第三十八章
悠呂が身動きせずに潜んでいると、話し声が段々ハッキリと聞こえる位置まで近付いて二つの足音は止まった。
「おいっ…聞いたか?」
「何を?」
「星羅お嬢様の話だよ。」
「あぁ〜あれだろ?なんかいつもの夢遊病じゃなくて連れ去られったやつ…。」
「そうそれ。なんかぁ〜警備兵の話を聞いちゃったんだけど、連れ去った奴ってまだ子供だったらしいぜ?」
「はっ?何だよそれ?」「まぁ〜ちょこちょこっと聞いた話しなんだけどさっ。なんかまだ少年で…ほらっなんつったか…通学に使うバイク…ほらっ…えっと…あれあれ。」
「コラルロッドってやつか?」
「そうそう!それそれっ!それで、なんか後ろに星羅お嬢様乗っけて逃げたらしいよ。」
「ふ〜ん…。」
と話す内容から、この建物の中では星羅の事は連れ去り事件になっているようだ…。悠呂はその話に少し焦った。そんな話になっているとは予想外だった。
悠呂は呼吸を整えて二人に気付かれぬよう、そぉ〜と様子を見てみる。
そこには短めの白衣、(よく歯医者さんとか着ているような物)に下は黒いズボンといった格好からどうやらここの研究員のようだ。一人の眼鏡を掛けた男性は、話しの続きをしながら鉄製の棚に並ぶ荷物のラベルを上から順に探すような仕草をしている。もう一人の茶髪で細身の男性は、手近にある荷物の箱を開け、中から何やら液体の入った瓶を二つ三つと取り出していた。
探し物をしていた眼鏡の男性は目当ての荷物が見つかったのか
「あった」
と呟いて棚から箱ごと重そうに取り出すと、体を揺すって持ちやすいように抱え直し向きを変えて歩き出した。
それを見た茶髪で細身の男性は、瓶を一、二個脇に挟むと更に箱から一個、瓶を取り出し蓋を閉めて眼鏡の男性に続いた。
その茶髪で細身の男性が
「あっそうそう。」
と切り出した。
「なんでもアスラビ・尾崎所長、かなりご立腹らしいぜ?」
そう聞いた眼鏡の男性は荷物を抱えたまま振り向いて
「そりゃそうだろうなぁ〜かなり娘に入れ込んでるものな。」
「それだけじゃなさそうだぜ?あの敏腕なアジュラーチ隊長がその子供を取り逃がしたってんでかなり時間が掛かってることにもお怒りみたいだぜ?」
「うへぇ〜こぇ〜こぇ〜。こっちにもとばっちり来なきゃいいけどなっ。」
そんな話をしながら二人は出口だろう方へ歩いていく。もう少し詳しく内容を聞いてみたいが、遠のいていく二人の声は小さくなっていく為、諦めるしかなかった。悠呂は、二人が歩いて行っただろう方向に目をやり、少し身を乗り出して二人の背中を見つける。そして歩く先に更に目をやり、出口の場所を確認した。
その直後、出口だろう場所から光が漏れていのが何かに遮られた。
「?」
と思っているとその遮った影が
「大変だっ!!!」
と大きな声を上げた。それに驚いた悠呂は、物音を立てそうになったが慌てて荷物の陰に身を隠した。
荷物をもった二人が
「どうした?」
とか
「何かあったのか?」
と口々に大声を立てたのが聞こえた。
(侵入したのがバレたのか?)
と焦ったが急を告げにきた男の声を聞いて違うとわかった。
「ここがヤバいんだ!いいから!お前等も早く来いっ!」
と言われ二人は
「わかった!」
と声を揃えて答えるとすぐに三人分の走り去る足音がして、そして扉が閉まる音がした後は再び倉庫内に静寂が戻った。
シンッとした倉庫内に物音一つ聞こえないことを知ると、再び荷物の陰から身を乗り出して誰もいないことを確認し、素早く飛び出して小走りに出口を目指した。
扉の前に到着するとすぐに扉の両脇の壁を確認する。
どうやら右側に操作ボタンがあるので、ボタン式開閉ドアだと認識する。ドアのボタンの確認をしている間も何だか外は騒がしい、悠呂はその内容が知りたいのもややあって扉にそっと耳を当ててみた。
表では、バタバタ何人か走る音とそれに混じって切れ切れに声も聞こえる。
「ヤバいぞ・・・が・・・でバレたら・・・。」
「・・・・が裏切った・・・。ちきしょー!」
良くは聞き取れないがどうやら、大事があったらしい…。悠呂は、これは『しめた』と思った。
この騒ぎに乗じてアスラビ・尾崎のいる最深部の部屋まで行けるのではないかと考えた。
しかし、今出て行っては捕まってしまう…騒ぎが少し収まってからここを出ようと結論に達し、しばらく倉庫に潜む事にした。
(・ω・;) え〜…長らくかな?お待たせしました…えっとずっとどう展開するか思案中でした………はいっ嘘です…ごめんなさい(T_T)実は全然思いつかなくて、小説本を本屋に漁りに行ったりしてました…これほんとっゲームなんか今回は一切してません!後、それとここに投稿されている他の先生方の小説を敵情視察(良い意味でよっ!)も兼ねて読み漁っておりましたっ!こんな私ですが…どうか…(>口<;)見捨てないでぇ〜