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通りゃんせ 通りゃんせ
行きはよいよい
帰りはこわい
こわいながらも
通りゃんせ 通りゃんせ
この歌に込められた意味は知らないけど
きっと行きも帰りも自分にはわからない思いがあるんだと思う
それがどんな場所に行くのかはまた別の問題かもしれないけれど
‐アヤトリ‐
「別に構わないよ。それくらいなら」
怒ると思っていたけど、予想に反して
琥珀さんはあっさり頷いてくれたのだった。
それから、なぜ知っているのかわからないけど
白梅さんの屋敷……?に行く抜け道を教えてもらったり、蛇我羅や白梅さん達の話を聞いたりしながら
白梅さんがいるであろう屋敷に到着した。
勿論、蛟と大蛇も一緒にいる。
琥珀さんがちゃんと連れてきてくれたらしい。
私はあまりその事については知らない。
ふと、蛇我羅に会ってまず何を話そうか考える。
その結果、白梅さんのいる場所まで来るまでの事は蛇我羅には内緒にしておく事にした。
いろいろありすぎて絶対、話せないと思ったからだ。
じゃあ、蛇我羅に何を話そうかと再度、考え込もうとしたが
そんな私の思考を遮るように
「それじゃあ、さっさと迎えに行こな?娘っこ」
と、琥珀さんが言った。
反射的に頷いてしまった私はずいぶんと琥珀さんに心を許したな、と他人事のように思った。
今頃気づいたのだがりん、りんと琥珀さんが動くたびに鳴る鈴の音を気にしてか知らないけど蛟と大蛇は耳を塞いでいた。
どうして耳を塞いでいるのか聞こうとは思わない。
その鈴の音で多分、幻覚を見せているからだと思う。
じゃあ、私はなぜ一番最初鈴の音を懐かしく感じたんだろ。
今さら気にしても仕方ないかもしれない。
琥珀さんは白梅さんの屋敷の事を話してくれていたのに、私が違うことを考えて聞いてなかった事に気づいたんだろう。
とんとんと私の肩を叩き、注意を引いてから再度、説明をしてくれた。
「あいつの屋敷は門番が二人おる。前鬼と後鬼って奴さ」
ぜんきとこうき……。
と言うことはゼンとコウとは間違いなく門番の事で間違いないだろう。
琥珀さんが指差す方を見れば前髪で顔を隠した二人の門番がいた。
門番なんだから顔を隠したら見にくいと思ったが何か訳があるんだろう。
気にしない事にした。
「奴等は基本、鬼の中でも珍しい種族出身で、主の命令より始めに与えられた仕事の方を優先する。
だから、娘っこの話を聞く限りじゃ前鬼に案内させるって白梅が言ったのはおかしいんだよ」
「おかしい……?」
琥珀さんの言葉に首を傾げた。
そんな私に琥珀さんは優しく微笑むと話の続きを話しだす。
「奴等は白梅本人が選んだ門番だ。だから、奴等の種族の性格を白梅が知らない訳がない。
前鬼に案内させるって言ったって事は森の中で野垂れ死にしろって意味にしか思えないんだよね」
さらりと付け足された言葉に白梅さんなら絶対思いそうと感じたのは仕方ないと思う。
確かに、そんな種族の性格を知らない私があの場所にずっといたら野垂れ死んでいたかもしれない。
それを考えると白梅さんの事が少しも好きになれなかった。
それよりも、門番がいるのだからどこから入るのかが問題だ。
そんな風に考えていたのが顔にでていたのか琥珀さんはやっぱり優しく微笑んだ後
「まあ、客人として真正面から入れば問題ないよ」
そう言ってくれた。
スランプぎみで元々グダグダなのに
さらにグダグダになった気がする(´・ω・`)