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僕達が生きる明日へ  作者: 愁真あさぎ
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第四十六章

 悠呂は銃を手に、警備兵隊長だろうその暗闇の中の人物と対峙していた。



 数分前、自分が大声を出していた事に気付きその場をいち早く後にしようと研究室出口に向った。

しかし扉に近づいたその体は、近付くのを止めた。

微かな衣擦れの音がしたのだ。何者かが外にいる……そんな嫌な感じがしたので悠呂は出口から静かに離れると、なるべく音を立てないように奥へ引き返し何処か隠れる場所はないかと辺りを見回した。するとあの試験管群の横に扉を見つけ、すかさず中に入り、暗闇の中を手探りで身を潜める物はないかと探す。

そうしている内に、エアーが抜けるような音が外から聞こえてきた。

何者かが研究室に入ってきたのだ。悠呂の背中に冷たいものが走る。とりあえず、何かの棚らしき物の陰に身を隠すと膝に顔を埋め、この場が無事にやり過ごせるように祈った。

 しばらく何も音がしなかったので悠呂はそっと膝から顔を上げ扉がある方に顔を向ける。

(何もないから、諦めたのかな……)


悠呂はその陰から四つん這いに、扉の方へ移動しようとして再び体を硬直させた。

……床についた手から判る。人が歩く振動。

悠呂は、四つん這いを解き再び元の位置に戻ると膝を抱えた。

どうか、ここには入ってこないで……そう祈るしかなかった。


外から聞こえる。この扉のある場所へ進んでくる足音。向こうも警戒しながら慎重にこちらに向かってくる音がする。悠呂の鼓動は息苦しい程にドコドコと音を立てている。

扉の外で相手の足が止まった。もう息ができないほど、鼓動は跳ね上がる。そこへ


「たっ隊長! 大変です!」


と誰かの呼ぶ声がした。


(隊長?じゃあ……今、この扉の近くにいる人は……警備兵隊長さん?)

話の内容を聞こうと悠呂は、耳を澄ましてみたがそれ以外は、ごにょごにょと会話を交わすだろう声が聞こえるだけで、内容は聞き取れないでいた。


もしかして……と悠呂は思う。あの倉庫の中に居た時の騒動と何か関係があるのだろうか?

すぐに会話は止み、足音が遠ざかろうとしているのに悠呂は胸を撫で下ろした。

(ふぅ……やり過ごせたかな。暫くあの人達の気配がなくなるまでここにいよう)


そう思い、天井を見上げた時だった……傍近くでエアーが抜ける音がした。

「えっ?」


自分の声が掠れて聞こえた。

その警備兵隊長だろう人物がここへ入ってきたのだ。


(どっどうして!? ここを出て行ったんじゃ……)


とっさに棚に背を押しつけ、息を殺した。目の前を黒い人影が通る。


「!」


閉まりかけた扉の僅かな光で、相手の持つ何かが見えた。

(……武器!?)


悠呂はこれはまずいと思った。あの武器を何とかしなければと……。

何かないかと辺りを手で探る。


指先に何かが触れた。その物に目をやると棚から落ちたのだろうか? 分厚い本があった。

迷わず分厚い本を手にすると、相手に投げつけた。すると運良くその一冊が武器を持つ手の甲に当たり、暗いこの部屋にガチャリと鈍い音を響かせた。


(今の内に外へ!)

悠呂は棚の陰から飛び出そうと足を踏み出したが、一歩先にいるその人物は慌てた様子もなく落ちた武器を拾おうと屈んだ。

「!?」

慌てた悠呂は、相手が拾うより先に足で武器を蹴飛ばし、その武器を手にした。

手にして改めてその物が何かを知り、悠呂はドキリとした。手にずっしり重く、引き金のようなものがあるその手触り。

(じゅっ……銃?)

自然と喉がゴクリと鳴った。それに驚いていると、声が掛かった。


「何者だ?」

凄みのある、落ち着いた低い声……。

その声に悠呂は少し体を硬直させたが、暗闇の中のその人物を見据えた。勿論、応えるつもりはさらさらない。

ゆっくり悠呂はその人物の後ろに廻る。

相手は自分が見えていないのか、目で追おうとしない。

そのずっしり重い手の中の物を相手の背中に突きつけた。 相手が一瞬体を強張らせたのが分かる。

しかし、すぐにカチカチと鉄が鳴る音がする。悠呂はなんの音だと手元を見ると、自分の手が小刻みに震えていた。慌ててあいた手で震えを抑えたが、多分この震えは相手に伝わっただろう。

悠呂はなるべくはっきり、低く調子の声で言い放つ。

「そんな事はどうでもいいんだ。あなた、アスラビ・尾崎 修造の居場所、知ってるんでしょ?」

しかし、相手は正面を向いたまま応えようとはしない。

悠呂は構わず続けた。

「連れてってもらうよ。さぁ! ここから出ろ!」

なるべく語気荒く言い放ち銃でその人物をつついた。

相手は何も言わず従い、研究室に出る。悠呂もその人物に銃を突きつけたまま、ついていく形で一緒に出た。


 研究室に出て、初めてその人物が見えた。あの試験管の中の発光する液体でうっすら照らされたその相手。


自分より頭一つ分背が高く、がっしりした体、髪が綺麗な緑色、チラリと窺い見るその顔は体格から想像も出来なかったが、かなり年を重ねている人物だった。

相手は、何も言わずそのまま歩みを進め、第五研究室を出る。悠呂も警戒しながら出た。

 廊下に出てびっくりしたのだが、悠呂はてっきり外にも誰かいて、もしかしたらこの銃を使わなければいけないかもしれないと覚悟していたのだ。しかし、廊下には誰もおらず物音すらしない。

何だか奇妙だと首を巡らしながら、廊下を歩き研究室が見えなくなる角を曲がり、暫くすると前を歩くその人物が顔をこちらに向けた。

悠呂は身構えた。


「ふっ……随分、幼い侵入者だな。」


そう鼻で笑う。 それに少しムッとした悠呂だが何も言わなかった。

相手は正面に向き直り、歩みを進めながら尚も話しかけてくる。


「そんな坊やが、所長になんの用だね?」


無論、応える気はない。黙って彼の後を歩く。その人物はまた、チラリとこちらを窺い見たが再びふっと笑って前を向き歩く。


「まぁ〜いいさ、連れて行ってやる。所長のところへな。」

何か含みのある声でそういうと歩みを速めた。

(´∀`;)大変お待たせ致しました♪

かなり間があいてしまいましたが、やっと更新できました笑

主婦業の傍らの執筆で……(罪悪感)

(・ω・;)うっ嘘です。確かに主婦業のやることをやってから執筆をしようとしたのですが、そのっ意欲を削がれてしまいましてね(言い訳モード)それで、気が付いたらですね、またゲームのコントローラーを握って逃避してたんですねぇ〜人間ってほんっと不思議ですねぇ(水野晴郎風)

(;口;)ごめんな〜ざい!頑張るから見捨てないでぇ泣

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