光色の試験管群を見て涙を流した。


今回は、間隔が少ししか開いておりません♪頑張って書きました。一応、完結は50章と思っておりましたがなんせ纏めるのが苦手な愁真です…恐らくプラス5辺りで完結させることになりそうです。それまでお付き合い下さい!完結の暁には評価などしていただけると凄く嬉しいです。長くなりましたが……次回をお楽しみに

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