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夢々世界


大切なものを失うことはなく


欲しいものも手にいれることができる


望むのならば


願うのならば


それで全てが終わる


それが幻だとわかっていても誰もが夢に逃げるんだ



‐アヤトリ‐




「人に名前を聞くときは自分から名乗れと言われなかったか?ガキ」



天の邪鬼な私らしく恐怖を隠すように、怯えを隠すように皮肉を込めて言う。


そんな私を見ながらみずちはクスッと笑った。


その笑みはいったいどんな意味を持っていたのか私にはわからなかった。


だけど、笑われたとしても自分が言ったことに後悔はない。


確かに言い方はあれだったけど言ってる事は間違ってないし。


いや、それもただの強がりなのかな。


頭の中でぐるぐると謝るべきか謝らなべきか悩んでいたが、結論をだす前に大蛇が口を開いた。



「いじめてはだめ。じゃがらのとくべつ」






その言葉に私が顔を真っ赤にしてしまったのと反対にみずちが顔を真っ青にさせた。



「当主様の特別……ね」



みずちが苦々しく呟いた言葉に大蛇は笑った。


にこにこと年相応の笑みで笑う。


さっきまでどこか遠くを見ていたはずの大蛇が笑うのが気味悪く感じる。


大蛇はいったいどうしたんだろうか。


顔の熱をどうにかしようとパタパタと手で扇ぎながら



「大蛇?」



と彼の名前を呼んでみる。


さっきのことは大丈夫なの?


殴られていた傷は痛くないの?


そんな意味をこめて私は彼の名前を呼んだ。


大蛇はこちらに視線を向けにっこりと笑い


「どうしたの?」


まるで最初から何もなかったように、なぜ名前を呼んだのか意味がわからないように首を傾げた。


大蛇は本当にどうしたのだろうか。



みずちは大蛇を見てからこちらを向いて言った。


それはどうでもいいとでも言うかのように言った。



「大蛇はどうでもいいことには飽きやすいからね。さっきのことを忘れるなんて頻繁にあるんだよ。よかったね、おねえさんは大蛇に認識されて……認識されなくても当主様はよかったんだろうけど」



意味がわからなくて首を傾げる。


大蛇はどうでもいいことは忘れると言うのにはとりあえず、納得しとく。


だけど、どうしてさっきのことを忘れることができるんだろうか。





蛇我羅にあんなにも殴られていたのに。



「あんたが考えてることはわからないけど……殴られたり、罵られたりしても大蛇はすぐに忘れるよ?きっと殺されることがあっても殺した本人のことを忘れると思うよ。


大蛇は自分の存在すら忘れてしまいそうになったことがあるんだから」



その言葉は衝撃だった。


私は大蛇は誰かに認識され続ける事に必死になっていたんだと思う。


大蛇は今まで一人だったんだろう。


回りを見ながら

自分が認識されないから皆、離れていくんだっと何度も思ったんだ。


だからこそ、相手を怒らして自分を認識させるようにした。

まあ、全部自分が勝手に言っている事だけどだいたいはあっているだろう。



そんなことを思っていた時があったけど本当は違ったんだ。


大蛇は大蛇自身が認識しないとどうでもいいんだ。


おいていかれようとも


忘れようとも


認識してないやつはどうでもいいと言うんだ。



「おねえちゃん?」



大蛇は笑う。


かわいく笑って私を見た。

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