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壊れた歯車
回りを捲き込んで動くことを止める
それを管理していた者
壊れた歯車、直すことなくほっていた
すると歯車回りを捲き込み腐りはてた
管理していた者、気づいた時にはもう遅い
‐アヤトリ‐
牢獄……。
こんな幼い子供が何をしたと言うんだろう。
わからない。
わかりたくもない。
知るのが怖い。だけど、知りたがってる自分もいる。
しんっとした空間を壊すかのように高い声が
「オロチー!!ミツケター」
聞こえてきた。
その言葉に蛇我羅はため息を吐き、白梅さんはにこっとかわいらしく笑った。
「ミツケター」「ハッケン、ハッケン」
そう騒ぎながらやって来たのはヌイグルミのようなかわいらしい小鬼達だった。
角が一本の赤鬼と角が二本の青鬼は童話にでてくるような虎柄のパンツをはいていた。
上にはチョッキのようなものを着ている。
本当に愛らしい小鬼達だ。
こんな場面なのに少し和む。
「カエルゾー」
「カエルンダゾー」
大蛇の足元をぐるぐる回りながら叫ぶ小鬼達。
「ゼンニ、オコラレル」
「コウニ、オコラレル」
「オレタチガ、オコラレル」
「オコラレルー」
ぐるぐる、ぐるぐる回って叫び続ける。
小鬼達の叫ぶ声の中でゼンとコウと新しい名前がでていたが、皆、誰かわかっていたのか
いや、わかっているんだろう。
誰のことか聞くこともなく、スルーしていた。
そんな中、私だけがわからない状態だった。
まだ、私はここから中に入っていないんだから当たり前だが。
と、言うよりそろそろこの場所から動いてもいい気がする。
森の中だからかか、それとももう夜になってしまったのか回りは少し薄暗かった。
誰のことだ?とか移動しないのかな?と考え込んでいるとそばにいた大蛇が手を強く握ってきた。
幼い子の力じゃないくらい強く握ってきたせいか、手が痛い。
妖怪は皆、力が強いのかな、と思ってしまうほど加減をしらない。
そんなことを思っていると大蛇はそっぽを向きながら小鬼達に
「やだ」
と、一言だけ答えた。
ふて腐れたようにそっぽをむく大蛇は我が儘を言っている年相応の子供だ。
ただ、握っている力が不釣り合いすぎる。
痛くて仕方ない。
血が指先までいってない、絶対に。
力が強くて振り払うことができない大蛇の手を
私はどうしようかと、考えて蛇我羅の方を見てみた。
助けてくれないかなという思いがあったからだ。
だけど、蛇我羅の方を見て息を呑む。
それはどうしてかと言うと、蛇我羅はいつものにやにや顔でも呆れた顔や困った顔でもなく能面のような無表情だったからだ。
威圧感が半端ないのは気のせいだろうか。
私達が何も言わずにいると蛇我羅は大蛇の私の手を握っていた方を叩き落としながら言った。
「……ゆうこに触れるな、大蛇」
睨みながら言った蛇我羅に大蛇は怯むことなく
「いや」
と、きっぱり言った。
しんっと静かになる空間。
さっき騒いでいた小鬼達は白梅さんの後ろに隠れていた。
いつの間に、そこに移動したんだ。
白梅さんは小鬼達には優しいのか、微笑ましいものでもみるかのように笑っていた。
さちもそんな白梅さんに安心しているのか、さっきより顔色もいい。
そんな白梅さんとさちの様子とは正反対に睨みあっている蛇我羅と大蛇。
先に口を開いたのは蛇我羅の方だった。
「いや?何言ってんだよゆうこは俺のものだし
誰にも渡すきないし
てか勝手に触ってんじゃねぇよ
俺以外が触っていいわけないだろ
ゆうこの事を好きにしていいのは俺だけなの
お前はゆうこを視界にいれることができるだけでも幸せを感じないといけないんだよ
視界にいれる事すら罪なんだから
何で触れてんだよ可笑しいだろ
ふざけてんじゃねぇよ
俺のものを好きになるなんてそんなの絶対許さない
許すなんて絶対できない
今すぐ息の根を止める」
息継ぎなしに言い切った蛇我羅に拍手を送りたくなった。
言ってる内容が微妙にヤンデレてる気がするのは気のせいです。
ええ、絶対気のせいです。
聞きようによったらただ嫉妬してるだけじゃないですか。
はははっ…………はぁ。
もちろん、これで終わるわけはなかった。