表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕達が生きる明日へ  作者: 愁真あさぎ
46/64

第四十五章

ー数時間前ー


 悠呂の父、清、星羅そして一応おまけではじめ達は中に入ってからの作戦を考えていた。そこで不意に疑問に思った清がそのまま疑問をぶつけてみる。


「……ちょっと疑問に思ったんだけど……悠呂くんは何故ここへ?」


その質問にはじめの顔が曇る。清ははじめの表情を見て聞く。

「はじめ、何か知ってるのか?」

と顔を向けると、それには悠呂の父も耳を傾ける。しかしはじめは、眉根を寄せて

「知らねぇよ!」と吐き捨て俯いた。そんなはじめを星羅は黙って見つめ、そして静かに口を開いた。


「……多分、私のせいです。」


そう言った星羅に視線が集まる。


「それは……どういう意味かな?」


と清は丁寧に聞き返すと、星羅は少し口ごもったが何か決心したように一度唇をキュッと結ぶと堰を切ったように語り出した。


「……信じてもらえないかもしれないけど私は……そのっ……クローンなんです…」


「えっ?」


「うぇっ?」

驚きの声を上げたのは清とはじめ、殆ど同時だった。


「そっそれで……恥ずかしい話なんですけど……私、今朝方悠呂くんにこの話をそのっ……泣きながら話したんです。その時は彼、普通だったんですけどもしかしたらそれが原因で……」


そう話す星羅に驚きもせず、悠呂の父は空を見上げながら煙を吹かした。


「おじさん! なんでおじさんは驚かねーの?」はじめが聞くと、悠呂の父親は何も言わず携帯灰皿に灰を落とすと再び煙草をくわえ


「そう言えば……」

と思い出したようにポツリ呟いた。


「今朝、あいつが変な事を聞いてきたな……」


「えっ? それで何を悠呂くんは聞いてきたんです?」

と清が先を促した。

悠呂の父親は、煙を空に向かって一度吐きそのまま見上げたまま話し出す。


「この世に人のクローンは存在すると思うか? とな……何故そんな話をしだしたのかそん時は良く解らなかったんだが……そんな事があったのか」


そう話を聞いて清は顎に手を当て考え込んだ。 その横ではじめは先程かわされた質問を再度ぶつけてみる。


「おじさん……話逸らすなよ。俺の質問に応えろよ」


「そっそうです! あのっなんで驚かれなかったんですか?」

と星羅も悠呂の父親に聞いた。

悠呂の父親は、ずっと空を見上げていた視線をこちらに向けた。

はじめは顔をしかめて悠呂の父親を睨むと


「おじさん……もしかして、全て知ってたのかよ?」


と聞くと、悠呂の父親は煙草を携帯灰皿にねじ入れながら


「知っていたさ」

と目を伏せた。 その態度にはじめは頭に血が昇り勢い良く立ち上がると


「もしかして……こうなる事も初めっから知ってたんじゃねぇのか!」


と食ってかかりそうな勢いのはじめを遮る様に清が口を開いた。


「そうなると、悠呂くんはアスラビ・尾崎 修造本人に接触を試みる筈ですね」

と逸れた内容を訂正するように清は話す。

「……兄ちゃん!」

と言いかけたはじめを清は目で黙らせた。それに不満そうにはじめは鼻をフン!と鳴らすとドカリと座る。


その様子を無視するかのように清は話を続ける。



「潜入後は、恐らくアスラビ・尾崎の自室に向かう筈……星羅さん、この時間帯は彼は今どこにいるだろう?」


と清が質問すると星羅は口元に手を添えてしばらく考え込むと、多分と付け足して


「この時間帯なら、研究所のお父様の部屋にいる筈です」


と答える。再び清は難しい顔をして顎に手をあて

「なるほど」

と頷いた。そこへ悠呂の父親が口を挟んだ。


「それは確実なのか? そこにいるという保証はあるか?」

と星羅に聞くと更に横からはじめが口を出した。


「そうだ。 お前を攫らわれちまってまだ動転しててあちこち中を動き回ってるかもしれねえじゃん」


「それは……ないと思う。 お父様は足が不自由だから」


と星羅は答えた。

「ふむ……確かに……。」


そう言うと悠呂の父親は正門前に立つ先程の体躯の良い警備兵を手招きして、何やら話すと再びこちらに戻ってきた。



「中で騒ぎを起こしてもらっていたが、アスラビ・尾崎は自室を出た様子がないそうだ。」


と悠呂の父親は言う。


「じゃあ?」


と清が聞くと悠呂の父親は頷いた。



「後は中を自由に動ける星羅ちゃんに頑張ってもらうしかない」


そう言って悠呂の父親は、星羅を見ると清達も彼女に視線を向けた。 皆の視線を受けた星羅だったがその表情は浮かない。


その様子にはじめが首を傾げると、彼女は俯き震える声で質問をしてきた。


「もし、悠呂くんを助け出した後……お父様……父はどうなるんですか?」


その質問に一同は口を噤んだ。 しかし悠呂の父親はだけは違った。その質問に淡々と答える。


「中に居る潜入隊に確保させ、刑事課に引き渡す……それから」


「先輩!」


淡々とその先を続けようとする悠呂の父親にたまりかねて清が止める。


悠呂の父親は清に鋭い眼光を向け、低い声で話す。


「何だ?」


その気迫に負けず清は応える。


「それは、あまりにも酷です。今話さなくったって……。」


「何がいけない。彼女が知りたがっていたから応えただけだ。 それに彼女は家族だ知る権利はある」


「だからって! これから潜入させようと言う時に、彼女の心を乱すような事をしなくたって!」




 激しい口論をする二人を見ていたはじめは、その口論の発端となってしまった星羅に目を移す。


彼女はこの口論を聞いてか、それとも先程の話の内容でなのか俯いて小刻みに震えていた。

幸い長い彼女の髪が上手い具合に表情を隠し、どんな表情をしているのかはじめの見る角度では良く分からなかった。


「だっ、大丈夫か?……何て言っていいか……そのっ」


声を掛けてみたもののどう言えばいいのかわからず先が続かない。 そんなアタフタしているはじめに星羅は俯いたまま

「大丈夫」

と応えた。


しかし、どう見ても全然大丈夫なように見えないはじめは続ける。


「なんなら俺が代わりに……」

と言いかけると星羅は顔を上げ、何か決心したかのような強い面構えではじめを見て。


「大丈夫。ここは私に任せて欲しい。」

そう言って、星羅は無理にでも笑顔を見せた。





 とりあえず作戦として、星羅は正面から潜入、中を自由に動ける彼女に悠呂の居場所を突き止めてもらい、彼女と一緒に研究所の外へ刑事課の到着時を見計らい、潜入隊に修造を確保してもらう、そして刑事課に引き渡すと言った作戦が纏まった。


最後に悠呂の父親は付け加える。


「作戦というのは、スムーズにいけば万々歳だがそう簡単にいかない事もある。時と場合によっては、二転三転する事もある。もしもの時の事もそれぞれ考えておけよ」


その言葉に一同は頷いた。


「それじゃ……行こうか?」


と悠呂の父親は星羅の肩にポンと手を置いた。


「……大丈夫か?」

そう悠呂の父親が聞いてやると、星羅の表情は堅いが強く頷く。

 

「じゃあ……行ってきます」


そう言うと星羅は正門に向かって歩き出した。その後ろ姿をはじめ達三人は見送った。

お待たせいたしました♪第四十五章!いやぁ〜頑張りました! 後何話かで完結させたいのでなるべく内容を纏めるように練っておりますが、出だしが失敗してますのでなかなか難しい。しかし、私も頑張りますので応援の方よろしくお願いしますm(_ _)m

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ