第三十九章
はじめは星羅を後ろに乗せている事も忘れ、禁止区域へ向けてコラルロッドを物凄いスピードで走らせていた。勿論、女の子を後ろに乗せて走るなんて生まれて初めての事なのに、そんな事は頭の片隅にもなかった。
そんな事より悠呂の心配…いやっほんとんど怒りで、『あいつに会ったら一発殴ってやろうか…それとも飛び蹴りをくらわしてやろうか…』とそればかりぐるぐる考えていて、後ろで星羅がいくら話し掛けても、全然気付かないでいた。
そして、目の前に障害物が見えて思いっきり避けた時に自分の腰に手をまわしている誰かの腕がクッとキツくなって、改めて星羅の存在を思い出した。
「あっ!…ごめん…大丈夫…か?」
とスピードを緩め後ろを向いた。
しっかり、はじめの腰に抱き付く形でいた星羅は緩くなったスピードに気を許し力を抜いて顔を上げた。
「ふぅ…ちょっと…ううんっ…かなり辛かった…。」
と不満顔で口を尖らせた。
「いやぁ〜…わりぃ。考え事してたら、夢中になっちゃって…。」
と照れくさそうに頭を掻いた。そんなはじめの顔を星羅はじっと見て…。
「多分……こんな事になったのは………私のせいね…私があんな事言わなければ…こんな事には…ごめんなさい。」
と震える声で言った。
その表情と言葉に一瞬、驚いたはじめはすぐに真面目な顔になって
「なんであんたが謝んだよ…謝られる意味がわかんねぇ…」
とすぐに視線を逸らし前を向いた。
そんなはじめに星羅は
「だって…あたしがっ…。」
と言いかけたのを遮ってはじめは、少し怒っているような口調で星羅に背中を向けたまま
「何をあいつに話したのか知んねぇけど…でもっ!一番わりぃのは、後先考えずに飛び出して行って…俺を…いやっ…みんなを心配させてる悠呂だっ!!」
と言うと、怒りでかはじめの背中は少し小刻みに震えていてそんな背中が、彼と悠呂の絆の深さを物語っていたのが星羅には、羨ましいようで申し訳ないような複雑な気持ちにさせた。
禁止区域、もとい研究所付近に到着した二人は少し離れた建物の陰にコラルロッドを止め、様子見をした。
正門から、フェンスにかけて相当数の警備兵が厳重に周りを固めていた。
「ふぇ〜かなりの数がいるなぁ〜くそっ!」
とはじめはボヤきながら壁に背を預け、外を見ていた。星羅はその様子を見て、何か方法はないかと辺りを見ると、ふっと何かが目に入った。なんだろうとその物に静かに近づいて行き、クッキリその物の形を捉えてはっとした。
外の様子を見ていたはじめの肩を叩く者があって
「あぁ?」
と振り向くと、星羅が緊張した面もちで何か言いたそうに立っていた。
「何?なんかあったのか?」
とこの状況に苛立つはじめは少しキツい口調で問いかけた。
「うん…ちょっと…こっち…来て。」
と星羅は手招きしながら、先に歩いて誘導する。訳のわからないはじめは星羅の後をついて行った。
歩き出してすぐの所で星羅はこちらを向きながら、どこかを指さしていた。
「?」
とその先を辿ると、見たことのあるコラルロッドが何かから隠すように置いてあった。
「!!!」
思わずはじめは、そのコラルロッドに駆け寄った。
「…こっ…これ…。」
「うん…そう…じゃない?」
と星羅の言葉を聞いて、すかさずはじめはコラルロッドの運転部にあるボタンを操作し、ある画面を出した。
そう、このコラルロッドを支給される時に最初に打ち込む所有者データ。その画面には悠呂の顔写真入りのデータが表示されている。
「あいつ…、こんな所に…所有者データの存在忘れてんじゃねぇのか…あの馬鹿…。」
と呟くとはじめは、座席部のクッションに思いっきり拳を叩きつけた。
そんなはじめを見ていた星羅は、はっと気付き改めてそのコラルロッドを置いている場所を確認した。
「!!!」
星羅は、はじめがさっき様子を見ていた反対側の壁、そのコラルロッドの置いてある側の壁の隙間へ駆け寄り、そこから外を見た。
「…おっ…おい?どうしたんだよ?」
と星羅の行動を見ていたはじめは不思議そうに声を掛けた。
「……まさか!」
そう声を発した星羅は何を思ったのか、そのまま外に飛び出して行った。
「!!!っ…おいっ!まっ待てっ!」
あまりの事にはじめも釣られて自分も出てしまった。
「あっ……。」
(☆o☆)今回は!はじめきゅんと星羅ちゅわんのお話し!…(T_T)愁真…頑張りました…さてさて、この一話に収縮してはじめきゅん話を詰めようと思った愁真ですが…編集、付け足し等々をしている内にですねぇ……
(T皿T)こんなんなっちゃった…(*^-^)bな〜の〜でっ次回 もこの続き!はじめきゅんと星羅ちゅわんのお話しになります♪(+_+)お楽しみ!