第二十一章
悠呂達を取り逃がした警備兵は、しばし茫然としていたがすぐさま右腕にはめた腕時計型モニターの呼び出しをした。すると、すぐに応対があった。
「どうした?お嬢様は見つかったか?」
と先程の隊長が姿を現わし警備兵に聞いた。
「たっ大変です!隊長!…星羅お嬢様が何者かに連れ去られました!!」
「なにっ!?…どういう事だっ?」
と隊長の顔が険しくなった。その質問に警備兵は
「そっ…それが、良くわからないのですが…連れ去った人物というのが少年でして…。」
「なに?少年だと?貴様…見たのか?それは確かなんだな?」
「はいっ!私が見ましたので…。」
うーんと唸ると顎に手をあてた隊長は、仕方ないという感じで警備兵に
「直ちにその少年を追え!お嬢様を攫われたのはマズい!」
と言われて警備兵は敬礼をし
「はっ!」
と返事をするとすぐさまモニターチャンネルを切り替え追尾命令を出した。
禁止区域を出発した悠呂はとりあえず自宅を目指していた。
後ろに乗る少女は、何も言わず自分にしっかり掴まっている。
スピードが出ているせいか服をばたつかせている夜風が少し肌寒い。
すると、自分の服をしっかり握る彼女の手がピクついた。
「???」
「……おっ…追っ手よ!」
「えっ?」
そう言われ、悠呂は弾かれたように後ろを見た。
すると数台の新型変形仕様の未来型バイクが、ライトを煌々とこちらに当てて向かって来ている。
悠呂は慌てて車体を傾け、細い裏路地にコラルロッドを走らせる。
「きゃあぁっ!」
急に車体を傾けたので、後ろに乗る少女は悲鳴を上げ、更にしっかり悠呂に掴まってきた。
「ごっ…ごめん…大丈夫?」
「うっ…うん。なんとか…。」
と悠呂は視線を彼女から後方に向け舌打ちをした。
追っ手のバイク達は、車体を細身に変形させ更に追ってくる。
「…さすが…変形仕様の新型バイクだね…。」
と正面を向き直りながら独りごちた。
悠呂はどうしたものかと辺りにせわしなく視線を向け逃げ道を探していると…地面にぽっかりマンホールの様な穴の上を通り抜けた。
(あれだ…!!!)
悠呂は、急にUターンをかました。
後ろの彼女は、悲鳴を辛うじて飲み込んだが追っ手に突っ込む車体に驚き
「ちょっ…ちょっと…あなた…何を!?」
と言うとコラルロッドはかまわず追っ手に突っ込み走っていく。
追っていた追尾班達は、いきなり目標の車体が勢い良くこちらに向かってくるのに右往左往し、混乱していた。
その隙をついて、悠呂はコラルロッドをマンホールらしき穴に向け、勢い良く中に走らせた。
(・ω・) SFなのでアクションシーンも欲しいと考えていましたが…なんせ主人公は学生の身、銃ぶっ放すぅ〜みたいなのはこのご時世…未成年の殺人事件が多発しているのに考えさせられ、カーアクションくらいに留めました♪次回もお楽しみに♪