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僕達が生きる明日へ  作者: 愁真あさぎ
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第四十一章

 星羅がある少年に連れ去られてしまって以来、私(修造)は自宅に戻らず研究所に詰めていた。しかし、研究に手がつく筈もなく自室でただただ廃人の様に机上に飾ってある娘の写真を瞳に映していた。

何時間かに一回、研究員が食事を持って来たり、研究内容の指示を仰ぎに来たりしていたが、私はそれにも一切応えずにいると、次第に出入りする数も減っていった。

 そんな中、静かに部屋に入って来る者がいた。

また研究員だろうと見向きもしなかったのだが、私の姿を見るなり大きな溜め息をつき、聞き慣れた靴音を鳴らしながら傍に歩いてくる。


「何時間…いやっ何日そうしているつもりだ…修造。」

若い頃と変わらぬ低い声で問いかけながらいつもの様に後ろに立つ。

私はゆっくり後ろを振り向いた。そこには自分と同じように歳を重ねた老齢な顔、しかし私を見る彼の瞳は昔のままで真っ直ぐこちらを見て離さない。私は初めて会った時から彼の力強く、正義感に満ち溢れたこのが苦手だった…何か自分が責められているような…。

彼から視線を逸らし、真正面に向き直ると机の引き出しから葉巻を取り出して、火を点けた。

煙りがゆったりと周りを包む

そうするといつも黙って彼は灰皿を差し出してくれる。そんな彼の気遣いが、なんだか安堵する。ひと吸いしてからその灰皿に灰を落としてやる。

「村瀬……覚えているか?」

そんな切り出して私は話し始める。




あれは確か、まだ名の通った病院の研究チームに在籍していた頃、総合研究長から呼び出しを受け、研究長室に行った時だった。当時、すでにその課のチーム長を就任していた私に研究長は言った。


「アスラビ・尾崎君、君のチームの研究がなかなか良いと聞くよ。」

「はいっ…ありがとうございます。」

「ふむ。ところで君は何故私に呼び出されたのか分かっていないだろう…。」


「……はい。」


「ふむ。今の研究…はどう言った物か君には理解できているかね?」


「……はい。」


「ふむ……では、話そう。今の研究が成功すれば、君にその課の研究長の座を譲ろうと思う。」


「えっ!?…あのっ本当ですか?」


「あぁ…頑張りたまえ。」


その言葉に興奮したが、次の言葉でその気持ちは一瞬にして凍りついた。

総合研究長は顔の前で手を組み、鋭い眼孔でこう言い添えた。

「今の研究の更なる高みへ…ひいては3000年前に失敗した我らの望み…人のクローンを作り出す…アスラビ・尾崎君、任せたよ。」



 頭を深々と下げ、研究長室を後にした。

『研究長の座を譲る』

その意味が分かったような気がした…しかし、すでに娘の具合が悪くこの病院に入院をさせていた。研究長に就任すれば莫大な研究費が貰えるのは確実。もしかしたら、娘の病に効く薬の開発も夢ではない…。

そういう思いもあって研究長就任の件を引き受ける事にした。

そんな時、私付きの警備兵が変わったのだ。私の研究の危うさを考慮し総合研究長が送ってきたのが彼、アジュラーチ・村瀬 湛三。彼も副隊長の座を譲られたばかりで私の元に送られてきた。言わば、捨てゴマ同士と言ったところだろうか……。

 

彼は、私の自室に入ってくるなりビシッと背筋を伸ばすとかかとを鳴らし、スッと敬礼をして配属の挨拶をした。


「初めまして、アスラビ・尾崎教授。今日から配属になりました。アジュラーチ・村瀬 湛三と申します。」


そう言って見つめてくる彼の瞳は、力強く正義感に満ち溢れた目で警備兵に最も適した男…といった印象を受けた。私はこれからしていかなくてはならない法律スレスレの研究の後ろめたさもあってか、真っ直ぐこちらを見て離さない彼の瞳をまともに見る事ができないでいた。


「あっ…あぁ。これから、よろしく頼むよ。」




 それから、数年後私のチームの研究は順調に進んでいた。そして、ある日再び総合研究長に呼び出しを受けた。


研究長室に行くと、そこには他課の研究長及びチーム長が数を揃えていた。何事だと総合研究長に目を向けると、彼はただ入室を勧めてくるだけだった。

仕方なく勧められるがまま、一つのソファーに腰を下ろすと、総合研究長は話始めた。


「君に来てもらったのは他でもない…、皆と話しをしていたのだが…。」


と総合研究長は、自分専用の椅子に腰掛けると、いつものように顔の前で手を組んだ。


「君に、今の研究の論文を書いて貰いたい…勿論、君の名でだ。」


「えっ?…しかしっ…。」


「今の研究の成果を世に知らしめるのだ…やってくれるね?アスラビ・尾崎君。」


とんでもない事を言い出した。今の研究をやっていること事態、法律スレスレなのだ。そんな事をすれば、今までやってきた研究や教授生命を絶たれてしまう。そうなれば、同時進行していた娘の薬の研究も……。

私は、思いっきり机を叩いた。


「冗談じゃありません!!!」


これには黙っていられなかった。


「そんな事をすれば、マスコミは愚か警察だって動きますっ!ましてやっこの病院だって危なくなりますっ!私は賛成できませんっ!」


そう反論するも、周りはヒンヤリと冷めた反応を見せた。


そこへ、総合研究長が話し出した。


「確か…この病院に、君の娘が入院しているらしいね…。」

「!!!…そっそれが…何か?」


と言うと総合研究長は何とも不適な笑みを見せて


「彼女がどうなっても構わないのかね?確か…その薬も研究しているのだろう?君は……。」


やられたと思った。全てお見通しだったのだ。

力無くソファーに腰を下ろすと、総合研究長は席を立ち、私の肩に手を置いた。

「頼んだよ…。」

と一言。その言葉を皮切りに、他課の研究長やチーム長は微かに嘲笑しながら退室して行った。



 仕方なく、私はそれに従い論文と同時に研究成果の一部を発表した。

……結果、大いにバッシングを受けた。マスコミは医師会追放だなんだと騒ぎ立てる。私はいたたまれなかった…。そんな苦しい折りも彼、アジュラーチ・村瀬は私の護衛だなんだといつも傍にいてくれ、励ましてもくれた。

そんな最中、私は正義感溢れるこの男に質問をぶつけてみた。


「…村瀬さん、あなた…私が何をやっているか知っていますか?」


マスコミの騒動に疲れ、灰になったように自室のソファーに腰を下ろしながら訊く。

彼は、ブラインドを降ろした窓から外の様子を見ながら答えた。

「えぇ…。」


その横顔は、訊くまでもなく全てを知っている様子だった。

「なら何故…。」


と訊くと彼はこちらに顔を向け


「それでも、あなたを守る事が自分の仕事です。」

そうこの男は言った。真っ直ぐな瞳で…。



それからすぐ、娘の最期を看取ると私は医師会から離脱した。総合研究長の狙いは明らかだった…責任の転嫁…娘を失った今となってはもうどうでも良い…。

私は自室で職場の整理をしながら、黙って片隅でいつものように立つ村瀬に言った。


「もう…私の護衛はする必要はない…村瀬さん…元の職場に戻って下さい。」


しかし、彼は片隅でこちらをじっと見ると

「アスラビ・尾崎教授…私もついて行きます。」


と言って私の前にデータを開いて見せた。それは、村瀬が所属していた警備兵所の書類で『退職受理』と赤く記されてあった。

そうか…お前も私と同じ捨てゴマだったな…と改めて思い出した。


それから、職を失くした私達であったが私は莫大な退職金をつぎ込み『Dー3ブロック』の立ち入り禁止区域の土地を買い取った。

村瀬も退職金で自分の警備兵所を立ち上げた。




 「私は、お前が理解出来なかった。」

と遠い目で私は、萎れてシミだらけの手に持つ葉巻を口に含み、煙を吸った。

すると、アジュラーチ・村瀬はフッと笑い。


「なんだ…いきなり。」


と言って窓際に歩きだした。

私は遠い目から、机上の写真立てに目を落とし続ける。


「私についてきたって……その先どうなるか…わかっていた筈だ。」


村瀬は、昔と変わらず背筋をシャンと伸ばして手を後ろに組んだ姿で私に背を向けている。


しばらく間があった。


「私は…あなた付きの警備兵になって…あなたをずっと見てきました…そしてあなたの人柄に触れた…そんなあなたに私が惚れ込んだんです。だから私はあなたについて来ようと思った…それがこの先、どんな運命を辿ろうとも…只、それだけです。」


そう応えた彼はこちらに振り返った。初めて会った時の様な口調とその真っ直ぐな瞳で………。

私は、初めてその瞳を見返せた気がした。


そんな時、呼び出しブザーがけたたましく鳴った。何事かと、村瀬が私の机上にある応答ボタンを押し、画像が現れた。それは研究員で慌てた様子だった。

「どうした?」


と村瀬が訊くと


「あぁ〜アジュラーチ村瀬隊長おいででしたかっ…大変なんですっ!早く来て下さい!」

と言う。私と村瀬はお互い目を見合わせた。


お待たせいたしました♪四十一章!実は…四十章まで書いて気づいた事が……笑Σ( ̄□ ̄;)じぃさんの事いっこも書いてへぇ〜ん!これじゃあ最後に持っていけないと焦った愁真は慌ててこの四十一章にじぃさんの話を突っ込みました笑o(^-^)oこれで全体の描写がまとまればよいなっ♪と思います♪(゜A ゜;)でも内容的には合ってるのか?とまたまた焦る私なのでした笑

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