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会いたかったのは誰でもない君


だけどね


会いたくなかったのも誰でもない君だった


暗い場所に溶け込むような闇のような君と


明るい場所に当然のごとくいる光のような君は


いったいどちらが本物なんだろうね



‐アヤトリ‐





「首を洗って待ってなさい」


そう言ったものの何をすればいいのかわからない。


そもそも、白梅さんがいなくなったことでどこに行ったのかもわからない。


どうしよう。わからないことだらけだ。


森の中にへたり込みながら私は早速行き詰ってしまった。


ぼーっと遠くを見ながら考えていると


「大丈夫?生きてる?」


後ろから今まで聞いたことがないような声が聞こえた。


ばっと勢いよく振り返ると大蛇より少し年上そうな少年が大蛇を見ていた。


私はてっきり大蛇も白梅さんについていったのだと思っていた。


どれだけ自分が蛇我羅のことばかり考えていたのか嫌でも知る。大蛇はその少年に目を向け、小さく呟いた。


「みずち」


名前を呼ばれた少年は笑う。

それが当然のことのように。それが必然のことであるかのように。


笑いながら、みずちと呼ばれた少年は


「なぁに?大蛇」


蕩けるような甘い声で返事をするのだ。


この二人の関係は何なのだろうかと考えてしまうのも無理はない。


みずちと呼ばれた少年は男物の着物を着ていたから男だと思っただけで


中性的な男か女かわからない顔立ちと雰囲気から本当は女の子かもしれないと思った。


二人の性別がわからない以上は


恋人?兄弟?姉妹?いとこ?知り合い?友人?


のどの部分にあたることになるのかもわからない。


私が二人を見ながらそんなことを考えていると


大蛇がみずちに手を伸ばして抱きついた。


ここで何をすればいいのかわからなかった私は現実逃避として


みずちのことを考える。



みずち……蛟

古くはミツチ。

ミは水、ツは助詞、チは霊で、水の霊という意味。


蛇に似て、四脚を持ち、毒気を吐いて人を害する。


これくらいしか知らない存在。


知識がなかっても、あっても対処法がわかるわけではないから考えるのを放棄しそうになる。


だけど、助かる方法くらい探さないと。


そんな風に頭のなかで悩んでいると、みずちが私の存在を認識したのか私を見て言った。



「おねえさん、だぁれ?」





その声は大蛇と話していた甘い声とは全く違う感情のない声だった。


体が恐怖からかカタカタと震える。


手足を動かしたくても動かない。


こんな幼い子にまで怯えているようじゃ、白梅さんのところに殴り込みに行けない。


しっかりしろ、自分。


ぐっと体全体に力を入れ直すと私は言った。


「人に名前を聞くときは自分から名乗れと言われなかったか?ガキ」



天の邪鬼な私らしく恐怖を隠すように、怯えを隠すように皮肉を込めて言う。


そんな私を見ながらみずちはクスッと笑った。


その笑みはいったいどんな意味を持っていたのか私にはわからなかった。

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