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08


はじめて足を踏み入れた


その場所にあったのは


見つかるわけがないと


思い込んでいたもの



‐アヤトリ‐




「お前の嫁御が逃げ出したらしい。それを言いに来たんだ」


その言葉にざわりと空気が変わった気がした。


私の気のせいではないはずだ。



「そうですか」



空気を変えた原因だろう白梅さんは淡々とそう呟く。


あまりにも、感情なく呟いたことに私が首をかしげそうになっていると


ゴッと重々しい音が響いた。


びくっと心臓が跳び跳ねた気がするほど驚いてしまう。


そんな姿を見せたくなかったから、すぐに冷静を装ったけど。


だけど、私がびくっとしたのに男は気づいたらしく


優しく微笑まれ



「大丈夫だ。安心しろ」





そう言われた。


そんな私達のことなんか気にせず白梅さんは




ちっと舌打ちをして



「こんなことになるんでしたら鎖をつけてこればよかったです。それとも、橘ゆうこがここに来るかもしれないと言ったのが間違いだったんでしょうか」



そう言いながら、もう一度、近くにある木を殴る。


ゴッと重々しい音がまた響いた。


びくびくしながら


白梅さんがいる方に目を向けた。



「……嘘」



信じられないような気持ちから声が漏れてしまう。


白梅さんが殴ったあの大きな木は半分以上が消えていたからだ。



「白梅、お前な」



男が呆れたように、だけど、どこか嬉しさを含んだような声音で白梅さんに言う。顔は装う気もないのか少し、笑っていた。


そんな男の声音に白梅さんはもう一度、舌打ちをした。


琥珀さんは、そんな二人の様子を見て


ため息をついてから叱ふように


「……蛇我羅」


と、男の名を呼んだ。


この時、私はやっと男の名を知ったのだった。

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